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第2種兼業農家への保護は本当に手厚いのか? 市場からきれいに退場したくてもできない理由
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150515-00043763-biz_jbp_j-nb
JBpress 2015/5/15 11:44 有坪 民雄
だいぶ昔、サラリーマンよりも第2種兼業農家(農業所得を従とする兼業農家)の所得の方が高いと報道され、話題になったことがありました。その時に、「俺たちより所得が高いのにどうして保護されるんだ」みたいな感想を持つ人がよくおられました。
数字の上では確かに一般サラリーマンよりも収入は高いのですが、そうなるカラクリは単純です。
一般サラリーマン家庭の年収は「世帯主の給与+(伴侶の収入や親の年金収入)」です。これに対し、第2種兼業農家では「世帯主の給与+(伴侶の収入や親の年金収入)+農業収入」となります。多くなるのが当たり前なのです。
とはいえ、その農業収入を得るために休日は潰れるわ、忙しい時は家族総出で作業しなければならないわで、息つく暇もありません。奥さんがその時間パートに出たら当時なら600円の時給が得られるのに、農作業をやっていると200円程度の時給の仕事にしかならないなんてこともよくありました。決して一般サラリーマンよりも恵まれているわけではないのですが、数字だけを見れば確かにそう見えたので、話題になったのでしょう。
■知られていない保護政策の中身
農業関係の記事を書いていて、読者諸兄の感想や意見を見ていると、気になることがあります。それは、「農家は保護されている」イメージを多くの人が持っているが、現実にどんな保護政策が行われているのか知っている人は少ないということです。
専業農家の保護に異論のある人は少ないようですが、ことあるごとに俎上に載せられる第2種専業農家については「保護は不要だ」と思う人が多いようです。
そこで今回は、現実に第2種兼業農家に対してどんな保護政策が行われているのかを書いてみたいと思います。
ただし、国の政策は全国共通ですが、都道府県や市町村レベルの保護・振興政策は地域によって違いがあります。同じ作物を作っていても、ある地域では補助金が出て、他の地域では出ないとか、同じ作物でも地域によって補助金額が何倍も違うなんて話はいくらでもありますので、その点は留意して読んでいただけると幸いです。また、制度の説明ほどあくびの出る話はないので、私の連載中最高に面白くない文章になりそうですが、我慢して読み進めてください。
■減反分の農地でコメ以外の作物をつくると・・・
ここでは5反(約50アール)程度の農地を持つ第2種兼業農家を想定しましょう。一般に第2種兼業農家はコメを作ります。しかし、減反制度があるため5反全てでコメを作付けすることはできません(実際にはできますが、説明がややこしいのでここではそうさせてください)。
現在、減反率は限りなく40%に近づいているので、仮に減反率40%とすると5反のうち、コメを作付けできる面積は60%の3反分しかありません。それで、定められたとおりの減反を達成すると、戸別補償制度によって1反当たり7500円のお金が出ます。今回の例の場合では、3反分ですから2万2500円が出ます(この制度は再来年になくなる予定です)。
次に、減反によってコメを作らない2反分の農地で別の作物を作ると、別の補助金(直接支払い交付金)が出ます。たとえば、地域の特産品を作付けすると1反当たり3万円で、他の作物だと3000円とか1万円とか、補助金の額は地域や作物によってかなりの違いがあります。他にも、環境負荷の低い栽培法を採用する農家(エコファーマー)に補助金を出すなど農法に対する交付金もあります。農業に振り向けられる労働余力のある農家では、こうした作物を作り、コメより大きい作物収入と補助金を得るわけです。
■他の作物を作る余力がない第2種兼業農家の場合
しかし多くの農家は高齢化しており、他の作物を作っている体力的、時間的余裕がありません。なぜコメを作っているかというと、単位面積あたりの労働力が最も少なく済むからなのです(そんな作物でないとサラリーマンの仕事に差し支えます)。
