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危機マック、心の離れた客はもう捨てよう 従来路線のままでは危機深刻化 再建策を検証
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150523-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 5月23日(土)6時1分配信
●未曾有の危機に瀕するマック
日本マクドナルドホールディングスが未曾有の危機に瀕している――。
昨年7月には中国の契約工場で期限切れの鶏肉が使用されている問題が発覚。7月21日には当該企業から仕入れた鶏肉を使用したメニューの販売休止を決定したものの、変色した鶏肉が混ぜ合わされる内部告発の生々しい映像がインターネット上で拡散すると、食の安全に細心の注意を払う顧客の足が遠のく。結果、7月の既存店の売上高は前年同月比マイナス17.4%と大きな落ち込みを記録する。
さらに追い打ちをかける事件がマクドナルドを襲う。今年1月には小さなビニール片やプラスチック片など異物混入騒ぎが巻き起こり、マスメディアがこぞって取り上げると同社のイメージは大きく傷つき、顧客に敬遠されるようになったのだ。これら異物混入事件は同社の業績に大きな影を落とし、1月の既存店売上高は前年同月比38.6%減と、いまだかつてない危機に直面したのである。
こうした逆風を受け、2014年12月期決算では直営店とフランチャイズ店を合わせた全店売上高が11.5%減の4463億円、最終利益は218億円の赤字に転落した。今年度も逆風はさらに厳しくなり、15年12月期業績予測では全店売上高が14.4%減の3820億円、最終利益で380億円の赤字を見込む。
マクドナルドはこのような危機的な状況に際して、4月16日には「ビジネスリカバリープラン」を発表。その骨子は以下の4つのポイントに集約される。
(1)よりお客様にフォーカスしたアクション
(2)店舗投資の加速
(3)地域に特化したビジネスモデル
(4)コストと資源効率の改善
ここではその施策一つひとつを細かく検証していくことは省くが、今後マクドナルドが復活を果たすためにはかなりの困難が待ち受けていることは、誰の目にも明らかだろう。
●どうすれば危機から脱出することができるのか?
恐らくマクドナルドは、今後これまでの延長線上で事業を展開するなら、数年のうちに深刻な危機を迎えることは間違いないだろう。今期は最終利益で380億円の赤字を見込むが、前期末の連結貸借対照表を見ると286億円ほどの現金しか持ち合わせがない。今後も同じ規模で赤字が続くようであれば、現金の持ち出しが相次ぎ、キャッシュが底を突くことさえ考えられない話ではなくなるのだ。
このような危機的状況から抜け出すためにマクドナルドにとって重要なことは、数年前の絶頂期を目指そうとしないことだ。つまり、過去の成功体験を捨て去り、環境変化に応じた経営を心掛けることが危機脱出の鍵を握るのだ。
原田泳幸CEO(最高経営責任者)時代にマクドナルドはデフレの波に乗り、無料コーヒーキャンペーンや100円マックなど低価格商品の品揃えを充実させ、ハンバーガー業界のみならず、牛丼業界やファミリーレストラン、コンビニなど異業種から顧客を奪う全方位戦略で成功を収めてきた。
ところが、消費者を取り巻く環境は大きく変わり、安さだけでは顧客の心を引き留めることが難しくなり、デフレ時代にインパクトのあるキャンペーンの実施などで獲得した多くの“にわか顧客”の心は離れてしまったのだ。
このような心の離れてしまった顧客を再び取り戻すのは難しいことを考えれば、かつて大きな成功を収めた全方位戦略で規模をどんどん拡大していく方向を目指すのではなく、“にわか顧客”の取り込みを諦めて、どんなことがあっても離れなかったコアなファンだけを対象にビジネスを展開していくべきではないだろうか。
マクドナルドの顧客離れは深刻だが、それでも同社がどんなに非難されようとも変わらず利用し続けるコアなファンがたくさん存在するのも事実だ。今後は、規模は小さくなるが、このようなファン客を中心にしたビジネスを展開すべきなのだ。
ただ、もしマクドナルドが今後縮小均衡を目指すのであれば、損益分岐点売上高が高すぎるという問題に直面することになる。マクドナルドの連結決算では13年12月期の売上高が2600億円で100億円の経常黒字、そして14年12月期の売上高が2200億円で80億円の経常赤字ということを踏まえれば、恐らく現状は2400億円前後が損益分岐点売上高になるはずだ。今後も売り上げ減少が見込まれるのであれば、この損益分岐点をドラスティックに引き下げていかなければならないだろう。
●損益分岐点を劇的に引き下げるための鍵になる戦略とは?
それでは、どうすれば損益分岐点売上高を引き下げることができるのだろうか。
その重要な鍵を握るのが「固定費の変動費化」である。つまり、人件費や店舗の賃料など売り上げいかんにかかわらずかかっている経費を、売り上げに応じて変わる変動費に転換する必要があるのだ。そのために今マクドナルドが世界レベルで推し進めているのが、フランチャイズの促進だ。米マクドナルド本社では、業績不振に陥った再建策として世界レベルでのフランチャイズ化を推し進め、現状の81%から18年末に90%まで引き上げることを計画している。このフランチャイズ化によりマクドナルド本体の経費はドラスティックに引き下げられ、収益の大幅な改善が見込めるようになるのだ。
日本のマクドナルドに関していえば、14年12月末現在では全3164店舗中フランチャイズは2151店にとどまり68%と、世界標準からは大きくかけ離れている。今後は不採算の直営店を大幅に削減するなどして、米国本社が目指すフランチャイズ率90%へと近づけていかなければならないだろう。
また、フランチャイズ化の促進とともに、「ローカライズ」の強化が業績復活の鍵を握る。今や消費者は十把一絡げでは、捉えにくくなっている。その意味では店舗ごとに来店顧客の特徴は大きく変わり、それゆえ商品やサービスも顧客に合わせて提供する必要があるのだ。そこで、各店舗にある程度の経営の自由度を持たせることにより、フランチャイズオーナーが独自に考えて顧客を満足させる施策を取ることが可能になってくる。そうして地域密着型でコアなファン顧客の来店頻度を高めていけば、無理にクーポンやキャンペーンを実施してファンでもない顧客を集める必要がなくなってくるのだ。
このようにマクドナルドは、どんなことがあろうとも変わらず応援してくれるコアなファン顧客と、同社の掲げるビジョンに共感して共に道を歩んでいこうと決意した熱意あるフランチャイズオーナーを強い味方にしていくべきではないか。それにより今一度ビジネスの基礎を固めて着実に利益の上がる体質に改善していくことで、現在の真っ暗闇の状況の中に一筋の光明を見いだすことができるのではないだろうか。
(文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO)
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