http://www.asyura2.com/15/hasan96/msg/705.html
Tweet |
米国債利回りも歴史的な低水準を記録している(写真はワシントンの米財務省)〔AFPBB News〕
35年続いた債券強気相場は終わったのか?高格付け国債、歴史的な低利回りについに転換期が到来
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43844
2015.5.21 Financial Times JBpress
(2015年5月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
トップクラスの格付けを持つ国債の35年に及ぶ強気相場は終わったのだろうか。もし終わったとするなら、それは良いことなのか、それとも悪いことなのだろうか。
1つ目の問いについては、今年4月にドイツ国債10年物が記録した0.08%という利回りが底値だと見てよさそうだ。
2つ目の問いについては、良いことだと考えられよう。デフレーやユーロ圏分裂の脅威が弱まっているという人々の見方を示唆するものであるからだ。
同時に、この相場の反転は、利回りがかつての普通の水準に向かって急上昇していくことを意味するものではない。我々は上昇を望むべきだが、そのペースは緩やかなものであってほしい。また、その緩やかな上昇こそ我々が予想すべき展開である。
10年物国債の利回りは、童謡「The Grand Old Duke of York(りっぱなヨークのこうしゃくさま)」に出てくる兵隊たちが隊列を組んで丘を登ったり下ったりするように、上昇したり低下したりしてきた。
■ドイツや米国、日本など高所得国に共通する長期トレンド
規模の大きな先進国の国債利回りがピークを付けたのは1980年代初めのことだった。
日本のピークは10%近くで、ドイツのそれは11%。米国は15%で、英国は16%だった。利回りはここから低下し、日本では1990年代後半までに2%を下回るほどになった。ほかの3カ国でも、2008年の世界金融危機前には3〜6%に下がっており、その後さらに低下している。
米連邦準備理事会(FRB)の前議長、ベン・バーナンキ氏がブログに先日書いていたように、理論的には、長期金利は短期金利の予想値の加重平均に「ターム(期間)プレミアム」なるものを上乗せしたものになるはずだ。
期間プレミアムはプラスであるのが普通で、デフォルト(債務不履行)リスクがない場合でもプラスになるはずである。満期までの期間が長い証券の価格は期間の短い証券のそれよりも変動が大きいため、長期の証券の方がリスクが高いのだ。
短期金利の予想値は、実質金利の予想値とインフレ率の予想値によって決まるはずである。
そして国内の実質金利の予想値は、世界の実質金利の予想値と実質為替レートの変化の予想とによって決まるはずである。
さらに、世界の実質金利の予想値は、貯蓄と投資のバランスの予想によって決まるはずである。そして最後に、投資家のリスク回避――これが限界に達すると完全なパニックになる――とか、外国政府や外国の中央銀行による購入といった特殊要因も、長期債の価格に影響を及ぼす。
■債券利回りが低下した理由
これまでの債券利回り低下(つまり債券価格上昇)の説明要因は、そのほとんどが十分に明快だ。
1990年代半ばまでは、インフレ率の低下が支配的な原因だった。日本では、2000年代にデフレまで根付いてしまった。1990年代後半から世界金融危機にかけては、長期の実質金利の低下が主たる要因だった。英国の物価指数連動国債の利回りが示すように、長期の実質金利は4%を少し下回る水準から2%を少し上回る水準へと低下していた。
世界金融危機以降は、実質金利のさらなる低下が支配的な要因になっている。実質金利は今や、英国と米国では0%に近い。また、英米国民は物価が小幅に(中央銀行の目標と同程度に)上昇し続けると予想しているが、日本ではそうではない。
欧州中央銀行(ECB)はこのところ、ユーロ圏内の人々が物価の上昇を予想し続けるようにすることを目指した政策手段を講じている。一方、リスクプレミアム(期間プレミアム)は推計するしかない。長期的には乱高下しているが、米国のニューヨーク連邦準備銀行の推計によれば、現在は0%に近いという。
利回りの水準が低い最大の要因は中央銀行の国債購入にあると考えている人は多い。しかし上記の証拠は、この見方が正しくないことを示唆している。確かにこれは1つの要因ではあるはずだが、短期金利は今後も低い状態が続くという人々の予想の方がはるかに重要なのだ。
今日、英国と米国の長期債利回りは、その景気回復を考えれば際立って低い水準にある。その理由の1つは、ユーロ圏の状況からの影響に求められる。
ECBはここ数年、ユーロ圏の分裂につながると認識されたリスクを除去することに成功してきた。現在取り組んでいる資産買い入れプログラムやそのほかの政策手段も、ユーロ圏の名目利回りの水準を全般的に引き下げてきた。
しかし、これにはドイツやスイスなどへの国債に資金がシフトするという強力な避難先効果も作用している。実際、スイスフラン高が容認された時には、スイス国債10年物の利回りがマイナスになった。ドイツ国債10年物の利回りは事実上0%近くに低下した。
今後留意しなければならない4つのポイント
では、今度は何が起きる可能性があるのか。これについては、以下のポイントに留意する必要があるだろう。
第1に、今日ではすべての重要な高所得国において、利回りは名目・実質ともに非常に低い水準にある。従って、これまで続いてきた長期的な経済成長とプラスのインフレ率が終わりを迎えたのでなければ、昨今の水準からは低下するよりも上昇する可能性の方がはるかに高い。
ECBの努力が実を結んで景気回復のペースが上がり続ければ、利回りは大きく上昇する公算がある〔AFPBB News〕
第2に、欧州中核国の利回りは驚くほど低い。もしECBの努力が実を結んで景気回復のペースが上がり続ければ、利回りは大きく上昇する公算がある。
日本についても、最終的にはそうなるはずだ。
第3に、世界金融危機後の逆風――特に、家計が抱える高水準の債務――は強い。中国の景気減速も重要になるに違いない。
従って、世界の実質金利の均衡値は比較的長い期間、過去の基準に照らせば低い水準にとどまる公算が大きいだろう。
第4に、短期金利の予想値が急上昇して通常の長期債の利回りが上昇するという状況が見られるのは、景気が力強く回復して(その場合、実質金利は押し上げられる)インフレ率の予想値も(恐らく)力強く上昇した後に限られるだろう。そのような展開は、あり得ないわけではないが、実現しそうにないように思われる。
債券利回りの大幅上昇が良いことか否かは、その原動力が実体経済についての楽観論なのか、あるいはインフレについての悲観論なのかに主に左右されよう。
最後に、もし名目・実質の利回りが昨今の水準よりさらに低くなったら、それはデフレへの突入を意味することになるだろう。中央銀行にはそれを未然に防ぐ能力があるし、未然に防いでくれるだろう。デフレ突入は絶対にないとは言えないが、可能性は非常に小さいように見える。
■緩やかな反転・上昇がベスト
要するに、安全な証券の利回りが名目・実質の両方で長期にわたって低下し、最近になってさらに下がったというこれまでの局面は、終わりを迎えた公算が大きい。実際、そう願わなければならないだろう。
これ以上の利回り低下は非常に不穏な事態となる。同時に、利回りが金融危機前に正常だと考えられていた水準に急激に戻ることは考えにくく、実際にそうなればいくらかの不安定性が生じることは確実だろう。
現在は債券利回りの転換点である可能性が高い。しかし、いろいろな不確実性があることを考えれば、緩やかに反転・上昇するというパターンをたどるのがベストだろう。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。