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農協をつぶすだけでいいのか? 改革はオランダに学べ 最期まで畑で」と願い、逝った人
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投稿者 rei 日時 2015 年 5 月 15 日 13:03:51: tW6yLih8JvEfw
 


農協をつぶすだけでいいのか? 改革はオランダに学べ

2015年5月15日(金)  渡辺 誠

直接取引とも違う「マーケット・メーカー」の貢献

 日本の成長戦略の柱である農業改革・農協改革に関連して、オランダの農業が最近、脚光を浴びている。

 オランダは国土面積も人口も日本の約1割程度というヨーロッパの小国である。だが、農産物輸出額が680億ドルと米国に次いで世界第2位の規模で、日本の約30倍もある。これは、オランダが国家戦略として掲げてきた「選択と集中」によるところが大きい。

 オランダは、単位収穫高の低い穀物・飼料などを避け、利幅の高いトマト、パプリカ、花など施設園芸やチーズなどの加工品に特化してきた。穀物自給率は16パーセントと低い(日本は28パーセント)が、付加価値ベースでみると世界最高水準の農業輸出大国で、250億ドルの貿易黒字(日本は440億ドルの赤字)を達成している。

生産者と消費者を結ぶ「仲介」で生産性高める

 こうした国際競争力のある農業を目指し「オランダの成功体験から学ぼう」という気運が高まっているという。確かにウエストラント市の施設園芸に代表される、ハイテク環境制御システムを駆使したIT(情報技術)は注目に値する。

 しかし意外なことに、こうした技術革新を引き出し、アグリビジネスを軌道に乗せるうえで、生産者と消費者を結ぶ取引仲介の組織を革新したことが大きく寄与してきたことは、あまり知られていない。

 一例をあげよう。イタリアは、恵まれた気候を利用した多種高品質の農産物が豊富な国であるが、最近オランダ産トマトをたくさん輸入している。これは、露地栽培の収穫時期が春から初夏、秋に集中し、冬の供給が手薄になるためだ。

 このような固有のニーズをフォローする取引が成立するには、年間を通して安定した品質の野菜を生み出すことのできる温室栽培技術が不可欠である。しかしそれ以上に、そもそもそうした新しいビジネス・チャンスを探り当てる取引仲介業者が活躍する場を与えられていることが、重要なのである。

 イタリアはトマトの本場であるがゆえに、途切れることのない生食需要に「ニッチ」が生じているのではないか。そうした発想をビジネスに生かせたからこそ、農産物の生産性を高めることにもつながったのだ。

 本稿で紹介するように、需要と供給をつなぐ取引仲介が生産性に影響するメカニズムの解明は、実は、経済学における新しい仲介理論のホットな話題だ。

経済発展の初期に機能する「ミドルマン形態」

 経済学的にみると、取引仲介はその形態によって2つに大別できる。1つは、伝統的な小売業者のように自ら売り買いする「ミドルマン」形態、もう1つは、近年のオンライン・ショップなどのように、自ら売買はせず、市場という場を提供する「マーケット・メーカー」形態である。オークション・サイトeBayや(欧米で最近成長している)タクシー会社Uber、サブレット・サイトAirbnbはその典型である。

 Amazonは設立当初、書籍の売り買いを行うミドルマンであったが、ある時点でプラットフォームを開設し、近年ハイブリッド・モードに成長している。日本の楽天や中国のJD.comも同様の経路をたどっている。実は仲介組織の多くが、大なり小なりどちらも含んだハイブリッドである。

 もちろん、マーケット・メーカーはオンライン・ショップに限らない。不動産業者や中古自動車のディーラーは、顧客や物件を紹介し手数料を課す一方、自らも在庫を保有する。証券市場におけるブローカーやディーラーも同様に、手数料に基づいた仲介だけでなく、自らのアカウントで取引をすることもある。百貨店は、自ら取り扱う商品以外に、フロアーの一部を第三者のメーカーにレンタル提供することによって、ハイブリッド型にもなる。

 あらゆる取引において、望ましい仲介モードは経済の発展段階、および、競争環境によって違う。伝統的な農業協同組合は、ミドルマン形態の比重が限りなく大きい組織だ。しかも農具や肥料、資金などの貸し付け、生産方法や生産調整の助言をはじめ、生産物を一括買い付けて流通から販売までを一手に引き受ける。

