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地獄の派遣社員、ますます搾取 法改正で低賃金&使い捨て加速、雇用不安定に
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150518-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 5月18日(月)6時2分配信
「まさか私が雇い止め(更新拒絶)に遭うとは……」と嘆くのは、派遣社員のBさん(40代男性)。Bさんは某大手メーカーのエンジニアとして働き始めて3年目になるが、今後、派遣契約が更新されないことが通知されたのだ。
「最近、私が担当している業務をサポートするという名目で、若い派遣社員が一緒に仕事をするようになっていましたが、これは私に代わる若い派遣社員への、事実上の引き継ぎだったのでしょう」(Bさん)
Bさんの業務は専門性が高く、他社に移るというわけにもいかない。何より、現在の会社でいずれは正社員に採用されるつもりだっただけに、衝撃は大きいのだ。会社側にしてみれば、専門性が高い業種でも、できるだけ安い人件費で採用したい。常に若い派遣社員で仕事を補いたい、ということだろう。
いつまでも若い派遣社員で回し続ける――そのように、企業にとって都合のいい制度が採用されようとしている。それが労働者派遣法の改正だ。派遣労働は現在、派遣先企業が派遣労働者を受け入れる期間について、通訳や秘書、事務機器操作など26の「専門業務」は無期限、それ以外の「一般業務」は同じ職場で最長3年が期限となっている。
今回の改正案は専門業務と一般業務の区分を撤廃し、派遣労働者は3年後に「別の職場に移ることが認められれば」同じ派遣先企業で「無期限に」派遣社員として働くことができる。
労働者派遣法の改正案は、2014年の通常国会と臨時国会に提出されたものの、いずれも廃案となっており、厚生労働省の担当課長は今年1月末、派遣業界団体の新年会で派遣労働者を「これまで使い捨てというモノ扱いだった。ようやく人間扱いする法律になってきた」と発言したことが問題視された。塩崎恭久厚生労働大臣は「派遣で働く人たちの立場を守りながらステップアップしていく改正案だ。今国会で通してほしい」と語っている。
しかし、「派遣で働く人たちの立場を守りながらステップアップしていく」とはいうものの、現実的には派遣社員は3年を契機に雇い止めになり、新しい派遣社員へ入れ替えられるのだ。つまり、これまでの26の専門業務も含めたすべての業務で、3年ごとに新しい派遣社員に替えることが可能になるのだ。
5月7日付当サイト記事『嘘だらけの「正社員への登用試験」が不幸な人を量産!合格しても正社員になれず、低い合格率…』において、高いスキルのある契約社員でさえも、勤続年数の上限である「5年」を前に雇い止めに遭ってしまう現実を紹介したが、より企業に軽く見られがちな派遣社員では、なおさら雇い止めされかねないのだ。
●特定労働者派遣事業廃止でパソナが儲かる?
さらに今回の改正案で深刻なのは、「特定労働者派遣事業」が廃止され、「一般労働者派遣事業」に一本化されることだ。これまでは、IT業界や製造業の技術者派遣では特定労働者派遣事業制度が採用されてきた。この制度は、派遣社員は派遣元会社(所属会社)に常時雇用(社保完)されている関係になり、安定した雇用関係のうえで、高いスキルを培うことができる。
なお、一般労働者派遣事業では、派遣社員は派遣会社にスタッフ登録し、派遣先が見つかった場合にだけ雇用契約を結んで就労する関係にすぎないため、派遣会社のコスト負担は極めて低い。逆に労働者は不安定な雇用関係のリスクにさらされているのだ。
特定労働者派遣事業制度では、就労関係の違いや高いスキルもあるために、派遣先会社が負担する単価が高くなる。26の専門業務を一般業務と同等の扱いにすることで、派遣先会社が高いスキルのある派遣社員も安いコストで使えるようにする狙いだ。
特定労働者派遣事業制度の廃止は、一般労働者派遣事業の派遣会社にとってもメリットが大きい。特定労働者派遣事業は届け出制だが一般労働者派遣事業は許可制で、資本要件などハードルが高い。現在の特定労働者派遣事業を営む中小派遣会社の多くは、一般労働者派遣事業に移行できず、倒産の危機に直面するだろう。こうした中小派遣会社が抱えるスキルの高い派遣社員は数万人いるといわれているが、彼らが市場に放出され、一般労働者派遣事業の派遣会社は囲い込むことができるようになる。
なお、一般労働者派遣事業の派遣会社の代表的な会社がパソナだ。パソナといえば、カリスマ経営者・南部靖之社長が創業した人材派遣業界の大手だ。南部社長は政界にも太いパイプを持ち、竹中平蔵元総務相を取締役会長に据えている。昨年5月に男性デュオ・CHAGE and ASKAのASKA(本名:宮崎重明)が覚せい剤取締法違反で逮捕・起訴された事件でも、南部社長の名前が報じられた。ASKAと一緒に逮捕された愛人の栩内香澄美被告(第1審で懲役2年執行猶予3年の有罪判決、現在控訴中)が南部社長の秘書で、ASKA容疑者と知り合ったのが同社の“VIP接待の館”と呼ばれる「仁風林」であり、そこでのパーティには政治家や大物官僚などが出席していたことも報道された。
そのように羽振りのよい派遣会社だが、労働者派遣法の改正で、今後ますます派遣社員からお金をかすめ取ることができるようになるのだろうか。
小石川シンイチ
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