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スマートフォンが及ぼす 既存ビジネスへの破壊的影響
http://diamond.jp/articles/-/71863
2015年5月21日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] ダイヤモンド・オンライン
インターネットにおける最近のトレンドは、スマートフォン利用の増加と、それを用いた新しいサービスの登場である。これらは、われわれの日常生活を大きく変えようとしている。
■減少するテレビ、PC 増加するスマートフォン利用
まず、スマートフォン利用の増加について見よう。KPCBのメアリー・ミーカーが作成する「インターネット・トレンド(2014年版)」(Internet Trends 2014)によると、つぎのとおりだ。
インターネットの成長率は低下しており10%を切った。しかし、スマートフォンの成長率は20%、モバイルデータトラフィックの成長率は80%と高い。
図表1に示すテレビ、PC等の出荷台数を見ると、テレビの出荷台数は1999年からほぼ一定であるのに対して、スマートフォンとタブレット端末が2009年頃から急上昇したことが分かる。
図表2は、各国におけるテレビ、デスクトップおよびノートPC、スマートフォン、タブレット端末の使用時間を示す。
新興国では、スマートフォンの利用時間がかなりのウエイトになっていることが注目される。スマートフォンの使用時間がテレビを上回っている国が多く、PCの使用時間がテレビを上回っている国が全体の半分くらいある。一種のリープフロッグ現象(ある発展段階を飛び越えて、つぎの発展段階に進むこと)が起きていることが分かる。
先進国の中でアメリカだけは別だが、日本、ヨーロッパではテレビ視聴の時間が多い。その意味では遅れている。日本はとくにそうだ。
音楽で見ると、物理メディアが減少し、ストリーミングが増加した。13年における対前年増加率は、ストリーミングが32%、物理的メディアがマイナス13%だ。この年には、ダウンロードがマイナス6%と、初めてマイナスになったことが注目される。
インターネット広告はまだ成長中だ。とくに、モバイル広告が伸びている。
以上のような変化をもたらしたのは、コストの低下だ。1メガのトランジスタ当たりのコストは、1990年の527ドルから、2012年の0.05ドルまで低下した。1ギガバイト当たりのメモリーコストは、1992年の569ドルから、2012年の0.02ドルまで低下した。標準的なスマートフォンの価格は、08年の430ドルから13年の335ドルに低下した。
■既存のビジネスには破壊的影響も Uberに見るタクシー事業の「再構築」
スマートフォンなどを用いる新しいサービスが登場し、消費者の日常の行動パターンを大きく変えている。ミーカーは、これをRe-Imagining(再構築)と呼んでいる。
これは半面で、タクシー産業、ホテル産業など既存のビジネスに大きな影響(場合によっては破壊的影響)をもたらしている。
Re-Imaginingの具体例としてミーカーが挙げているのは、Yelp、Airbnb、Uber、Waze、Spotify、Amazon Fire TVだ。
これらを中心として、インターネットの新しいサービスを見ていこう。
Uber(ウーバー)は、ハイヤー・タクシーの即時手配サービスだ。スマートフォンで行き先を入力すれば、車の到着時間や料金の目安が示される。支払いもクレジットカードで自動決済される。言葉の通じない国でも、タクシーが簡単に利用できる。
タクシー側にもメリットがある。空車で無駄な「流し」をする必要がなく、稼働率を引き上げられるからだ。
このサービスは、トラヴィス・カラニックが2009年にサンフランシスコで始めた。すでに世界54ヵ国、250以上の都市でサービスを実施している。未上場だが、株式時価総額はおよそ400億ドル(約4.8兆円)にのぼると言われる。
日本にも進出している。13年11月(本格運用は14年3月)から、台数限定、東京都山手線内側の南半分限定でハイヤーの手配サービスを開始した。14年からは、東京都内でタクシーの即時手配サービスを開始した。
ニューヨークでは「UberRUSH」というサービスがある。これは、荷物を運ぶサービスだ。
Uberは、注文から10分以内に料理を届ける「UberEATS」というサービスをニューヨークとシカゴで始めた。提携先のレストランがつくった料理をUberのドライバーが温度制御されたボックスに入れておき、市内を流して、近くの顧客から注文が来れば届ける。
なお、日本ではLINEが配車アプリに参入するなど、類似サービスが登場している。
GrubHub(グラブハブ)は、レストランフードのデリバリープラットフォームだ。