 この形態は、生産者のスタートアップを支援し、生産に伴うリスクを引き受けるため、特に小規模な生産主体に対して、また生産技術や資産所得が十分に蓄積されていない経済発展の初期段階で経済合理性をもつ。

 それに加え、生産物の流通・販売が集中するため、余剰を蓄積しやすく、外部の経済環境が競争でないとき、システムが安定的に維持されやすい。経済発展の初期にはこの形が望ましい。農業においては歴史的にも、従来のミドルマン型の農協組織は、日本だけでなく、ヨーロッパの多くの国でも採用されてきた。

経済の成熟段階で必要な「マーケット・メーカー」形態

 ところが、富の蓄積が進み経済発展が成熟段階に入ると、安定は停滞を生む。マーケット・メーカー形態の取引仲介と比べると、ミドルマン形態では、イノベーションの誘因を与えることが難しいからだ。

 これは、仲介者が自ら売り買いをし、自ら価格設定を行うため、権限と便益が仲介組織に集中し過ぎてしまい、イノベーションの担い手に十分なリターンが保証されにくいためである。農業に限らず、経済全体において近年マーケット・メーカー形態の取引仲介の比重が急速に増えているのは、そのためだといえる。

 農業でいうイノベーションとは、品種改良などという直接的な農業技術だけではなく、エネルギー節約型の生産技術や新しい販路開拓、革新的な流通・マーケティング技術の開発なども含まれる。よって外部の経済環境が競争的になり、生産物や生産工程のイノベーションが重要になると、望ましい取引仲介が、伝統的な農協のような「ミドルマン形態」から乖離していくことになる。

 リターンを最大にするという視点に限って言えば、仲介組織を経ることなく、直営農法で直接契約に特化する方法があるかもしれない。個々の需要に対応すべく生産・流通をデザインし、最終販売に至るまで自らの監督権限で行うため、取引がうまく成立すれば、投資リターンは大きい。

 しかし、小口の需要を安定した販路としてまとめて確保していくには、大きな取引コストと不確実性がある。そのため、確実な販路をつかんでいたり、技術的な優位性・汎用性によほどの確信があったりしない限り、イノベーションをおこすほど大掛かりな投資誘引は難しく、生産規模に限界があるのが一般的である。

規制緩和による自由競争がいいとは限らない

 このように既存のシステムがうまく働かなくなると、規制緩和による自由競争が特効薬のように思われがちである。しかし、新技術の研究開発や新しい知識の創造については、競争はむしろマイナス要因になり得る。

 つまり、ヒト・モノ・カネをコミットする必要があるため、厳しい競争環境下で成果が収益に結び付きづらいと予想されると、農家がそうした大きな一歩を踏み出すのを躊躇してしまうのだ。

 この点は、日本の高度成長期の初期にあったような、市場競争が有効に機能したケースとは明確に区別する必要がある。当時の日本は、海外の進んだ技術をキャッチアップするのが最も重要であったため、技術そのものに関する不確実性が少なかったのだ。

「coopetition」という考え方

 取引仲介の経済・経営分野で、最近研究者の間で注目を集めているのが、?co-opetition”という考え方である。“cooperation”(協力)と“competition”(競争)の合成語であるが、その両者のいいとこ取りをしようとする総合的ビジネス戦略を指す。つまり、全体として生産物の価値を高める過程で協力しながらも、個々の利潤を生みだす段階での競争を促すのである。

 このような戦略を実行するためには、取引仲介システムの中にマーケット・メーカーの要素を入れて、生産から、流通・販売にかかわるものすべてにビジネスチャンスを確保することが大前提になる。

 そして、個々のレベルではばらばらな方向に行きがちな投資目標をある程度コーディネートし、イノベーションにかかわる持続的な協力体制をシステム全体に浸透させる。しかしその一方で、機能ごとの独立性はキープし、市場メカニズムを利用して競争的インセンティブが働く余地を常に残しておくようにするのだ。

 オランダ農業では、こうしたコンセプトに近い、マーケット・メーカー型の比重の大きな協同組合が結成されている。改革の歴史は1990年代、政府主導で農地の集約化とターゲットとする農産物の選別から始まった。

