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日経平均2万円から、日本株は買っていいか? ヨソウは逆から読むとウソヨだが、最近よく受ける質問に真剣に答えてみよう
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43413
2015年05月21日(木) 山崎 元「ニュースの深層」 現代ビジネス
■乗り遅れた人はどうする?
雑誌などのメディアは、株価に対して賭けに出ることがある。株価が「上がる」、あるいは「下がる」と半ば決めつけて特集を組むのだ。
本サイトの僚誌ともいうべき『週刊現代』は、数ヵ月前の株価がぐずぐずしていた時期から「日本株はまだまだ上がる」という方向で勝負をかけて、一定の成功を納めたように見える。慶賀の至りだ。
『週刊現代』を素直に信じて株を買っていた向きは、日経平均が2万円に乗って少々利が乗ってウキウキしているのではないか。しかし、最近筆者が受ける質問で多いのは、「日経平均が2万円迄来たけれども、これまでに株を買えなかった。これからでも、まだ日本株を買っていいのでしょうか?」という類いの質問だ。
読者なら、どうお答えになるだろうか?
■株式投資は資本の提供
質問者が、「あなたは、株価が上がると思いますか、下がると思いますか? あなたの予想を言ってみなさい」というくらいの軽い気持ちで先の質問をしているなら、気軽に答えていい。当たり外れは、概ね半々だし、努力して当たるようになるわけでもない。「ヨソウ(予想)」は反対から読むと「ウソヨ(嘘よ!)」というくらいのものなのだ。
しかし、質問者が現実に自分のお金を動かそうとしているなら、そうは行かない。もう少し丁寧に答える必要がある。しかし、この質問に正確に答えるのはなかなか骨の折れる話なのだ。
話には、ポイントが2つある。先ず、株式投資のリターンがどのような性質のものであるかであり、次に、将来がよく分からないことを前提とした上で行う正しい意思決定とはどのようなものであるかだ。
先ず、株式投資とは、企業に資本を提供して生産活動に参加し、その利益配分を受け取ることだ。企業は各社なりに努力をして、利益を上げようとする。株式投資はその利益の一部を得ようとすることだから、資本を提供し続ける必要がある。
この場合に誤解されがちなのは、企業(や経済)が成長しなければ株式投資は儲からないという誤った俗論だ。それが常識だろうと、思う人がいるかも知れないが、そうではない。将来の利益が低成長・ゼロ成長・マイナス成長の何れでも、それが予想されていれば、その予想将来利益を、リスクに応じて割り引いた現在価値の合計として「現在の株価」は決まる(と考えられる)。
その後の成長が予想通りなら、高成長が予想される会社に投資しても、マイナス成長が予想される会社に投資しても、リターンは概ね同じなのだ。
但し、現実の成長が予想からズレた場合、より正確には、古い予想成長率と異なる新しい予想成長率が形成された場合、株価は大きな影響を受ける。
さて、話を戻して、資本を提供してリターンを得る行為が株式投資なのだ。リターンを期待するためには、資本を提供し続けていなければならない。つまり、株式は「持ち続けて」いなければならないのだ。
この行為に対して期待出来るリターンはいわば「長期のリターン」だ。それが幾らなのか、正確には誰も分からないのだが、リスクのない資産の金利プラス4%〜6%くらいとする意見が多い。
■長期のリターン±短期のリターン
株式投資に長期のリターンがあるとしても、その時々の状況に応じた予想であるいわば「短期のリターン」をこれに加減したくなる。
例えば、日本株の長期のリターンが年率5%であるとして、筆者にとっての1年後の日経平均のベストの予想(確率でウェイト付けされた期待値)として、現在よりも1割高い2万3千円を予想したとすると、どうすればいいのか。
ここで最も正直な方法は、15%を「期待リターン」としてエクセルに放り込んで、日本株への最適投資比率を求めることだろう(技術的にこの計算が出来ないFPはプロの名に値しない)。
しかし、15%を直接使うことは、金融論的にも運用実務的にも正しくない。理由は、自分の予想の「信頼度」が反映されていないからだ。もっともこの場合、信頼度というよりも「疑わしさの度合い」という方が同じ意味でも正しい気分だ。
仮に長期リターンが5%でこれが平均的な予想であるとした時に、自分の予想である15%との差「10%」は、信頼度を調整した上で、長期リターンに加味すべきなのだ。
平均的な予想と自分の予想の「差」が、予想した将来のデータとどのくらいの相関を持つかが「信頼度」だが、当たり外れを勝ち・負けで表現した場合、6勝4敗ペースを仮定するのは、あまりに強気すぎる(普通の人は5勝5敗なのだ)。ファイナンスの研究者によると、11勝9敗ではまだ傲慢、21勝19敗くらいがまずまず現実的に優れた人の勝率と認められるというくらいのものなのだ。
前者の場合、信頼度の係数は0.1、後者の場合は0.05となる。筆者の15%の予想を長期リターンの5%に加味すると、前者なら6%に、後者なら5.5%に変える位が現実的にはせいぜいなのだ。
リスクとリターンとの関係についてどのような前提を置くかにもよるが、常識的なレベルの条件だと、たとえば、5%の期待リターンで株式に50%配分していた場合、これが6%になっても60%に届くかどうか、という位の計算結果になる。
些か細かな説明になったが、このような感じが実務的に無難な運用の意思決定の実態なのだ。プロにとっての運用は、たとえ自分のベストの予想があるとはいえ、自分の予想能力を疑い、その疑いを反映してお金を動かす仕事なのだ。
■運用のアドバイス
たとえば、あなたが1千万円お金を持っているとして、「5%」が株式投資の平均的なリターンであるとすると、幾らくらい株式に投資しているのがあなたにとって「最適」だろうか。
仮に、それが500万円なのだとしよう。
あなたが、「2万円はほんの通過点で、株価はこれから本格的に上昇する」と最大限強気に考えるなら600万円くらいまで投資してもいいだろうか。
逆に、「2万円は既にバブルであり、天井圏だ」と弱気になっているのであっても、400万円くらいの投資は維持すべきだろう。
そして、現在500万円持っていようと、全く株を持っていなくても、同じ状態が最適になる。運用では「今持っているか、いないか」が大事なのであって、持っている資産を過去に幾らで買ったかは無関係だ。
ちなみに、株価については、強気・弱気どちらのシナリオも簡単に書けるのが普通であり、現状も例外ではない。
日本企業の経営者が自分の報酬を上げるために、報酬を株価やROEに連動させて、自社株買いや配当でROEを上げようとする競争が起こる「株主還元バブル」が起こって株価がまだまだ上がる強気シナリオを考えることも出来るし、今年後半に予想される米国の金融引き締めの悪影響が日本株にも及ぶ可能性や長期金利が正常化した時の日本株の株価水準の高さなどを理由に弱気シナリオを書くこともできる。
筆者は、もうしばらくは株価の好調が続き、日経平均で2万2、3千円があり得ると思うが、その辺りが当面の天井で、今年の後半に転機(たぶん米国の金融引き締め)が訪れるのではないかと今考えている。しかし、自分の予想を信用しているわけではないし、予想をいつでも変更する用意がある。
読者は「いい加減だ!」と思われるかも知れないが、このくらいがせいぜいなのが現実なのだ。「いい加減」しか得られないことを前提にした上で、どういう判断をするかが、運用のポイントだ。読者も自分自身がなにがしか「いい加減」であることを計算に入れてお金の運用を考える方がいい。運用では、他人も自分も信じ過ぎてはいけない。
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