では、野菜など他の作物を作る余力がない第2種兼業農家はどうすればいいのでしょうか。選択肢は2つあります。
1つは減反制度に加わらないで、5反全部にコメを作ることです。減反制度に参加しないと、減反制度に参加していたら得られるはずの2万2500円は得られなくなりますが、前回書いたように、今でも高く取引される酒米栽培農家では2万2500円なんて端金をもらうよりも、全部作付けした方が儲かると考えて、こちらを選択します。
第2の方法は、減反した部分に「減反したことになる」コメを作付けすることです。つまり、加工米やコメ粉用米など、減反の対象外となるコメを植え付けるのです。
加工用米の場合、「直接支払い交付金」は10アールあたり2万円となります。なお、加工用米の単価は普通のコメの半額程度です。一方、交付金が「収量に応じて5万5000円〜10万5000円」と多額になる飼料米、コメ粉用米などは、需要者との契約がないと作付できません。
なお、このほかに地域によっては別に条件を定めて1万円程度の交付金が出ることが多いようです。
■大規模農家に土地を貸したくても借りてくれない
交付金関係は様々なものがあるので相当はしょって説明しましたが、結論を書くと、5反規模の農家の場合、国や地方自治体から年にもらえる交付金は、一般に「減反を守った3反分の交付金2万2500円」と「残り2反の交付金6万円前後」で合計9万円程度になるとみられます。
これにかかる労働時間は年間200時間程度ですから、交付金を得るための“時給”は450円前後といったところでしょうか? 高額の補助金が取れる飼料米などを全面作付けすれば(100%減反になります)最大で60万円くらいになるはずですが、需要家を見つけるところがネックになるため現実的ではありません。
閑話休題。一般に、この程度の規模でコメを作ると、普通に人件費を計上すると赤字になります。それこそ時給100円とか200円の世界です。昨年は100円、50円くらいになっていたことでしょう。交付金を合算しても、農機具や資材を揃えて行う事業としては、分が悪すぎます。
普通に考えれば、そんな苦労をするくらいなら、大規模農家に水田を貸して、自分はサラリーマンに専念した方がトクです。本業のサラリーマンに専念して、大規模農家に土地を貸したいと思っている若い世代の第2種専業農家はたくさんいます。
数年くらい前なら、そうした要望を受けてくれる専業の大型農家はまだいました。しかし、今では、そうした農家を見つけるのはかなり困難になってると見られます。
そうなる理由の1つは、他ならぬ大規模農家自体が高齢化していて、これ以上規模を広げる体力的余裕がないことが挙げられます。
もう1つは、大規模農家が「第2種兼業農家の土地を借りて作っても、効率が落ちて儲からない」と判断して借りてくれないことです。大規模農家は、効率の良い生産ができる、コメが作りやすい土壌の、しかも広い面積の水田しか借りてくれません。
大規模農家には、条件の悪い水田を借りている余裕はないのです。どうしても借りてほしければ“賃料”を要求されます。借り手が貸し手に払うのではありません、アパートの家主が借り手に「ぜひ借りてください」と家賃を払う・・・そんな通常の経済原則ではあり得ない契約が農業界ではすでに現実になっています。
そうなると、条件が悪い水田を持つ第2種兼業農家は、市場からきれいに退場しようにも、できません。“汚い退場”ならできます。耕作を放棄するのです。
生産性が落ちても儲かる米価の水準でなければ、専業農家は条件の悪い水田を借りてくれません。昨年の米価の下落は、条件の良い水田の“水準”をさらに引き上げてしまいした。
安倍首相は、第2次内閣就任後の2013年8月、地元である山口県長門市油谷地区の水田を視察しました。「棚田百選」に選ばれている美しい棚田です。聞くところによると、安倍首相は、地元の棚田の美しい光景が今の自分を形作ったとおっしゃっているとか。
TPPも含めて安倍首相の次の一手が何なのか、気になるところです。
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