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【FRBウォッチ】弱い指標、利上げ様子見迫る
JON HILSENRATH原文(英語)2015 年 5 月 18 日 15:49 JST
1-3月期の成長率は西海岸の港湾労働争議に大きく影響された(写真は米オークランド港) Ben Margot/Associated Press
最近の軟調な経済指標を受け、米経済成長に対する弱気の見通しが再浮上しており、このため、すでに低調な経済が一時的なショックに対してさえ、異常なほど影響を受けやすくなっていることが浮き彫りになっている。
この弱さ(2015年前半はほぼゼロ成長となる可能性が高い)からすると、米連邦準備制度理事会(FRB)高官らは、ゼロ金利を解除して利上げに踏み切る時期について、様子見する公算が大きいとみられる。
FRB高官らは、経済指標の多くが基調的な強さを示唆しているとみている。企業は雇用を拡大しており、所得や資産は増加している。
ただ、これ以外の各種経済指標は、相対的に弱気を示している。FRBが15日発表した4月の鉱工業生産指数(季節調整済み)は前月比0.3%低下した。米ミシガン大学が15日発表した5月の消費者信頼感指数(速報値)も低下した。米商務省が発表した4月の小売売上高や3月の貿易統計が低調だったため、アナリストらはすでに成長見通しを下方修正している。
米金融界のアナリストらは現在、4-6月期の成長見通しを引き下げており、1-3月の成長率についてはマイナスの領域へ下方修正されるとの見方が多い。JPモルガンは今年前半の成長率が0.5%にとどまるとみている。
こうした状況は、今回の景気回復が持つ決定的な性質の一つを示している。それは、経済成長が低調だと、小さくて一時的な波乱要因でもすぐに足かせとなり得るということだ。
オバマ政権の経済顧問を務め、現在はハーバード大学教授のローレンス・サマーズ氏はインタビューで、「経済は(中略)低成長の場合よりもほどほどの速度で成長しているときの方がより安定的だ」とした上で、低成長の経済は「小規模なショックでもすぐリセッション(景気後退)に陥ってしまう」と指摘する。
パフォーマンスが低調だとはいえ、足元の米経済が実際にリセッションに近いとみるエコノミストはほとんどいない。ウォール・ストリート・ジャーナルが民間エコノミスト62人を対象に実施した月次調査では、2015年にリセッションに陥る確率はわずか12%とされた。これは過去1年の予想と同水準だ。ニューヨーク連銀が米国債市場の動向に基づき算定したリセッションの確率推定でも、同様の低確率が示されている。
リセッションには通常、大規模なレイオフ(雇用削減)が伴うが、こうしたことは現在起きていない。米労働省が先週発表した週間新規失業保険申請件数(レイオフの代理変数とみられている)は、15年ぶりの低水準に近かった。雇用が拡大する中、家計の所得は増加している。インフレ調整後の税引き後所得は1-3月期、前年同期比3.8%増と大きく伸びた。
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チャート左:米GDPと非農業部門就業者数(上から過去3回の景気回復局面、現在の回復局面、今年の1-3月期)、チャート右:米GDPの推移、チャート下:リセッションの可能性(米国債利回りから推定)
アトランタ地区連銀の調査部門責任者、デービッド・アルティグ氏はインタビューで、「われわれはまず、過去1年間で直近の3四半期において、事実上予想されている3%成長に向け動いている要因に目を向けるべきだ」との見方を示し、「現在の経済指標はまだ、そうした見方を裏付けていない」と指摘した。
同氏によると、個人消費に回復が見られれば、見通しについてより確信が持てるという。同氏をはじめとする複数のFRB関係者は、所得や資産が拡大する中でも、個人消費の盛り上がりが低調なことに困惑している。ドル高で輸出が抑えられている今、成長の原動力として個人消費は特に重要だ。
FRBは年初より、2008年以来のゼロ金利を解除し、利上げを開始する計画を立てているが、労働市場にさらに改善が見られ、インフレ率(これまで約3年にわたり目標の2%を下回っている)の上昇傾向について今以上に確信が持てるまで行動を起こさない、と明言している。
