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日立が開発したレアアースを使わない産業用モーター。中国のレアアースに依存しない日本の経済界の動きもあって、中国レアアース業界は赤字転落した(写真:産経新聞)
中国ついに“白旗” VS日欧米「レアアース兵糧戦」で自ら首を絞めた
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150516-00000530-san-cn
産経新聞 5月19日(火)10時0分配信
2010年9月に尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖で起きた中国漁船衝突事件とその後の日中摩擦を受け、中国が制裁措置として事実上の対日輸出規制を行ったレアアース(希土類)。ハイブリッド車(HV)のモーターなどハイテク製品に欠かせない素材だが、日本は欧米とも共同歩調を取って追い込んだ結果、不当な措置をとり続けた中国は5月1日に最終的に白旗を掲げた。
■輸出枠に続き輸出税も撤廃
中国国務院(政府)関税税則委員会はレアアースの輸出税を同日付で撤廃することを決めたからだ。中国は世界最大のレアアース輸出国だが、輸出に15〜25%の関税を適用するなど、規制をかけていた。日米欧が共同で提訴した中国を調査した世界貿易機関(WTO)が昨年、レアアース輸出規制をルール違反と最終判断。中国は今年1月、すでに輸出枠の撤廃に追い込まれていた。
中国漁船が日本の海保の船舶に意図的とみられる動きで衝突した事件にもかかわらず、日本側に非があるとして対日感情を急激に悪化させた。最高指導者だった●(=登におおざと)小平氏がかつて「中東に石油あり、中国にレアアースあり」と述べ、外交ツールと位置づけてきたレアアースの禁輸で、制裁に乗り出そうとしたようだ。
世界の需要の90%以上を出荷していた中国は、制裁措置に音を上げた日本の経済界が政界に圧力をかけることをもくろんでいた。同時に欧米市場向けも“売り惜しみ”で輸出を滞らせて値をつり上げるなど、姑息(こそく)ともいえる戦術に出た。
確かに安価な中国産レアアースに頼り切っていた日本の経済界だったが、危機感を募らせた結果、漁船衝突事件をきっかけに対中依存度を引き下げようと日本企業は、レアアースを使わない製品やレアアースのリサイクル技術を続々と開発した。この結果、中国の対日レアアース輸出量は11年に前年比34%減となり、その後も大幅減少が続いている。日本企業は「やればできる」ことを証明。オーストラリアなどからのレアアース供給も本格化し、中国産の需要は減っている。
■疲弊する中国レアアース業界
こうした中で中国産レアアースの価格が数十%も下落した。国内の過剰生産と過剰在庫がダブル、トリプルパンチとなって中国のレアアース業界は疲弊。中国紙、21世紀経済報道によると、輸出減少や価格下落などを背景に、中国のレアアースは14年、業界全体として初めて赤字に転落した。業界団体の中国稀土行業協会の陳占恒副秘書長が、重点企業18社を対象に行った調査結果として明らかにした。
これら18社の利益合計は11年以降、年ごとに減少。13年の合計利益はそれでも31億元(約605億円)だったが、14年は赤字転落したという。赤字幅は明らかにしていないが、14年の売上高合計は前年比21%減の260億元に止まった。
中国当局は14年からレアアースの資源管理を強化して国際競争力を再びつけるとして、業界の再編を加速させている。レアアース業界は最終的に北方稀土、五鉱集団、中国アルミ、カン州稀土、広晟有色金属、厦門●業(●は金へんに烏)の6大企業グループに統合される見通しだ。
過剰在庫も足かせだ。山西省の大手ネオジム磁石メーカーの場合、工場の稼働率はピーク時の6割減という。日本の業界関係者によると、中国のレアアース業者は「日本企業にもっとレアアースを調達してもらいたい」などと取引拡大を懇願してきているという。
■中国の「次の一手」に警戒せよ
拳を振り上げて制裁しようと意気込んだものの、逆に国内のレアアース業界がガタガタになってしまった中国。中国がチラつかせる外交の切り札にどう対処すべきか。日本はこのレアアース問題でいい経験も積んだ。だが白旗を挙げたように見せかけて、次なる攻撃材料を用意しているのが中国の常。油断は禁物だ。(上海 河崎真澄)
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