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「爆買い」はもはや中国人だけのものではない。あらゆる国の観光客が、日本を目がけてやって来る。どうしたら、その恩恵にあずかることができるのか Photo:Osamu Honda/AFLO
こうすれば外国人観光客がやって来る!爆買いを仕掛ける人々の「スゴイ視点」
http://diamond.jp/articles/-/71946
2015年5月22日 多田慎介 ダイヤモンド・オンライン
インバウンド(訪日観光客)の消費が拡大し続けている。メディアには「爆買い」の文字が躍り、中国をはじめとする近隣諸国や欧米各国のみならず、イスラム教圏からの旅行者も多く見かけるようになった。彼らを惹きつける日本の魅力とは何なのか。また、インバウンドの商機をつかむためにどのような仕掛けがなされているのか。自治体、企業、商店街への取材を通して、爆買いを仕掛ける人々の「スゴイ視点」を探った。(取材・文/プレスラボ・多田慎介)
■1-3月期は前年同期比64.4%増 激増を続ける「ガイジン消費」
両手に抱え切れないほどの買い物袋を下げて、街を歩く人たち。百貨店や家電量販店で、必ずと言っていいほど聞こえてくる外国語――。
円安基調の持続を背景に、中国人をはじめとしたインバウンド(訪日観光客)の消費が堅調だ。質の良い日本製品を求める彼らの旺盛な消費意欲を見て、メディアには「爆買い」という言葉が躍る。
一昨年にタイとマレーシア、昨年にはインドネシアからの観光客にビザを免除する誘致策がとられ、今後は経済成長を続けるイスラム教圏からのさらなる訪日数増加も期待されている。
4月30日に観光庁が発表した『訪日外国人消費動向調査』の結果によれば、平成27年1-3月期の訪日外国人による旅行消費額は7066億円。前年同期比(4298億円)で実に64.4%増という高い伸びを見せた。
外国人が足を運ぶのは、秋葉原の電気街や銀座のブランドストリートだけではない。その裾野は全国各地へ広がっている。今後も増え続けるであろうインバウンド消費の拡大を、新たな商機に変えるのは誰なのか。独自の取り組みを進める自治体や商店街、企業を取材した。
■新幹線開通で勢いづく金沢市 長期滞在者を狙う「ブロック戦略」
3月14日に営業を開始した北陸新幹線により、東京と最速2時間28分で結ばれた金沢市。観光バブルに沸く地元では、インバウンド誘致にも力を入れている。
市の観光交流課によれば、代表的な観光地である兼六園の入場者数統計から見た訪日観光客の内訳は、「台湾からの旅行者が半数以上を占め、圧倒的に多い」という。石川県内の小松空港と台湾を結ぶ直通便が毎日運航していること、日本統治時代の台湾で農業水利事業に大きく貢献した金沢出身の技術者・八田與一(はったよいち/1886-1942)の知名度が現地で高いことなどから、もともと台湾人観光客からの人気が高いのだそうだ。
市では、北陸新幹線の開業をさらなるインバウンド誘致のチャンスと捉えている。沿線の他都市から短時間でアクセスできるようになり、「金沢にも足を運びたい」と考える外国人が増えると睨んでいるのだ。欧米を中心に、2〜3週間の長期日程を組んで来日する旅行者を想定している。
誘致策の1つが、「金沢市外国人旅行者受入環境整備事業」。宿泊事業者や観光事業者、飲食店、商業施設などに対し、外国人が過ごしやすい環境をつくるための補助金を交付する制度だ。対象は施設案内の外国語表記や無線LANの設置、外国語ホームページやパンフレット作成など。
要件を満たして申請が通った事業者には、40万円を上限として補助対象経費の3分の2が交付される。市はこれを進めることで、観光都市としての魅力を高めることができ、小規模事業者にとっては外国人観光客のニーズ獲得に大きな後押しとなる。
また、他の自治体との連携によるPRも行われている。「滞在期間が長い旅行者は、国内の様々な都市を訪れたいと考えるはず。そのため1都市だけでPRすることはあまり効果的ではないと考えている」と担当者は話す。