このため、過去数カ月の経済指標が弱気だったことを受け、一部のFRB関係者は様子見の姿勢を示している。理由は、FRBが掲げている雇用とインフレの目標達成が危ういとの見方が浮上しているからだ。
6月の利上げはますます可能性が低くなっている。先物市場では、フェデラルファンド(FF)金利先物9月限の価格が上昇傾向にあり、トレーダーの間で9月利上げの可能性についても低下しているとの見方が台頭していることを示している。さらに、FRBは利上げを開始してからも、成長への懐疑的見方のため引き続き、将来の利上げペースを控えめなものとする可能性が高い。
当面、FRBは利上げを急いではいない。
サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は先週、ニューヨークでの講演で、「現時点で今後の政策の道筋を決めなければいけないというプレッシャーはないので、わたしは『様子見』を決めている」と述べた。
現在のように経済が低空飛行の状態だと、小さな波乱要因だけでも景気が一気に悪化する可能性がある。今回の景気回復局面の成長率は平均2.2%だが、これは、過去3回の回復局面の3.6%を大きく下回っており、政策の間違いを犯している余裕などほとんどない。
このような背景の中、米国はここ数カ月間にいくつか小さなショックに見舞われてきたが、その中にはより深刻度が高く、持続的なものもあった。商業や貿易に打撃を与えた西海岸での港湾閉鎖や北東部の豪雪は、すでに過去の話となっている。輸出を抑制する一方、輸入を押し上げ、原油安を招いているドル高は、個人消費を支えるが、国内での原油の掘削・投資に打撃を与えるとみられる。この影響は引き続き経済システムに波及し続けている。厄介なのは、この数週間でドルと原油価格が部分的に反転していることだ。
1-3月期の米国内総生産(GDP)速報値は前期比年率0.2%増だったが、大方の予想通り改定値がマイナス成長へ引き下げられた場合、この回復局面で前期より生産が縮小するのは3回目となる。1980年半ばから2000年代半ばのいわゆる「大いなる安定期(グレート・モデレーション)」の期間に見られた3回の回復局面では、前期比での縮小は見られなかった。
困惑に輪をかけるもう一つの要因は、マイナス成長となるのが必ず1-3月期であるという事実だ。このため、一部のアナリストは、天候要因や季節的雇用状況における予測可能なパターンが原因で現れる変動に対し、政府が統計上行う調整に何か問題があるのではないかとみている。
これまでのところ、確たる証拠はつかめていない。先週発表されたFRB報告によると、このような統計上の問題についての「確証」は見つかっていないが、一部の民間企業は、政府の季節調整の手法には1-3月期の成長率推計を押し下げるゆがみ要因の証拠があるとしている。
過去数十年間の着実な成長についてグレート・モデレーションという言葉を使って表現したハーバード大学のジェームズ・ストック教授によると、米経済は実際、2009年半ばにリセッションが終了して以降、不安定性が低下している。
同教授によると、現在の回復局面では、リセッション前の3回の回復局面ほどには四半期ごとの成長率のぶれが大きくない。また、年単位での成長のぶれは、過去3回に比べ今回は半分ほどだという。
ただ、経済的な混乱が拡大した場合、リスクがあるという。
同教授は「低成長の場合、3.5%や4%で成長している場合以上にこうしたショックによる影響が大きくなる」とし、「政策にとっては、これが大きな課題となる」と述べた。
低成長率もあって、政策金利がすでにゼロ付近にあるため、景気が減速してもFRBには利下げの余地がない。これは、一部のFRB関係者が利上げまで忍耐強くありたいと考える一つの理由となっている。
米住宅ローン規制緩和案、利点よりリスク大きい
OHN CARNEY
原文(英語)
2015 年 5 月 18 日 15:11 JST
米上院銀行委員会のシェルビー委員長 Jonathan Ernst/Reuters
リスクの高い住宅ローンはセーフハーバー(安全な港)につながれるべきではない。
米上院銀行委員会のシェルビー委員長が先週明らかにした包括的な規制改革法案は、「適格ローン」として法的保護の対象となる住宅ローンの範囲を緩和するというものだ。貸し手が当該ローン債権を保有し続けることが条件。投資家は銀行が何らかの規制適用除外を受けることに期待しているかもしれないが、この提案は方向を誤っている。融資余地を多少高めるのと引き換えに、はるかに大きなリスクを招く恐れがあるからだ。
