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4月30日の金融政策決定会合後に記者会見へ臨んだ黒田東彦・日銀総裁。大方の予想通り、金融政策は現状維持で追加緩和の発表はなかった Photo:REUTERS/アフロ
低所得者ほど将来に悲観的 日銀の期待を裏切る逆転現象
http://diamond.jp/articles/-/71639
2015年5月19日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] ダイヤモンド・オンライン
日本銀行は4月30日の金融政策決定会合で予想通り現状維持を選択した。もし日銀が追加の金融緩和策を決めていたら、環太平洋経済連携協定(TPP)反対派の米議員たちが「日本は輸出を有利にするためにまた円安誘導を行った」と色めき立って、せっかくの安倍晋三首相の訪米が台無しになっただろう。
株式市場や海外の市場関係者の間には、その後も根強い追加緩和期待が存在している。しかし、国内経済にとって追加緩和策は本当に望ましいのだろうか。日銀が2年前にバズーカ緩和策(量的質的緩和策)を開始して以来、所得階層によって消費者の意識の変化に大きな違いが存在している点が心配される。
2013年4月と15年3月の消費動向調査(内閣府)における「暮らし向き」を比較してみよう。「良くなる」「やや良くなる」の合計から「やや悪くなる」「悪くなる」の合計を差し引いた数値は、次のように推移した(以下、前者は13年4月、後者は15年3月)。
年収950万〜1200万円未満はマイナス12.6%→マイナス17%(4.4ポイント悪化)、550万〜750万円未満はマイナス17.5%→マイナス28.7%(11.2ポイント悪化)、300万円未満はマイナス34.5%→マイナス48.3%(13.8ポイント悪化)だ。所得が低くなるほど、危機感はこの2年で強くなっている。
同調査によると、「収入の増え方」「雇用環境」「資産価値」のいずれも、所得が低いほど楽観的な見方は少なくなっている。さらに注目すべきことに、インフレ予想の相違も一段と拡大している。
5%以上という高インフレを予想する人の比率は、13年4月時点では、年収950万〜1200万円未満は16.5%、300万円未満は20.5%だった。一方、15年3月時点では、950万〜1200万円未満は17.5%だったのに対して、300万円未満は32.2%へと跳ね上がった。300万〜400万円未満においても26.6%もの人が5%以上のインフレを予想していた。
3月の消費者物価指数の総合指数は前年同月比(消費税要因を含む)で2.3%の上昇なので、足元全体のインフレはそんなに進んでいない。しかし、低所得層ほど支出に占める食料の比率は高い。円安による食品価格の上昇を深刻な脅威と受け止めている人が多いのだと思われる。
つまり、高いインフレ予想を持っている人ほど「暮らし向き」に悲観的で、消費マインドも低調となっている。日銀が当初期待していたものと逆の構図が生じてしまっているのだ。前掲調査では、年収400万円未満の世帯は全体の6割弱を占める(特例水準の解消で年金受給額が減った高齢者もかなり含まれている)。総合スーパーの売り上げがこの1年低調な最大の原因はこれだと考えられる。
博報堂生活総合研究所が5月初めに発表した調査も、消費意欲が高まらない理由をこう指摘していた。「『物価高・値上がり・円安』を挙げる人が前月の倍に増えており(40件→83件)、この点も消費を妨げる要因になりそうです」。
年金支給額が今年は0.9%程度増えることはプラス要因だが、日銀がもし追加緩和策で一段の円安誘導を行ったら、食品価格の上昇でそれは吹き飛んでしまう。円安が進めば大手製造業の賃金が上昇したり、外国人観光客の買い物が増加したりする面は一部であるものの、消費全体にとっては悪影響の方が大きくなるだろう。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
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