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ちょっと変だよ 日銀・黒田総裁
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43328
2015年05月17日(日) ドクターZ 週刊現代 :現代ビジネス
日本銀行が「'15年度を中心とする期間」としていた2%のインフレ率目標の達成時期を、「'16年度前半ごろ」と事実上後ろ倒しにした。
黒田東彦総裁は記者会見で、消費者物価指数対前年同月比(消費増税による見かけ上の変動を除いた分)が「当面は0%程度で推移する」とその背景を説明したが、肝心の「物価に対する消費増税の影響」についてはまったく言及をしていないのが不可解だ。
'14年4月に8%に上げられた消費増税によって消費が落ち込み、それに応じて物価が下がったのは明らかである。
実際のデータを見てみよう。
消費者物価指数総合対前年同月比は、「異次元緩和」の直前の'13年3月は▲0・9%だったが、その後は順調に上がり、'14年3月に1・6%をつけている。
消費増税が実施された同年4月には3・4%だったが、これは、消費増税による見かけ上の上昇分2%を引くと事実上1・4%。同じく翌5月は1・7%だったが、その後はどんどんと下がり、今年2月には0・2%、3月は0・3%まで落ち込んでいる。
実はこうした物価の動きに並行するように、日銀は政策決定会合の正式文書における「物価の見通し」の書き方を微妙に変化させている。
'13年4月4日の異次元緩和以降は強気で、「プラスに転じていく」、'13年8月8日からは「プラス幅を次第に拡大していく」、'14年1月22日からは「暫くの間、1%台前半で推移する」としていた。
ところが、消費増税の影響が明らかになってくると、この文言が弱気に変わってくる。
'14年秋頃にまず「当面現状程度のプラス幅で推移する」と下方修正。さらに、今年1月21日からは「エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小する」、3月17日からは「エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移する」と、短期的な理由を原油価格下落に求めるようにまでなっているのだ。
それでも黒田総裁は、みずからの口からは、物価低迷の背景には消費増税による需要落ち込みがあるとは言わない。
それは黒田総裁自身が消費増税に積極的で、消費増税前に「増税の影響は軽微である」と発言してきたのが大きい。実際は影響は軽微どころではなく、黒田総裁の見通しは大外れだったので、それを認められないわけだ。
記者会見に出ているマスコミも、消費増税に賛成した大手紙などは、いまさら消費増税の影響が大きかったとは言えない。だから、記者会見でも消費増税の話を避けて、お互いが傷をなめ合うようになっている。
消費増税の影響によってインフレ目標達成時期は後ずれするが、ようやく消費増税の影響は和らぎつつあるので、今後は需要が盛り返して、物価も上がる―そう単純に説明すればいいだけなのだが、いざ消費税のことになると黒田総裁は財務官僚そのものになる。
そもそも消費増税は政府の仕事なので、黒田総裁は余計なことには口出しせず、しっかりと金融政策に専念してもらいたい。黒田総裁が職務に専念しないと、日銀の信認が揺らいでしまい、金融政策の効果も弱まってしまう。これは国民にとって大きな損失だ。
『週刊現代』2015年5月23日号より
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