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米利上げに漂う「風と共に去りぬ」の天気図[日経新聞]
編集委員 滝田洋一
2015/5/17 5:30
米国のゼロ金利解除をめぐって、市場関係者が固唾をのんで見守る指標がある。12ある米地区連銀のひとつ、アトランタ連銀によるリアルタイムの国内総生産 (GDP)予測である。1〜3月期に続き、4〜6月期も低空飛行が見込まれるというのだ。
同連銀による4〜6月期の実質成長率の予測は、4月の米小売売上高が発表された今月13日時点で前期比年率0.7%。4月30日に0.9%との予測を発表して以来、主要経済指標がでるたびに見直しているが、いずれも1%を下回っている。しかも弱含みだ。
雨雲のレーダー観測などから、天気の変化を刻々と告げる「ナウキャスト(直近天気予測)」というのがある。それにちなんで「GDPNow(ナウキャスト)」という。
2011年から公表されている。にわかに注目を集めたのは、1〜3月期の米GDPの速報値発表(4月29日)以来。成長率は前年同期比0.2%増と、まさかの低水準だった。寒波の影響など大慌ての後講釈が繰り広げられた。ところが「GDPNow」は3月半ばから0%台前半の予測を出し始め、4月24日の時点では0.1%との事前予測を示していた。
度肝を抜かれた市場参加者の目は、いきおいアトランタ連銀に集まった。いま4〜6月期が話題となるなか、同連銀はまたしても民間エコノミストが思ってもみない低い予測値を示した。
両者の予測値はグラフのごとし。民間エコノミストの大勢を示す「米ブルーチップ予測」は3%近い。対する「GDPNow」は1%をも下回っている。民間側には「1〜3月期の予想のはずれは寒波による異常値」と思いたい心理が働いているのかもしれない。
対する「GDPNow」は、GDPを構成する経済指標を機械的にはじいている。重視している指標は、ISM製造業指数、貿易収支、小売売上高、新規住宅建設、耐久財生産、個人所得と支出など。雇用者数や賃金、失業保険申請件数など、雇用統計はGDPの構成要素ではないので除いている。
アトランタ連銀の予測に、誰よりも当惑しているのはワシントンの連邦準備理事会(FRB)本部だろう。というのも、イエレン議長の議会証言に際しまとめた2月時点の経済見通しでは、今年の実質成長率を2.6〜3.0%(中央予測)としているからだ。3月の米連邦公開市場委員会 (FOMC)に際しての成長率予測も、下方修正されたとはいえ2.3〜2.7%。
実際の成長率はといえば、1〜3月期は貿易赤字の拡大でマイナスに改定されそうな雰囲気である。4〜6月期も1%に満たないとなると、15年上期をならせばほぼゼロ成長となる。
年2.3〜2.7%成長を達成するには、下期に5%くらいの成長を見込む必要がある。いかにも浮世離れしているから、成長見通しの下方修正が必要となろう。
FRBの使命は物価の安定と雇用の最大化であり、GDPは直接関係ない。とはいえ、成長下振れのもとでゼロ金利の解除に踏み切るのは、難儀な仕事である。
アトランタが舞台の名作にちなんで、利上げが「風と共に去りぬ」になりかねない。そうはやす向きが出てくるかもしれない。ゼロ金利解除を目指すイエレン議長の腕前が試されるところである。
翻って日本。20日に1〜3月期のGDPが発表される。思ったほど実質成長率が伸びない、いや名目でみると成長率はかなり高い――といった議論がかまびすしい。22日には日銀の黒田東彦総裁が、金融政策決定会合 後の記者会見して所見を示す。
それにしても、日本のGDP統計は精度の低さでは定評がある。しかも1四半期前の数字を議論するのは、バックミラーを見ながら運転するようなもの。米景気が変調を来しているかどうかの分析に、労力を割くべき時のような気がする。
http://www.nikkei.com/markets/column/globaloutlook.aspx?g=DGXMZO8683466015052015000000
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