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中央農業総合研究センター研究員牧夏海さん(25)埼玉県出身。狭山ヶ丘高校卒。東京農工大学大学院生物生産科学専攻修了。「研究が好き。将来は畜産と農業をつなげる研究がしたい」(撮影/編集部・内堀康一)
「人はガソリンで動かない」リケジョの背中押した一言〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150515-00000011-sasahi-bus_all
AERA 2015年5月18日号より抜粋
リケジョの視点で、伝統的な農業の世界にイノベーションを起こそうとしている女性たちがいる。武器は理系の専門知識に加え、コミュニケーション力や熱意だ。
茨城県つくば市にある中央農業総合研究センターの研究員、牧夏海(25)もそんなひとり。
「ちょうど穂が出て、野毛(のげ)がシュシュッと出たところ。風になびくと、銀色の波が立つんです。この時期の大麦って、本当にきれい」
自ら管理する50メートルプールほどの大きさの畑で育った大麦にほおずりする。
国内最大級の公的農業研究機関「農業・食品産業技術総合研究機構」の中心的な研究施設に入所して1年ちょっと。一つの畑で大麦と稲を同時に育てる技術研究に取り組む。
大麦と稲を順番に育てるこれまでのやり方では、大麦の収穫と田植えが重なる6月が「超多忙」。でも大麦畑に種のままの稲を播(ま)き、一時的に同居させる方法なら、繁忙期を分散できる。
この栽培法の可能性を熱く語る牧だが、実はこれを必要としている農家は一部だけ。「ニッチな研究なんです」と苦笑する。だが、地道な研究の積み重ねが、いつか私たちの食卓においしい作物を運ぶと信じて疑わない。休日も畑に駆けつけるほど研究熱心なのは、この仕事が天職だからだろう。
小学生のころ、父に連れられて近くの川の水質を調べてみると、面白かった。総合学習の時間には、一人で山に行ってヘビの生態を観察した。近所にどんな飼い犬がいるかを調べるために、かたっぱしからピンポンを押したこともあった。少女は、根っからの「研究者」だった。
さらに背中を押したのは、高校1年のときの担任と、農業研究者だった叔父だ。「料理人か研究者になりたい。文系か理系、どちらに行けばいいですか」と担任に相談すると、化学が専門だった担任は、「料理も化学だから理系に行ったらいい」と答えた。叔父には、将来を決める言葉を掛けられた。
「人はガソリンでは動かない。農業は命の源を生み出すんだ」
東京農工大学に進み、畜産を学んだ。「少ない餌で鶏卵の黄身を大きくする」ための研究で修士号を取り、希望通りに研究職に就いた。研究を通して物事の真実を解き明かせることが、一番の幸せだという。
「知り合いの研究者は、作物の声が聞こえるらしいんです。それは、微妙な変化に気づく観察力を持っているから。自分も早く、その域に達したい」
(文中敬称略)
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