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今や外国人観光客の爆買い頼み? さえない個人消費
GDP連続プラス成長でも消費増税の影響大
2015年5月22日(金) 磯山 友幸
個人消費は今一つ盛り上がりに欠ける
2015年1〜3月期のGDP(国内総生産)が2四半期連続のプラス成長となった。内閣府が5月20日に発表した速報によると、物価変動の影響を除いた実質GDPは、前の期(2014年10〜12月)に比べて0.6%の増加だった。
このペースが1年間続くと仮定した年率換算では2.4%増だった。主要民間調査機関の予想平均は年率で1%台後半だったが、これを上回ったことから株式が買われ、日経平均株価は大きく上昇、再び2万円の大台に乗せた。
プラス成長を要因別にみると、円安を背景に輸出が2.4%増と高い伸びを示したほか、昨年4月の消費増税後、マイナスが続いていた住宅投資が1.8%増とプラスに転じた。また、企業業績の好調を背景に設備投資も0.4%増と同様に消費増税後初めてプラスとなった。
個人消費の勢いは今ひとつ
株式市場では景気回復ムードが高まっているが、足元の景気が本当に明るさを増しているかと言えばそうではない。GDPの約6割を占める個人消費の勢いが今ひとつなのだ。
1〜3月期の個人消費は0.4%増。3四半期連続のプラスだったとはいえ、その伸びは小さい。昨年1〜3月期はプラス2.1%だったが、消費増税後の4〜6月期はマイナス5.1%と大幅に落ち込んだ。
その後は7〜9月期プラス0.3%、10〜12月期プラス0.4%と、プラス成長とはいっても底ばい状態を続けている。やはり、消費税率が5%から8%に引き上げられた事をきっかけに、消費のムードが一変してしまったと言っていいだろう。
増税負担は丸ごと消費者に
先の消費増税では、積極的に価格転嫁することが政府によって奨励された。下請け事業者や零細小売店などに、消費増税分のしわ寄せが行けば、デフレが加速しかねないと懸念したわけだ。スーパーなどでの「消費増税還元セール」も禁止する通達が出されていた。
結果、増税分の負担はほぼ丸ごと消費者にのしかかることになったのだ。消費者の財布のひもが一気に締まったのは言うまでもない。
財務省の当初の目算では、消費増税の影響は夏ごろまでに吸収できるはずだったが、そうはならなかった。昨年7〜9月期のGDPは、消費増税の反動が大きかった4〜6月と比較するにもかかわらず、連続でマイナスとなったのが象徴的だった。
これを受けて安倍晋三首相が当初は今年10月に予定されていた消費税率の10%への引き上げを先送りしたのは周知の通りだ。底ばい状態が続いている個人消費を見る限り、安倍首相の決断は正しかったということになるだろう。
消費増税に加えて、物価がジワジワと上昇してきたことが、財布のひもを一段と固くした。2014年の消費者物価指数(総合)は、前年比2.7%増と、2013年の0.4%増を大きく上まわった。今年1月以降も前年同月比2%を超す上昇率が続いている。
消費増税分を差し引くと物価は上がっていないという指摘もあるが、モノを買う消費者からすれば、値段が上がっていることには変わりはない。
電気代は7%超上昇
庶民感覚では統計数字以上に物価は上昇している。総務省統計局の今年3月分の発表資料を見ても、「焼肉4.1%」「ハンドバッグ4.9%」「宿泊料8.0%」といった上昇率の例が記載されている。また、電気代も7.1%上昇している。
アベノミクスによる大胆な金融緩和の結果、円安が進行。輸入品の価格は大きく上昇している。原油価格が大幅に下落したことで、国内でのガソリン価格の上昇は抑えられているが、仮に原油価格の下落がなければ、さらに物価高が家計を直撃することになったに違いない。
では、今後の景気はどうなっていくのか。GDP速報値の発表を受けて、甘利明・経済財政相はコメントを発表したが、「(今後については)緩やかに回復していくことが期待される」という極めて慎重な表現になっていた。何しろ個人消費が大きく増えてこない限り、日本経済の本格的な再生はあり得ないのだ。
