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中国南部・広西チワン族自治区陽朔県で、稲刈りをする女性〔AFPBB News〕
中国の食料自給の重いツケ コストが膨れ上がり、腐敗の温床となる農業支援制度
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43813
2015.5.19 The Economist JBpress
(英エコノミスト誌 2015年5月16日号)
中国は食料自給の維持に向け努力をしているが、コストが拡大している。
中国の農業労働者の賃金がここ5年で高騰するのに伴い、中国南部のサトウキビ生産者は、国境を越えたベトナムで人手を探すようになった。彼らは冬の収穫期を中心に、畑仕事をするベトナム人労働者を雇った。賃金は中国人労働者のほぼ4分の3だ。
こうしたベトナム人は不法移民だが、地方政府当局は見て見ぬふりをしていた。
広西チワン族自治区にある崇左市は、カルスト地形の丘に抱かれた赤土の畑にサトウキビが育つ中国の「砂糖の都」だ。
この崇左市には、毎年およそ5万人のベトナム人が流れこんでいた。
だが、最近のベトナムとの政治的緊張により、中国はそうした出稼ぎ労働者を締め出し始めている。サトウキビ生産者にとって、その影響は大きい。例えるなら、カリフォルニアの果樹園からメキシコ人労働者が突然消えたようなものだ。
この打撃がなくても、崇左の農家は、安い輸入品との競争により、深刻な経営難に陥って当然な状況にあった。だが、国内の砂糖産業のてこ入れを目指す中国政府の取り組みのおかげで、どうにか帳尻を合わせることができていた。
■農家を破綻から守る手厚い措置
中国政府は砂糖の輸入承認を遅らせ、割高な国産の砂糖を購入して国の砂糖備蓄を膨らませている。採算の合わない農家がサトウキビの栽培を続けられるよう、北京の政府当局者は、補助金を直接交付する制度を検討している。崇左は衰退するのを許されないのだ。
地方政府はベトナム人労働者の流入を阻止する一方で、「スイートローン」の提供を始めている。そうした戦術に頼るケースが増えているが、これは砂糖に限らず、中国の農業生産全体に広がる不調を示す症状だ。コストは上昇し、収穫量は伸び悩んでいる。政府は支援をこれまで以上に強化し、農家を破綻から守ろうとしている。
中国では1950年代後半に、基本的には人災と言える飢饉が生じ、数千万人が命を落とした。それ以降は意外なことに、食料をほぼ自給してきた。世界の総人口の5分の2にあたる国民を、世界の耕作可能地のわずか10分の1の耕作地で養ってきたのだ。
だが、中間層の食欲が増している現在の中国は、もはや自国の農業だけに頼ってはいられない。
2011年には、中国は世界最大の農産物輸入国になった。この流れを牽引しているのが、豚の飼料となる大豆の需要だ。
だが中国は、大豆に対する開放的な態度とは対照的に、主要食料と見なす農産物についてはバリケードを張りめぐらせている。中国共産党は政権を手にしたばかりのころから、穀物の自給自足を追求し、砂糖から豚肉まで幅広い農産物を自国で供給することを目指してきた。
5月6日に公開された国家安全保障に関する新法案の第2草案では、「糧食安全」の確保に関する国の責任が明記されている。「糧食安全」は、中国の政府高官がしばしば食料自給と結びつけて使う言葉だ。
■毛沢東の戦略目標は達成されたが・・・
食料を自給できる程度にまで中国農業を成長させることは、毛沢東(飢饉を引き起こした張本人ではあるが)の戦略的目標だった。というのも、毛政権時代の大部分を通じてソビエト連邦と米国は敵対する相手だったし、毛沢東自身、グローバル市場をほとんど信用していなかったからだ。
今日でも、中国の政府高官の中には、ほぼ同じ考えを持つ者がいる。
食料自給の維持には、莫大な費用がかかる。先進国のシンクタンクである経済協力開発機構(OECD)によれば、中国は2012年に、農業支援に1650億ドルを費やした。この額は5年前の2倍にあたる。
また、食料自給の維持は、効率の悪さの原因にもなっている。国の定めたコメ、小麦、トウモロコシの最低買取価格は、世界的な水準よりもはるかに高い。これには生産を後押しする効果があるものの、農家に多角化を思いとどまらせ、土地資源をより有効に活用できる換金作物への切り替えを妨げるという面もある。
そうした国の介入の結果、中国では、小麦やトウモロコシといった大量の水を必要とする作物が、水の乏しい土地で広く作られている。
そうした作物の生産量を上げるために使われる化学肥料が、水源を汚染している。1990年代以降、収穫量の伸びは鈍り、近年では生産高は横ばいだ。
しかし、コストは上がり続けている。とりわけ人件費は、若者が都会へ移住するにつれて高騰した。
中国の農家が作る主要作物の収穫が過剰になった年には、国が余剰分を備蓄用として買い取る。中国以外の多くの国も同様の政策を取り、食品価格を安定させるために、あるいは干ばつや病害の際の保険として備蓄している。
■必要以上に多い国家備蓄、腐敗の温床に
だが、中国の食料備蓄は、必要以上に大量にあると見られる(正確な数字は国家機密だ)。例えばトウモロコシの備蓄は、7カ月分の消費をまかなえるだけの量があると見積もられている。通常、安全と見なされる量は3カ月分ほどだ。
中国国家糧食局の任正暁局長は、この膨大な備蓄量を「喜ばしい負担」と形容したが、そうした見方を崩したのが、制度の腐敗を暴いた4月の国営テレビ局の報道だ。
その報道によれば、中国北東部の役人が、品質の劣る穀物を低価格で購入していながら、それよりも高い公定価格で良質の穀物を買い取ったと報告し、差額を懐に入れて、質の悪い農産物を備蓄倉庫に詰めこんでいた。こうした不正行為は、ありふれたことと考えられている。
中国の食料戦略にとってコメや小麦ほど重要ではない砂糖の生産でさえ、国の介入により機能不全に陥っているのは一目瞭然だ。中国政府は、砂糖の年間消費量の85%を国内生産でまかなうことを求めている。だが、中国のサトウキビ農家は生産効率が悪く、その収穫高は、世界最大の生産国であるブラジルの農家の半分にも満たない。
中国産の砂糖のコストは、世界的な砂糖のコストの2倍を超える。輸送コストと最大50%の関税を考慮しても、外国産の砂糖を買う方が安い。
だからこそ、中国政府が輸入承認を遅らせ、国内市場に外国産の砂糖が大量に流れ込むのを防いでいるというわけだ。
一部の政府高官は、食料自給目標をもっと柔軟に設定する必要性を認識しているようだ。李克強首相は昨年、中国の目標は食用穀物の「絶対的な安全保障」を確保することにあると発言した。
その言葉に曖昧さを感じた者もいる。その後、国内での生産量を増やすのではなく、国際市場での購入量を増やすことで食料の安全保障を確保できるのではないかということが公に議論されるようになった。
■ルーツにこだわる中国共産党
だが、中国共産党は、農村部で生まれたというルーツを誇りにしている。農村部で不安をかきたてるのは望むところではない。そのため、国内の生産者の脅威になると感じれば、輸入を阻害し続ける。
崇左の農家が証明しているように、中国政府は相も変わらず、政府の支援がなければ採算の合わない畑で農民を働かせ続けようとするばかりだ。
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