 また、96年に発足した「The Greenery」はオランダ国内最大の生産者組織で、EU域内の貿易自由化にともなう競争激化に対応したものだ。そして、青果物流通の中心が産地卸売市場(特にセリ取引)から大手小売業者へと移っていく過程で、マーケティング機能と物流機能および価格形成機能などを担うことになった。

 これら農業法人を技術面でサポートするのが、ワーゲニンゲン大学や民間研究機関の提供する基礎技術で、それは民間企業によって商品化され、導入・運用に際しては農業コンサルティング会社DLVPlant社やGreenQとよばれる民間農業試験場で技術支援を受ける。

2000年ごろ形成された「フードバレー」

 また、金融面では、農業従事者が出資・設立した地域の金融組合であるラボバンクが主となって資金提供を担い、流通面では、民間の物流企業に選別・梱包・運送を委託する。

 このように、農業法人の主体性と市場メカニズムが担保され、専門性に秀でた大学が核となり、周辺の研究機関を統合しながら、食品関連企業や政府が参画し、ビジネスの一大拠点ともいえる「フードバレー」が形成されている。こうした組織が出来上がっていったのが95年から2000年ごろまでである。

 関係機関の協働によって農業教育・普及・研究システムが促進され、継続的なイノベーションが達成される仕組みは、農業の競争力強化にとって理にかなったものであるといえる。

 なお研究者の間では、オランダでこれほどまでに農業改革がうまくいった要因として、15世紀の堤防建設以来の「ポルダー・モデル」(合意形成によって意思決定を行い協力しあう文化)が社会の隅々に、慣習的に浸透していることを挙げるものも多い。オランダの農業従事者にとっては、互いに競争相手でありながらも、農業の知識や技術を共有して、一致団結して海外市場への進出に備える、という行動がごく普通だというのだ。

 マーケット・メーカー型の取引仲介に固有のものとして、システムに参加することの便益は、それを利用する人が増えれば増えるほど増加する性質があることがよく知られている。だがそのシステム上でビジネスが成功するかどうかは、スタートアップ時の期待に大きく左右されてしまう。

 だからこそ、研究開発投資への期初アクセスを整備して、期待を行動へ変えていく必要がある。ここに公的なサポートが有効に働く余地がある。オランダでは、農家保護よりも研究開発を重視しており、農業予算の22%(日本では4.7%)が研究開発に投入されている。民間の創意工夫を最大限発揮してやるため、基礎研究など高度に専門化されて民間投資が起こりづらい部分を公的支出で下支えしている。

取引仲介の役割を理解し支える

 まとめると、学ぶべき核心は先端技術そのものではなく、技術革新を促進する取引仲介にあるといえる。スマートアグリと呼ばれる農業技術のIT化は日本でも早くから取り入れられてきた。

 しかし、輸出産業に成長するほど定着しなかった。ハイテク制御可能な大企業であるオムロンやユニクロが参入したケースでも、数年で撤退を余儀なくされた。これは、需要と供給をつなぐ取引仲介が最先端の技術とうまくかみ合っていなかったことが大きい。

 企業の成功例では、合併してJFEになる前の川崎製鉄やカゴメが有名であるが、黒字化するまでに10年近くを要した。取引仲介の仕組みを軌道に乗せるまでにはやはりどうしても時間がかかる。

 技術革新を促進する取引仲介がシステムとして定着するまでの苦しい時期については、公的支出を含めた国全体での協働で支えてみるのはどうか。オランダの例を見れば、国を挙げて、国際的競争力のある成長産業としての農業育成の下地をつくる価値は、日本にも大いにありそうである。

このコラムについて
「気鋭の論点」

経済学の最新知識を分かりやすく解説するコラムです。執筆者は、研究の一線で活躍する気鋭の若手経済学者たち。それぞれのテーマの中には一見難しい理論に見えるものもありますが、私たちの仕事や暮らしを考える上で役立つ身近なテーマもたくさんあります。意外なところに経済学が生かされていることも分かるはずです。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20150511/280920/?ST=politics


