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日銀は5月22日、金融政策の現状維持を決定。黒田総裁にはマーケットの声が聞こえているか(撮影:尾形文繁)
株の暴落は、こんな時に突然やって来る 2年前の5月23日にも大暴落があった
http://toyokeizai.net/articles/-/70623
2015年05月22日 福井 純 :東洋経済オンライン
日本株の値動きが堅調だ。5月22日の日経平均株価は前日比61円高の2万0264円と6日連続で続伸、年初来高値を更新した。
日銀金融政策決定会合の直後は、金融緩和の維持決定を受け一時下げ幅を拡大する場面があったが、最終的には高値引けだった。海外市場でも21日の欧州株は4日続伸、さらに米S&P500指数も史上最高値を更新するなど、4月下旬から5月にかけて起きた「波乱」は、いったいどこに行ったのかと思うほどだ。
■過熱感がない日本株
もうすでに約2年前になるが、2013年の5月23日、日経平均株価は前日比1143円の大暴落を演じた。この年の4月4日には日本銀行が「一発目」の大規模な金融緩和を実施。緩和直前の4月3日の終値を振り返ってみると1万2362円。ここから同年の5月23日の取引時間途中に1万5942円をつけるまで、わずか1か月半ほどで3580円も上昇。「5.23ショック」はその直後に起きた。
「2年前の『5.23ショック時』と比べたら、今の日本株は割高でもなく、過熱感もない」(大手証券ストラテジスト)。東証1部の上場企業の時価総額はついに平成バブル時を上回り、過去最高となったが、騰落レシオは22日現在106.37(値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割った指標、25日移動平均)だ。この水準は一般に買われ過ぎといわれる120程度を下回っている。
日経平均の予想PER(株価収益率)も16.3倍前後と、18倍台の米S&Pよりも低い。「上昇時の最終局面でよく起こることだが、2年前は個人投資家が怒涛の勢いで買って出来高が急増した。今回はそのようなこともない」(同)。
何よりも今期の日本企業の業績予想は期初から堅調だ。アナリストの事前予想は下回っているものの、東証1部の有力企業の今期の経常増益率は約8%前後。純利益で見れば2ケタ増が見込まれる。
「安倍政権は政権発足時から、用意周到に株価が上がる対策を実施してきた。大規模な金融緩和だけで株価上昇を演出してきたように言われるが、それは違う」(大手投信幹部)。法人税減税のような比較的目立つものだけでなく、昨年2月に策定された日本版スチュワードシップコード(主に機関投資家が対象)、今年6月施行のコーポレートガバナンスコードなど、「地味ではあるが遅れている制度を国際標準に近づける努力をしてきた」(同)。
しかも「価格面でゆがみを生じるので、やりすぎると反動がある」(大手証券アナリスト)面は否めないが、需給面ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に代表される「クジラ」の存在が支える。今の日本株を見ると、国内要因を見るだけでは、大崩れしにくい状況に見える。
2000年の高値を意識するなら、次の大きな節目は、日経平均株価でいえば2万0833円、TOPIXは1757ポイント(22日は1647ポイント)ということになる。現在120円台後半から121円台前後にあるドル円レートが今後も円安基調で推移するなら、日経平均株価のほうが早くこの節目を達成する可能性もある。
■日本株は外部要因には強くない
だが、どんなにクジラの存在が「絶大」でも、日本株の需給は外国人投資家を抜きにしては語れない。海外でなんらかのきっかけがあれば外国人投資家の逃げ足は早い。PER(株価収益率)だけで見れば割安に見える日本株も、あくまで利益予想にもとづくものであり、過信は禁物だ。
「債券の巻き戻しも一応おさまった今、当面の問題といえばギリシャ問題くらい。ただマーケットはそれほど大きな材料とは見ていない」(前出のストラテジスト)。となると、ますます「Sell in May」(5月に売れ)どころか、「5月はこのまま買え」ということになる。
ここからもう一段の上昇があるかどうかはわからない。少なくとも一つ気をつけておきたいのは中国だ。
中国は昨年11月以来、すでに3度の金利引き下げを行っている。上海総合指数も、5月21日現在で4500ポイント台にあり、一見堅調に見える。だが上昇を牽引しているのは、主に需給だ。中国では2010年3月末に信用取引が解禁されたが、この1年で信用残高が膨張。当局がたびたび規制強化を検討する事態になっている。つまり、上海の株価は、実態よりも需給面から買われ、割高になっている可能性がある。
2年前の5月23日の暴落も、実は直接の引き金の一つが中国だったことを覚えている投資家がどれほどいるだろうか。HSBCがこの日発表した同国の5月製造業PMI(購買担当者景気指数)が49.6となり、改善と悪化の節目である50を7カ月ぶり割れたことがきっかけだった。
もっとも、今年5月21日に発表された同PMIは49.1と3カ月連続で50を割ったが、特に相場が大きく荒れることはなかった。
現段階では、株価暴落がやってくるようには見えない。そういうスタンスでいると、暴落はある日突然やってくるように見える。だが、暴落時には何らかの理由が必ずあるものだ。もし今回マーケットが急落ないしは暴落する局面があるとしたら、それは欧米が原因の可能性もあるが、中国もその「候補」の一つであることを忘れるべきではない。
もちろん、急落や暴落が来れば、格好の買い局面になる可能性は十分ある。もし2年前のような暴落が来るのなら、日本株をとりまく状況が変わったのかどうかを慎重に判断するべきだろう。変わっていないのなら、そこは「買い場」ということになる。
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