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孫正義が後継指名!ニケシュ・アローラ氏の実像に迫る
http://diamond.jp/articles/-/71654
2015年5月18日 週刊ダイヤモンド編集部
輝かしいIT企業も、テクノロジーや経営者、ビジネスモデルの衰退によって30年で多くが歴史に消えてしまう──。決算会見でそう論じた孫社長は、ソフトバンクを再び“脱皮”する方策を海外投資に見出している。(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義、森川 潤)
「実質的な後継者なのかというお話がありましたが、答えは“イエス”です」
5月11日、ソフトバンクの2015年3月期の通期決算の会見場でのこと。壇上に上がった孫正義社長は、これまで長きにわたって同社最大の経営リスクといわれてきた後継者問題について、あっさりと候補者を認めた。そして自身に次ぐナンバー2として、今年6月には代表取締役副社長兼COOへの就任を明らかにした。
その意中の人物とは、わずか9カ月前にソフトバンクの経営陣に加わったばかりの米グーグルの元最高幹部、ニケシュ・アローラ氏だ。インド空軍の軍人の家庭に生まれたアローラ氏は、奨学金を頼りに米国ボストンの大学を卒業し、金融、通信キャリア、インターネットと三つの分野にまたがってそのキャリアを築いてきた、たたき上げの人物として知られている。
04年、グーグルが上場したまさにその年に同社に採用されると、ビジネス分野でその頭角をめきめきと現した。そしてビジネス部門の最高責任者(Chief Business Officer)にまで上り詰めたアローラ氏を、孫社長がワイングラスを片手に口説き落とした経緯は、「週刊ダイヤモンド」の特集記事「孫正義 世界を買う」(15年1月24日号)の独占インタビューで紹介した通りだ。
「私はまだ引退するつもりはありません。当人は若いつもりなので、経営は継続してまいります」
そう付け加えた孫社長の視線の先には、もちろん分かっていますよ、という余裕のほほ笑みを見せるアローラ氏の姿があった。
■空白の10年を埋める
これまで後継者候補については一切名指しせず、「ソフトバンクアカデミア」(10年開校)で候補の目利きをすると語ってきた孫社長。ここで最有力な後継者を名指しした理由は、2人の過去10年間の注力分野を眺めると分かりやすい。
2000年代、それまで多角的なIT分野への投資や合弁事業を手掛けてきたソフトバンク経営陣は、通信インフラ事業への経営資源の集中を決断。ADSL(非対称デジタル加入者線)によるブロードバンド「ヤフーBB」を皮切りに、ついには06年に英ボーダフォンの日本法人に対する1.8兆円の巨額買収を成立させた。
折しもスマートフォンなどのモバイル産業が急激に成長しているタイミングにあって、米アップルのiPhoneを独占的に販売。それまで無敗の王者だったNTTドコモに辛酸をなめさせてきたのは周知の通りだ。
これと同時期にアローラ氏はドイツの通信大手、Tモバイルからグーグルに転職して、インターネット産業における最新のビジネスを吸収し始めていたのだ。
グーグル在籍時は、創業者ラリー・ペイジ氏のチームのメンバーとして、当時のマリッサ・メイヤー氏(現米ヤフーCEO)と肩を並べて仕事をする時期もあったといい、シリコンバレーにおける貴重な人脈を着々と広げていた。
また果敢に企業買収を進めるグーグルの経営戦略にも関わり、09年には、ストリーミング配信の米ネットフリックスの潜在力に目を付けて、経営会議で買収提案をしていたといわれている。
結果的にグーグルは子会社の米YouTubeに経営資源を集中することを選んだが、今となっては収益性の面ではネットフリックスも急伸し、当時の判断を惜しむ声は今でも残っているという。
「孫社長がインフラ事業に全力で集中していた10年間を、ぴったり埋めてくれるような存在が彼だった」(同社幹部)
さらに、ソフトバンクを取り巻く経営環境も見逃せない。