「最期まで畑で」と願い、逝った人 町田の農のおかあさん体験記(1)
2015年5月15日(金)  吉田 忠則


 農家は高齢化が進み、後継者を確保できずに前途が危うくなっている――。農業に関心のある人なら、そこまではだれでも知っている。だが、「それなら、人手が足りなくて困っている農家にみんなで手伝いに行こう」と考え、実行する人はそう多くはない。
 今回紹介するのは、東京都町田市を拠点にそれを実践しているNPO法人の「たがやす」だ。2002年に生活クラブ生協が中心になって立ち上げたこの組織は10年超のときを経て、農作業を手伝う「援農」だけではなく、農業技術を学ぶ研修施設を運営し、さらに自らの農場を持つまでに発展した。
 「たがやす」はどんな経緯で発足したのか。活動を通し、農業のどんな実態がみえてきたのか。事務局長を務める斉藤恵美子さんと、初代理事長の奥脇信久さんにインタビューした。
「ナスの収穫を手伝ってくれませんか」
「たがやす」はどうやってできたのですか。

「農家とボランティアの相性はだいたい分かる」と話す斉藤恵美子さん(町田市にあるNPO法人「たがやす」の事務所)
斉藤:「生活クラブ生協の先輩から、『農業関係の組織をつくりたいから、やってみて』って頼まれたのが、きっかけです。組合員に『農家のナスの収穫を手伝いませんか』ってチラシを配ったら、何人か実際に来てくれた。それを発展させて、組織をつくることになったんです」
奥脇:「僕はそのとき、ナスの収穫に参加したうちの1人です。そしたら、今度は『農作業をしてみたい方募集中』っていうチラシが配られた。ちょうど地元の桜美林中学と高校の校長をやめたあとで、畑を借りて農業をやったりしてました。そもそも、高校を卒業したとき、本当にやりたかったのは農業関係の仕事なんです。農作業に応募した3人はそのまま、NPO法人の理事になりました」

桜美林中学・高校で校長をしていた奥脇信久さん。農家から「なぜ校長先生がここに?」と驚かれたことも
奥脇さんたち以外の援農ボランティアの会員はどうやって集めたんですか。
斉藤:「生協の組合員を増やす活動をしていたとき、インターホンを鳴らすと出てくるのは、リタイアしたご主人ばかりでした。奥さんは仕事やサークル活動で家にいないんです。で、ご主人に加入を勧めても、『僕は何も分かりません』。男の人たちのコミュニティーが必要だと思っていましたが、援農ボランティアを募集したら、そういう定年退職した男の人たちが応募してきたんです」
奥脇:「受け入れ先の農家は常時、ボランティアを必要としていますが、僕らは毎日、農作業を手伝いに行くことは難しい年齢です。だから、もっと人数が必要だと思っていたとき、朝日新聞にこの活動の記事が出て、『やりたい』っていう電話が一気にかかってきた」
斉藤:「1日で70件」
ボランティアは新聞で、農家は口コミで
ボランティアを受け入れる農家はすぐ見つかりましたか。
斉藤:「まず生活クラブに出荷している農家のところに行きました。農家には保守的な考えの人も少なくありませんが、彼らは組合員がしょっちゅう見学に行って交流しているから、ボランティアを受け入れやすいと思ったんです。最初は4軒の農家からスタートしました」
奥脇:「ボランティアは新聞記事をみていっぱい集まりましたが、今度は4軒では農家の数が足りない。でもやっているうちに、口コミで増えていきました。『おれんとこ、ボランティアに来てもらって助かってるよ』っていう感じで」
斉藤:「最近は援農ボランティアの会員と農家の会員を合わせて、120〜130人くらいで推移してます」
ボランティアの受け入れはスムーズに進みましたか。