2010年制定の金融規制改革法(ドッド・フランク法)は銀行に対して、住宅ローンの借り手の支払い能力の評価を義務付けることで融資審査の強化を目指した。消費者にとって安全とされる一定の基準を満たした住宅ローンは「適格ローン」として新規に分類された。貸し手は独自の基準で支払い能力を評価できるが、そうしたローンは適格ローンとは異なり、借り手が略奪的な貸し付けだと訴訟を起こしても自動的に保護されるわけではない。
適格ローンに法的保護を与える「セーフハーバー」条項の適用範囲は13年に消費者金融保護局(CFPB)が定めた。同条項が適用されるローンの融資期間は最長30年で、貸し手は借り手の財務状況の見通しを確認する必要がある。支払い能力は当初5年間の最大返済額が評価基準となる。請求できる手数料は制限され、借り手の所得に対する債務の比率は43%までと定められている。
新たな法案では、貸し手が住宅ローン債権をバランスシート上に維持するか、同債権をバランスシートに計上する第3者に売却する場合に限り、条件が緩和される。当初5年間の最大返済額を基準にした支払い能力の評価や手数料制限は廃止される。最も驚くべき点は、借り手の債務比率上限も撤廃されることだ。
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米連邦預金保険公社の保護対象銀行が保有する住宅ローン(1〜4人家族)【単位:10億ドル】
銀行がバランスシートに計上している住宅ローンに対して、追加的に法的保護を与える理由とは何だろうか。その根底には、銀行は他者にリスクを押し付けることができなければ無責任な貸し出しは行わない、という考えがある。ローン債権を束ねて住宅ローン担保証券(MBS)として売却した場合とは違って、住宅ローンに損失が発生すれば、銀行が損失を負担することになるため、ローン引き受けを自ら厳重に管理する必要がある。言い換えると、銀行は自分で作ったものを自分で食べなければならない、ということだ。
しかし、こうした想定は近年裏切られた。金融危機の発生によって明らかになったのは、銀行が自行の長期的な健全性を危険にさらしても目先の利益に目がくらんで短期的なリスクを取ることがある、ということだ。しかも、市場が楽観的な局面にある場合、銀行はリスクを過小評価することもあり得る。そのことが銀行やその投資家、経済全般に悲惨な結果をもたらす可能性もある。
ほぼ全ての巨大銀行が、サブプライムローン(信用力の低い個人向け融資)の発行機関を抱えていたことだけでなく、それらの銀行が巨額の住宅ローン残高を抱え、住宅価格が急落した際にはときに壊滅的な損失を被ったことも思い出してほしい。銀行が失敗から学んだとしても、シェルビー委員長の提案には銀行や銀行の投資家にとって別のリスクが潜んでいる。
そのリスクとは適格ローンの流動性不足である。銀行が経営難に陥っても、法的保護を失わずに適格ローンを投資家に売却することはできない。法的保護を失わずに売却できないとなれば、外部の投資家にとって適格ローンの価値は大きく下がる。
つまり、適格ローンは(おそらく多額の)損失を被らなければ売却できないということだ。こうした流動性不足は健全な住宅ローンにとっても十分厄介な問題だ。銀行に不良債権化した資産の維持を強制する規則は潜在的に有害である。銀行は不良資産の保有を続けながら健全な資産を売却せざるを得なくなるかもしれない。そんなことになれば、間違いなく悲惨な結果を招く。銀行が経営難に陥った場合はなおさらだ。
シェルビー委員長の提案が債権者や投資家の利害とどれほど相いれないものであるかは、住宅ローンが売却されても法的保護が維持される唯一のケースによって明確に示されている。それは銀行が破綻して、当局が処理に乗り出すケースだ。この場合、破綻した銀行が保有する適格ローンの価値は保たれ、処理コストは軽減される。
しかし、債権者と投資家にとってはそれでは遅すぎる。そう考えると、そもそも流動性の低い新たな種類のローンの引き受けを奨励しないほうが銀行のためである。
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