15年3月期の決算では、売上高は8兆6702億円(前年同期比約30%増)に達し、営業利益は9827億円(同9%減)だ。数字だけ見れば、国内競合のNTTドコモをはるかに上回っている。
しかし国内のモバイル事業は依然として高収益を生み出しているものの、iPhoneを大手3キャリア全てが扱うようになっており、もはや差別化の要素はあまり多く残っていないのが実情だ。
一方で、13年に買収した米携帯電話会社のスプリントは苦戦を続けており、腹心のマルセロ・クラウレCEOを昨年夏に投入したものの、今年1〜3月期でも最終赤字約270億円を計上し、大手4社の中の最下位に滑り落ちそうなポジションにいる。
現状のままでも国内収益で利益は得られるが、これまで矜持としてきた大きな成長といったものとは程遠い、安定した“大企業”に変質していく懸念がある。近年では安定を求めるエリート社員がぐっと増えたというのも事実だ。
「大企業になることは、私にとって最大の屈辱であります」
会見時に言い放った孫社長のその一言にこそ、今回の突然の後継者指名や、その裏にある危機感や焦りなどが込められているのかもしれない。
■脱iPhoneに急シフト 国内は新事業に着手
「ニケシュばかりが取り沙汰されますが、国内も2.0まっしぐらですから」。あるソフトバンクの幹部はこう強調する。
孫社長による後継者指名で、グローバルへのシフトが鮮明になったソフトバンクだが、これまで収益の柱だった国内事業も大きな変革のタイミングを迎えている。
2006年のボーダフォン日本法人の買収後は、「ソフトバンクといえばiPhone」というくらいに携帯電話会社というイメージになっていたが、国内の携帯市場が飽和する中で、そうしたイメージは過去のものとなりそうだ。
国内事業を、孫社長から全権委任されたのが宮内謙副社長だ。孫社長の右腕として長年通信部門を率いてきた宮内氏は、ソフトバンクモバイル(7月以降の社名はソフトバンク)のトップとして、抜本改革に乗り出している。
真っ先に取り組んだのが、組織改編で、1月に、ソフトバンクモバイルやソフトバンクテレコムなど4社を合併させた。
その後は、人口知能ロボット「ペッパー」の予約販売、2月に米IBMの人工知能「ワトソン」との開発提携、3月には「Tポイント」との連携。5月に入っても、ヤマダ電機への出資、さらには東京電力とのアライアンス締結と、次々と新たな手を打ち出している。
「要は、国内で、iPhoneとクラウド以外の商材を一気に開拓するということだ」(幹部)
インターネット回線と電力のセット売りをはじめ、住宅産業に新しいビジネスを求める動きも加速している Photo by Colin Anderson/gettyimages
今後の展開で、中心の一つとなるのが、家庭向けの電力だ。ヤマダ電機への出資では、スマートハウス事業などの強化が報道されたが、実は「その後の東電との提携と密接に関係している」とソフトバンク関係者は話す。
ソフトバンクと東電は、電力小売りの合弁会社を設立する方針だが、ヤマダ電機を活用して家庭の省エネビジネスに取り組むもようだ。「『家』をキーワードにビジネスを展開したい」(同関係者)。
携帯端末だけでなく、再生可能エネルギーや、ペッパー、家電販売まで、包括的な提携に広がる可能性がありそうだ。
■ロボットも国際展開へ
仏アルデバラン社に出資し、ようやく量産にこぎ着けた家庭用ロボットのpepper。海外のパートナー探しも進行中だ Photo by Naoyoshi Goto
またいよいよ今夏に供給が始まるペッパーだが、まずは日本市場へ向けて年産数万台という量産体制が整いつつあり、来年以降は中国や北米での展開も視野に入りつつある。中国・アリババや台湾・鴻海グループなど強固な関係のある企業と手を組めば、大きなビジネスに化けるとの期待もかかる。
海外では、インターネット関連のビジネス拡大に注力しつつ、先細りの国内市場では、新たな商材を売りまくる──。
新生ソフトバンクは、さらなる成長を遂げられるのか。改革は始まったばかりだ。
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