実際に、北陸新幹線の沿線にある長野市と組み、ヨーロッパの旅行会社を招いて、2都市の観光名所を視察してもらうといった取り組みを進めている。「長野では善光寺を訪れ、金沢ではひがし茶屋街を歩く」といったパッケージツアーの企画につなげる狙いだ。
さらに、松本市や岐阜県の高山市、白川村などの自治体とも同様に連携。自都市だけを点で見るのではなく、地方を線でつないだ「ブロック戦略」でインバウンド消費の拡大策を進めている。
■「民間観光案内所」で周遊性アップ 欧米人の取り込みに熱心な広島市
かたや、西日本随一の商業規模を誇る広島は、グルメやショッピングを楽しめる街としてのPRも加速させている。
広島市では、世界文化遺産に登録されている原爆ドームや平和記念公園といったスポットへ、欧米からの観光客が数多く訪れる。市の観光政策部によると、外国人旅行者の国別の内訳では1位がアメリカ、2位がオーストラリア、3位がドイツだという。ショッピングを主目的とするのではなく、平和への祈りや決意を再確認するための街として、この地を訪れる旅行者が多いのだ。
「狭いエリアの中で効率的に観光できるコンパクトさが広島の魅力」と担当者は話す。観光拠点である広島駅から原爆ドームや平和記念公園までは、直線距離で3キロ以内。この間には市内最大の歓楽街・流川がある。広島のインバウンド消費拡大策の主眼は、こうした都心部の飲食店や商業施設の魅力を旅行者に伝え、周遊性を高めることにあるという。
目玉となる施策の1つが「トラベルパル・インターナショナル」。市内の民間事業者に街角観光案内所としての役割を担ってもらい、安心して歩き回れる街として旅行者へPRしていく仕掛けだ。対象となるスポットでは、道順案内やトイレ・休憩スペース・無線LAN接続サービスの提供などを行う。飲食店やホテル、旅館、コンビニエンスストア、カラオケ店など様々な業種の39施設が認定され、大きな「?」マークがアイコンとなっている。
広島駅と平和記念公園の周辺には、それぞれ2ヵ所ずつ公設案内所が設置されており、ここで配布する観光マップにトラベルパル・インターナショナルのスポットを記載。今後は、スマートフォン向けの案内機能を拡充していく予定だ。市は「旅行者が安心して周遊できる街づくりを進めるとともに、地元の事業者がインバウンド消費による恩恵を受けられるよう、徐々にスポットを増やしていきたい」と意気込む。
■セレブの街・自由が丘まで!商店街が連携する「爆買いの仕組み」
「インドネシアからやって来た観光客が、ペット用品の店で25万円の買い物をしていた」
東京・自由が丘駅近くで長年飲食店を営むオーナーは、こんな目撃談を話してくれた。犬用ウェアや無添加のドッグフードなどを「棚買い」していたという旅行者。自由が丘は個人経営者によるセレクトショップなどが点在し、「ここでしか買えないアイテムに出合える街」としてのブランド力を持っているが、それは海外の旅行誌でも紹介されているという。
12の商店街から1300の事業者が加盟する「自由が丘商店街振興組合」では、インバウンド消費拡大に向けた施策が進められていた。国内最大級の商店街組織として知られる同組合では、そのスケールメリットを生かしたクレジットカード事業を15年前から展開。500店舗以上を取りまとめることにより、カード会社への料率交渉を優位に進め、加盟店舗が少ない手数料でカード決裁を利用できるようにしている。商店街組織としては、全国でもほとんど類を見ない取り組みだという。
この事業に、今年4月から「銀聯(ぎんれん)カード」が加わった。オンライン決裁システムの中国銀聯が運営する銀聯カードは、中国人観光客の主要な決裁方法として利用されており、店舗としては「爆買い」をしてもらうためにぜひとも取り入れたい仕組みの1つ。百貨店や大手小売チェーンのように、導入を進めたいと考える小規模加盟店のニーズに応えた形だ。
振興組合の担当者は、「自由が丘には『○○を買いたい』といった目的意識を持って訪れる外国人旅行者が多い。彼らが買い物をしやすい仕組みを整えることで、街のインバウンド消費を拡大できる」と話す。
■イスラム圏からの高単価旅行者が続々 「ハラルレストランアプリ」の威力
