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四川省はパンダの故郷でもある〔AFPBB News〕
日本企業が知らぬ間に中国内陸部巨大市場が発展中 進むインフラ整備に欧米企業は続々進出
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43802
2015.5.18 JBpress
四川省という地名を聞いて、一般的な日本人がイメージするのは、麻婆豆腐に代表される四川料理とパンダではないだろうか。歴史好きの人であれば、四川省の省都である成都市が三国志の劉備玄徳と諸葛孔明ゆかりの地であることも知っているかもしれない。
四川省には産業のイメージは薄く、歴史や文化、そして豊かな自然に恵まれた土地であるというイメージが強い。
事実、四川省は古来豊かな水、広大な農耕地、および温暖で安定した気候に恵まれ、農業が発展した豊かな地域だった。四川料理が安くておいしい理由もそこにある。
その自然環境のおかげであくせく働かなくても生活が安定しているため、成都に代表される四川省の人々は心に余裕があり、全体としてのんびりした雰囲気であると言われることが多い。
このゆったりした環境や気質は日本人にも親しみやすいため、日本人ビジネスマンは同じ西部地域の中でも重慶より成都の方を好む傾向がある。
■四川省の省都=成都は西部地域の中核産業都市
そんなのどかなイメージを抱きながら成都を訪問すれば、目覚ましい経済発展を謳歌する巨大な産業都市であることに驚くはずだ。中心部の市街地には北京や天津といった中国を代表する主要都市と比べても見劣りしない高層オフィスビル群や高級ショッピングセンターが立ち並ぶ。
成都市およびその近隣都市の周辺には広大な経済開発区が広がっており、トヨタ自動車、フォルクスワーゲン、プジョー・シトロエン、現代自動車などの自動車メーカーに加え、インテル、テキサス・インスツルメンツ、ユニリーバといった世界トップクラスの企業が続々と進出している。
成都市の戸籍人口は1187万人。これに対して、戸籍はないが、成都市に住む流動人口を含めた常住人口は1435万人と、外部から流入する人口がかなりの比率に達している。
通常、地方都市では沿海部などの主要都市に出稼ぎに行く人が多いため、常住人口は戸籍人口より少ない。しかし、成都は逆だ。成都に集積する様々な産業が外部からの労働力を吸収しているためである。
成都は重慶、西安と共に中国の西部地域(四川省、重慶市、陝西省、雲南省など12省市自治区を含む)をリードする中核産業都市である。とくに成都と重慶は距離的にも近く、四川省(8100万人)と重慶市(3000万人)の人口を合計すれば、約1億1000万人と日本の人口にほぼ匹敵する人口集積地域である。
■遅かった高速鉄道の整備
今年の10月には成都−重慶間に高速鉄道が開通し、現在2時間かかっている移動時間が半分の1時間に短縮される。両都市の人口規模からみれば、東京と大阪が1時間の距離でつながるようなイメージだ。
西部地域は東部沿海部に比べて発展の時期が遅れているため、今も2ケタ近い成長率が続いている(2014年名目成長率は8.9%)。この経済成長率を考え合わせると、東海道新幹線が完成して大きな経済誘発効果を発揮した当時の活力あふれる日本経済の状況に似ている。
今後さらに、成都−西安、成都−昆明といった西部地域の中核都市を結ぶ高速鉄道や中核都市周辺の鉄道網の建設が予定されており、これらが大きな経済誘発効果をもたらすことが期待されている。
このようなインフラ整備はもちろん地元で歓迎されている。しかし、四川省・重慶市の地域経済専門家によれば、着工開始が10年遅かったと不満を漏らしている。
中国全土を見回しても、重慶と成都のような巨大都市が近い距離に位置しているのは、ほかに北京と天津、および広州と深センの2か所しかない。
これらは、「京津冀(北京、天津、河北省)」都市群および珠江デルタの中核を形成している。これらの2地域に上海周辺の蘇州、無錫、南京、杭州、寧波などを含む長江デルタを加えた3地域が沿海部の3大産業集積地である。
北京、上海、広州を中核とするこれら沿海部の3地域では2008年以降、高速鉄道が次々に開通し、2011年央までに高速鉄道網がほぼ完成した。
それに比べると西部地域で高速鉄道建設を中心とするインフラ整備が進められた時期は遅かった。もし中央政府が沿海部と同時並行的に西部地域のインフラ整備も進めていれば、今頃西部地域はもっと発展していたはずだというのが地域経済専門家の見方である。
■日本の関心は低いが欧州諸国は注目
それでも最近、ようやくインフラ整備が着々と軌道に乗り始め、産業基盤整備が進んできている。その経済効果として、ここ数年で前述の世界トップクラスの外資企業の進出が見られるようになった。
しかし、日本企業の動きは鈍い。
成都にはすでにトヨタ、コベルコ建機、三菱東京UFJ(中国)、ユニクロ、無印良品、伊勢丹、セブンイレブン、イトーヨーカ堂など日本を代表する企業もある程度は進出済みである。しかし、ここへきて進出が加速する欧米企業に比べて、日本企業の最近の新規進出はほとんどない。
ちょうど西部地域のインフラ整備が進み、地域の所得水準が上昇し、市場としての魅力が高まり始めた時期に日中関係が悪化し、日本企業の対中投資姿勢が慎重化したことが大きく影響している。
こうした日本企業の消極的姿勢について、ジェトロや金融機関では、日中関係悪化を背景に日本企業の本社幹部層が中国を訪問する回数が減少し、内陸部市場の発展ぶりを理解していないため、社内でビジネス拡大の提案を持ち出しても相手にされないことが主な原因になっていると見ている。
この状況を打開するには、まず本社経営層が現地に足を運び、中国内陸部発展の現状を理解することが出発点である。
■四川省に絡む3つの国家プロジェクト
現在、四川省の経済発展を後押しする重要な国家プロジェクトは3つある。
第1に、海と陸のシルクロード構想の下で欧州との連携を強く意識した「シルクロード経済ベルト」、第2に、西部地域全体の経済発展を目指す「西部大開発」、そして、第3に、長江流域の産業連携を推進する「長江経済ベルト」である。
以上の3つの国家プロジェクトの推進力を活用しつつ、四川省としては、今後、新疆ウィグル自治区経由で欧州につながるルート、雲南省経由でタイにつながるルートの2つのルートを通じて、外国市場との連携強化を図ろうとしている。
また、域内では、成都−重慶間の交通網の整備を進め、両都市を1時間で直結する高速鉄道に加えて、周辺都市を経由して両都市を結ぶ鉄道網や高速道路網を建設し、成都−重慶を中軸に、周辺の3〜4級都市との連携を強化し、面展開に基づく地域経済活性化を目指している。
こうした西部地域の経済発展に対して欧州諸国の関心は高まっており、欧州諸国からの直行便の開設、欧州に直結する鉄道インフラ等の整備が進んでいる。
一方、日本企業の関心は依然低い。ただし、昨年11月および本年4月の日中首脳会談の実現を機に、日中関係は徐々に改善の方向に向かっている。
それを背景に本年入り後、中国企業の日本企業との提携意欲、地方政府の日本企業誘致姿勢はいずれも明らかに強まってきている。
こうした日中関係改善の動きが日本企業の本社経営層の悲観的なバイアスのかかった中国観を修正し、内陸部の巨大市場におけるビジネスチャンスをつかむ日本企業が増えていくことを期待したい。
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