日本百貨店協会が5月19日に発表した4月の全国百貨店売上高(店舗数調整後)は前年同月比13.7%増となった。昨年4月は消費増税前の駆け込み需要の反動で、売り上げが大きく落ち込んでいたためである。
消費税の影響を除くことは難しいが、2年前の2013年4月と売上高の実額を比較することで、おおよその水準は分かる。2年前と言えば、アベノミクスが始まり、黒田日銀総裁による「異次元緩和」が発表された頃だ。株価は大きく上昇を始めていた。
全国百貨店売上高の実額(消費税を除く)を2年前と単純比較するとマイナス0.9%。協会の試算では「特殊要因を除くと0.1%増」に当たるという。ほぼ2年前の水準に戻ったということである。
商品部門別では、衣料品は単純比較で4.5%減少、食料品も2.7%減った。食堂の飲食売り上げも5.5%減っている。家具や家電など「家庭用品」も4.8%減となった。住宅着工件数の減少が響いているのだろう。
一方で、2年前の4月と比べて増えているものがある。雑貨や身の回り品である。
中でも目立つのが化粧品の伸び。2年前に比べて16.9%も増えている。さらに高級時計や宝石、貴金属など「美術・宝飾・貴金属」が5.6%増えた。また、ハンドバッグや財布など「身の回り品」も3.5%、2年前を上回っている。
こうした商品が好調な背景は2つ考えられる。ひとつは外国人旅行者の激増による売り上げ増だ。日本政府観光局(JNTO)の推計によると、今年4月の訪日外国人数は176万4000人と、単月で過去最多となった。ちなみに2年前の4月は92万3000人だから84万人も増えて1.9倍になっている。
外国人観光客が化粧品を爆買い
彼らの「買い物」が大きく寄与しているとみていい。とくに化粧品は昨年10月から免税の対象に加わったことで、外国人観光客に大人気だ。もちろん、免税品を買える外国人観光客には、消費税増税の影響はほとんどない。
もうひとつが、株価上昇による、いわゆる「資産効果」である。保有株の資産価値が上がったことで財布のひもが緩む効果だ。実際、アベノミクスが始まった2013年1月以降、消費増税直前の昨年3月まで、「美術・宝飾・貴金属」の売り上げは毎月2ケタの伸びを記録していた。
アベノミクスが始まっても、初めのうちは「美術・宝飾・貴金属」や「身の回り品」など比較的高額な商品しか売れていなかった。野党などからは「消費が回復したのは資産家が買う高級品だけで、食料品などの庶民の消費は回復していない」と批判された。
だが、その後、高額商品だけでなく、衣料品や食料品なども徐々にプラスに転じていった。つまり、高額商品が消費回復の先行指標だったわけだ。
今年4月の「美術・宝飾・貴金属」の伸び率は、駆け込み需要の反動で落ち込んだ昨年4月に比べて77.3%増。再び高級品が消費をけん引し始める気配が出てきたと見ることができるかもしれない。
今後、GDPが本格的なプラスになっていくには、こうした比較的底堅い高額品消費が、他の食料品や衣料品など一般的な商品に広がっていくかだ。
もし、高額品消費だけの好調が続くとすると、今度ばかりは、「資産家だけが消費している」という野党などの批判を、安倍内閣がかわすことはできなくなってしまうだろう。
このコラムについて
磯山友幸の「政策ウラ読み」
重要な政策を担う政治家や政策人に登場いただき、政策の焦点やポイントに切り込みます。政局にばかり目が行きがちな政治ニュース、日々の動きに振り回されがちな経済ニュースの真ん中で抜け落ちている「政治経済」の本質に迫ります。(隔週掲載)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150521/281409
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