インバウンド消費を語る上でもう1つ外せないキーワードは「ハラル(Halal)」だろう。ハラルとは、イスラム教の教えの中で許された「健全な商品や活動」全般の意。特に有名なのは食材に関する戒律で、「豚肉」「酒」などを口にすることは厳しく禁じられている。イスラム法に基づく審査基準をクリアした食材であることを認定する基準として「ハラル認証」があり、国内ではこれを取得した専門レストランも増えつつある。
イスラム教徒によるインバウンド消費動向は今、どんな動きを見せているのか。また、ハラル関連ビジネスにはどのような可能性があるのか。東京・池袋のハラルフード専門レストラン「ザ・マンハッタンフィッシュマーケット」に話を聞いた。
「印象に残っているのは、マレーシアからやって来た2人組の旅行者。1週間の滞在期間中に毎晩来店し、会計金額は毎回1万円以上だった」と、ストアマネージャーの金子凌也氏は振り返る。同店の夜の平均単価は1500〜2000円。1人頭5000円としても、実に平均の3倍近くを使ってくれる上客だった。
酒類を一切提供しないなどハラル基準を徹底する同店には、国内在住のイスラム教徒や、インドネシアやマレーシアといった東南アジアのイスラム教圏からの観光客が、多く来店する。インバウンド専門の旅行会社からの紹介で、30名規模の団体が訪れることも。最も高いメニューの「ロブスター」(6000円)を注文する客の95%が外国人旅行者だという。
彼らは、どこで情報収集しているのだろうか。金子氏によると、ここ最近インバウンド集客で大きな力を発揮しているのは、「HALAL NAVI(ハラルナビ)」というスマートフォン向けアプリ。国内在住の外国人イスラム教徒がハラルレストランのレビューを書き込む、ハラル専門のグルメ口コミサービスだ。
利用登録者数(国内・海外)は約7600人(5月20日現在)。81%が国内在住のイスラム教徒で、海外ではマレーシアやインドネシア、パキスタン、バングラデシュに利用者が多いという。運営する株式会社ROI(東京都新宿区)は、飲食店の販促支援事業を展開する一方でマレーシアに拠点を持ち、ハラルビジネスのコンサルティングを手がけている。
ROI代表取締役の恵島良太郎氏は、「国内在住のイスラム教徒コミュニティを充実させることが『ハラルナビ』の基本戦略」と話す。海外での広報宣伝は一切行わず、PR活動は国内のモスク(イスラム教寺院)やハラルレストランのみ。サービス開始のきっかけは、マレーシアの拠点から来日した現地の従業員が食事に困っていたことだったという。
「彼らが発見し実際に食事をしたハラルレストランのレビューは、イスラム教圏からの観光客にとって貴重な情報となるのでは」――そう考え、アプリ開発に着手した。利用者同士のコミュニケーションができるSNSとしての機能も持たせた「ハラルナビ」は、国境を越えてイスラム教徒のコミュニティを拡大し、日々ユーザーを増やし続けている。
■インバウンド消費を逃さない 「他とは違った視点」とは?
官民上げて様々な取り組みが進められているインバウンド誘致。訪日数の増加や「爆買い」による消費拡大が物語るのは、外国人に「訪れたい」と思わせるスポットや、「買いたい」と思わせるコンテンツ、モノの魅力を日本が十分に有しているということだろう。ハラルに対応したレストランはまだまだ不足しているという指摘もあるが、イスラム教圏からの旅行者が増加し続ける中、今後はその店舗数の拡大が予想される。
地方というブロック単位での連携PRを進める金沢市、街の周遊性を高めその魅力を深堀りさせようとする広島市、小規模事業者が集まるスケールメリットを生かして決裁システムを導入する自由が丘の商店街、そして拡大するハラルニーズに応える飲食店やそれを支援する口コミアプリ。今回取材した自治体や商店街、企業に共通しているのは、「すでに存在する日本の観光・商業資源をいかに稼働させていくか」という視点だった。
自分の住む街や自社のサービスは、外国人観光客にとってどんな魅力を秘めているのか。それを俯瞰で捉えることが、インバウンド消費拡大の恩恵に与るための第一歩なのかもしれない。
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