http://www.asyura2.com/15/hasan96/msg/669.html
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中前国際経済研究所代表中前忠氏の経済コラムである。
「輸出投資主導型成長の限界は、生産能力が需要を上回ってくることだ。リーマン・ショック後の先進国の需要の大幅な低下により、中国の輸出と生産は大きく落ち込んだ。これに対し中国は、投資主導型の巨額の景気刺激策を実施した」という事実経過は、その後に続く段落で列挙されている“異常”とも言える基礎的工業製品の供給力増強につながる出来事だが、確かに、急ぎ走りすぎていることや非効率企業の温存という問題は指摘できるとしても、“中国の巨大さ”(量的目安として日本の10倍を考えるといい)を考えれば制御が可能なレベルである。
輸出主導型は本来的に国民経済範囲で“供給力過剰”という宿命を背負っており、世界経済の変動がもたらすショックを公共投資などの国家政策で緩和する必要がある。
また、バブル崩壊に関する「この投資バブルが崩壊しようとしている。稼働率が極端に低いなかでは、過剰設備、過剰在庫のファイナンスは不可能に近い。国内と海外の市場で、企業と不動産投資の主役であった地方政府のデフォルトが顕在化し始めている」という問題は、国家資本主義中国の場合下記に示す手法などで対応ができ、日本のような“惨劇”にはつながらない。
過剰供給で野ざらしの住宅も、日本の江戸期の農民よりも過酷な生活を強いられている人が数億もいるのだから邪魔にはならない。
※関連記事
「中国人民銀、地方債担保制度通じた流動性供給を否定:中国、債務問題に広範な刺激策で対応 債務債券化で地方政府の返済支援」
http://www.asyura2.com/15/hasan96/msg/574.html
「アジアインフラ投資銀行(AIIB)構想の狙いは、鉄鋼やセメントの過剰生産のはけ口としてのアジアのインフラ投資促進だろう」というのは皮相な見方だと思う。
むろん過程としてそういうメリットもあるが、鉄鋼やセメントという特定分野の需要拡大が直接の目的ではなく、アジア圏全体が経済成長を遂げることでのみ自らも「中進国の罠」を乗り越えられると考えている中国共産党の“深慮遠謀”である。
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[十字路]中国バブルの崩壊
グローバリゼーションがもたらした最大のものは、中国の工業化とその行き詰まりだ。冷戦構造崩壊後、中国をはじめ新興国が開放政策を採り、これが巨大な低賃金労働力を国際市場に供給することになり、この低賃金を求めて多国籍企業が競って工場進出を進めたのである。
中国では、多国籍企業の直接投資による工場進出を契機として、投資主導型の高成長が始まった。新工場の建設とともに生産能力が拡大し、生産性の上昇に伴って競争力が高まり、輸出と経常収支の黒字が増加していった。
このような輸出投資主導型成長の限界は、生産能力が需要を上回ってくることだ。リーマン・ショック後の先進国の需要の大幅な低下により、中国の輸出と生産は大きく落ち込んだ。これに対し中国は、投資主導型の巨額の景気刺激策を実施した。
多国籍企業の投資が減少し、経常黒字も縮小するなかで、外国銀行からの借り入れに頼って、設備投資と不動産投資は再び加速した。例えば、鉄鋼は8億トンの生産量に対し11億トンの生産能力に、自動車は2500万台の販売に対し5000万台の生産能力にまで拡大した。セメントに至っては、米国が20世紀の百年間で消費した量を僅か2年間で消費するという大投資バブルを生み出したのである。
この投資バブルが崩壊しようとしている。稼働率が極端に低いなかでは、過剰設備、過剰在庫のファイナンスは不可能に近い。国内と海外の市場で、企業と不動産投資の主役であった地方政府のデフォルトが顕在化し始めている。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)構想の狙いは、鉄鋼やセメントの過剰生産のはけ口としてのアジアのインフラ投資促進だろう。高成長の延命策としての景気刺激策のやりすぎが、中国の工業化モデルの終焉(しゅうえん)を早めているといえよう。
(中前国際経済研究所代表 中前忠)
[日経新聞5月15日夕刊P.5]
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