援農ボランティアのための研修農場
斉藤:「ボランティアの中には、会社で部下がたくさんいた人もいます。でも農家は一国一城のあるじです。若い農家から『おじさん、それ何やってんだよ』って言われて、『プライドを傷つけられた』ってこぼす人もいました。素人だから、当然、失敗もする。車で行って、農家の車庫を壊したり、トラブルは山のようにありました。私、こんなに人に頭を下げた人はいるのかっていうくらい、両方に頭を下げました」
奥脇:「肩書はもうないんだから、個人に帰ればいいんですよ。いま、援農を長くやっている人は、そういうものをそぎ落とせた人たちです。農作業は忙しいから、若くても『これやってください』なんて言い方はしませんよ。それでかちんとくるようではだめ。逆にこっちは年をとっているんだから、若い農家とどう接すべきかを考えればいいんですよ」
斉藤:「トラブルは感情的なものがほとんど。相性がとっても大事です。農家には『トラブルがあったら、自分で解決しようと思わないで』って言ってあります。解決はできないんだから、私に言ってくれればいいんです。ほかの農家となら、うまくいくこともあるから」
「初めて家族旅行に行けました」
どんな農家が応募してきましたか。
斉藤:「農家が高齢化して担い手不足だから、こういう活動が必要だと思って始めました。でも、活動を始めたころ、援農を頼んできたのは、跡取りがいる農家ばっかりでした」
奥脇:「我々の完全な思い違いでした。跡取りがいないところは、『自分たち限りで終わり。いまさら人を入れて、ややこしい人付き合いをするより、夫婦2人だけでやって終わりにしたい』と思っている人も多いんです。一方、若い後継者たちは、『週に1日くらいは休みがほしい』と思っています。援農があれば、それができるんです」
斉藤:「所帯を持ち、子どももいる若い農家から『奥脇さんが来てくれたんで、初めて家族で旅行に行けました』って感謝されました。それにしても、10年前の農家の悩みが高齢化だったんだけど、その人たち、80歳を過ぎてもまだ元気に働いている。『みなさん、いったい何歳になったら、本当に高齢なの?』って思いますね」
後継者づくりは進みましたか。
奥脇:「10年以上前、若い後継者に小学生の子どもがいて、その子が大学を卒業して農業を始めた農家もある。『人が手伝いに来てくれるってことは、農業は大切な仕事なんだ。やらなきゃ』って思ったそうなんです。そこまでの話になるとは思ってませんでした」
斉藤:「夫婦で農業をやっていて、息子はほかで働いている。ご主人が亡くなったので、援農に行っていたら、『斉藤さん、息子が継いでくれることになりました。これまでありがとう』って言ってもらえたこともあります。会員の農家から『あそこ手伝ってやってくれ』って言われるケースもよくあります」
余命で作付け、収穫物を残す
奥脇:「ご主人がガンになったので、急きょ手伝いに行ったのも、そういう例のひとつです。本人も余命はそう長くないって分かっていたけど入院しないで、『この作付けはぜんぶきちんとやって、収穫物を残す』って言って畑に出ていた。あれはすごかった。ふつうなら、入院するよ。結局、その人は亡くなってしまったけど、規模を縮小しながら息子がまだ農業を続けてます」
斉藤:「あの人はすごかった。でも、どなられましたよ。『ほかの農家から頼まれて来ました』って言ったら、『おれはそんなこと知らない』って。ずっと自分で農業をやってきて、『人様に世話になってはいけない』って思ったんでしょう。どうしようって泣きそうになって市役所に相談したら、『大丈夫ですよ。自分たちもどなられてるから』って明るく言ってもらえて、援農を続けました。この家にはいまでも息子さんを手伝うために行ってます」
奥脇:「いろんなドラマがありました」
 今回はここまで。安倍政権は「農業を成長産業にする」と宣言し、規模拡大や農協改革など様々な手を打っている。その方向は大枠では間違ってはいない。だが産業論に傾きすぎると、ともすると、農業が地域社会と切り離せない仕事だという観点が抜け落ちる。
「絶対に必要な活動のはずだ」
 斉藤さんや奥脇さんたちの活動がユニークなのは、「地域にとって農業は大切だ」「その農業が大変なことになっている」「じゃあ、手伝おう」と決め、実行したことだ。「まず市場を調べてみる」といった回り道はしなかった。
 つまり、農家から「手伝ってほしい」と頼まれたわけでもなければ、シニアの男性たちから「手伝いたい」と訴えられて始めた活動でもない。あったのは「絶対に必要な活動のはずだ」というシンプルな発想と行動力。いかにも市民運動的だと思う人もいるだろうが、10年以上も続けばもう立派な事業だ。
 今回は援農ボランティアの活動を中心に紹介した。「たがやす」の活動はこのあと、町田市から農業研修施設の運営を任されるなど、行政からも頼られる存在になっていく。そのことについては、次回、あらためてお伝えしたい。
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http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150511/280893/?ST=top 
 

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コメント
 
01. 2015年5月16日 13:40:57 : sVK0XxDTpI
農産物を本当に輸出したいなら原発など止めることだ。
どこかの資本家にいわれてこんな主張をしていることがまるわかり。

農産物も金、金、金か。


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