自分の居場所と、食べたいものを入力する。支払いはクレジットカードやペイパルで行なう。04年にシカゴで始まった。
なお、日本にも、法人向けの「ごちクル」や個人向けの「bento.jp」がある。
■グルメだけではない口コミ情報 レビュー対象への影響も多大
Waze(ウェィズ)は、ユーザー同士で道路状況を共有できるアプリだ。他ユーザーからのメッセージを受け取ることができるし、自分からメッセージを送ることもできる。そうした情報を全ユーザーが共有する。
事故、交通渋滞、スピード違反検知、警察に関する情報の報告や道路などの情報を流す。近くにある価格が安いガソリンスタンドを見つけることもできる。イスラエルの企業が開発した。2012年7月、Wazeはユーザー数が2000万人になったことを発表した。
Yelp(イェルプ)は、いわゆる口コミサイトである。04年にオープンした。飲食店、小売店、ホテル、ガソリンスタンドなど「住所のある場所についてなら、何でもレビューできる」。医療機関やホテルや文化施設、教育機関、美術館、公園、教会といった非ビジネス的場所も含まれる。
ユーザーは星1〜5個とコメントによるレビューを投稿したり、他の人のレビューを検索/閲覧したりできる。スマートフォン経由の比率が59%を占めている。
この種のサービスとしては、紙の出版物として、昔からさまざまなものがあった。例えば、都市のレストランを紹介・評価する「Zagat Survey」があったし、ヨーロッパの都市を中心としてホテルやレストランを評価する『ミシュラン』があった。Yelpは、そのインターネット版である。
日本では「食べログ」「ぐるなび」といったグルメ系口コミサービスがあるが、Yelpがカバーする範囲はもっと広い。
現在、アメリカを中心に25ヵ国でサービスを展開しており、レビューの総投稿数は5300万件超(14年4月現在)。Yelpの発表によると、(13年第4四半期)で、月間ユニークビジター数は1億2000万人を超えている。
投稿された評価は、独自のアルゴリズムで自動で分類し、信頼性の低いもの(同じアドレスから短時間に何回も投稿されたものなど)は別ページに排除する。さらに、実名と顔写真の登録を推奨することで、悪意ある投稿をしにくくしている。
レビューされている比率が高いのは、ショッピング、レストラン、ホテル、ビューティー&フィットネス、アート・エンターテインメント&イベント、ヘルス、ナイトライフなど。
Yelpのレーティングが星3つ半から4つ星に増えるだけで、夜7時予約の売り切り率が30%から49%に増加すると言われる。
Yelpは12年に米NASDAQに株式公開した。主な収益源は広告。13年の売上高は2億3298万ドルと、12年の1億3760万ドルから急伸している。
■空き部屋から城、島、テントまで宿泊場所と旅行者をつなぐ
Airbnb(エアビーアンドビー)は、空き部屋などを持つ宿泊場所の提供者(ホスト)と宿泊場所を探している旅行者(ゲスト)をつなぐインターネット上のプラットフォーム。目的地の都市名を入力すると、ゲストを迎え入れたいホストの物件写真と顔写真が示される。物件は、一軒家やアパートの空き部屋が多いが、エアベッド、共用スペース、城、クルーザー、荘園、ツリーハウス、テント、イグルー(雪の家)、個人所有の島などもある。
2008年8月、ジョー・ゲビア、ネイサン・ブレーカージク、ブライアン・チェスキーがサンフランシスコで創業した。現在、192ヵ国に55万件以上の登録物件があり、13年には、世界で600万泊以上の利用があったという。
14年4月に、同社は約100億ドルの評価額となった。
■アップルを脅かすストリーミング配信サービス
Spotify(スポティファイ)は、音楽のストリーミング配信サービス。2013年現在、2000万人を超えるユーザーを抱える。
先のミーカーのレポートにもあったように、音楽ストリーミングからの収益が音楽ダウンロードからの収益を上回るようになってきている。音楽ストリーミングは今後主要となる音楽の聴き方であり、将来的な音楽産業の収入源の柱になるだろうと考えられている。
そして、CDによる音楽販売はもちろん、先行する音楽配信サービスであるiTunesのビジネスモデルを脅かすサービスとして注目を集めている。実際、世界最大の音楽ストアのiTunesストアを運営するアップルではダウンロード売上が13年にマイナス5.7%、14年にはマイナス13%になっている(ただし、日本では、音楽ストリーミングはおろか、ダウンロードでさえマイナーな存在だ)。
Amazon Fire TVは、アマゾンが新たに米国で発売した99ドルのストリーミングメディアボックスだ。今後、アップルの製品などと競うことになる。
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