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日の出証券大阪本店が入るビル。大和証券と協力し、社員に「嫌がらせ」をしていたとして賠償を命じられた=大阪市中央区
「追い出し部屋」で1人勤務、飛び込み営業ノルマ1日100件 証券マンの悲哀…「退職強いる目的」大阪地裁が賠償命令
http://www.sankei.com/west/news/150514/wst1505140004-n1.html
2015.5.14 10:25 産経新聞
仕事場として案内されたのは、長机にパイプ椅子(いす)が並ぶ「追い出し部屋」だった。大和証券(東京)からグループ会社の日の出証券(大阪)に出向・転籍した男性社員(42)が、勤務先で度重なる嫌がらせを受けたとして両社に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は4月、両社に慰謝料150万円の支払いを命じた。男性は歓送迎会や部内の会議にも呼ばれず、1日100件の飛び込み営業のノルマを課されたほか、獲得した新規顧客との取引すら妨害されたという。地裁は判決で、男性を退職に追い込む動機があったとして、両社が協力して嫌がらせをしたと認定した。大手証券グループの陰湿な嫌がらせの実態とは−。
■部内連絡網に名前なし
閑散とした100平方メートルの空間に、ロの字型に長机が配置され、そこにパイプ椅子が並んでいた。机の上にあるのはパソコン1台と電話が数台。人けのない殺風景な部屋を見渡し、男性は直観した。
「ここは『追い出し部屋』に違いない」
男性は平成10年に大和証券に入社し、24年10月1日付で営業本部付課長代理として日の出証券に出向。1カ月あまりの研修を受け、11月12日付で大阪本店営業部に配属された。ところが、営業部の部屋に席は用意されず、同じフロアにある「第2営業部」の部屋に案内された。すでに第2営業部は廃止されており、空室になっていた。
追い出し部屋とは、企業がリストラ対象社員を自己都合退職に追い込むために用意する部屋を指す。社員を「隔離」することで他の社員とのコミュニケーションを遮断し、まともな仕事を与えないのが特徴だ。社員を実質的な失業状態≠ノし、精神的に追い詰めて退職を促す手法として社会問題化した。
男性の境遇も似たようなものだった。肩書こそ営業部員だが、毎朝開かれる「朝会」や月に1度の「コンプライアンス会議」への出席は認められない。部内の連絡網に名前がなく、歓送迎会や忘年会には呼ばれない。パソコンからは営業部員らが業務上の情報を保存・共有しているファイルサーバーにアクセスすることができない。
与えられた仕事は新規の顧客獲得のみ。飛び込みで1日100件の外回りを目標にするよう指示された。しかも、午後4時半までは会社に戻らない、電話営業やダイレクトメールをしてはならない−という条件付き。男性はひたすら外に出るしかなかった。
その後、男性は労働組合を通じ、「追い出しの意図がある」と会社に抗議。約4カ月後に同僚と同じ部屋に移ったが、男性の不遇はますますひどくなった。
■顧客の口座開設も拒否
営業部内に席を得ても、男性は新規顧客獲得のための外回り営業ばかりを指示され、既存顧客の担当を任されなかった。そして、大和証券から日の出証券に正式に転籍した25年4月、事件≠ヘ起きた。
外回り営業を続けていた男性はある日、日の出証券で株取引をしたいという新規の顧客を見つけた。間もなく、顧客に本店に来店するよう促し、口座開設に必要な申込書と本人確認書類を作成。顧客の「属性確認」のため、副本店長に自宅への訪問を依頼した。
副本店長は男性に、顧客は誰から紹介されたのかを質問。男性は「知人からの紹介」と答えただけで、具体的な紹介者の名前を伏せた。すると、副本店長は紹介者の属性が不明であることと、取引における手数料収入が少ないことを理由に訪問を拒否。結果的に顧客の口座開設は実現せず、男性は実績を上げる機会を奪われた。
男性は間もなく行動に出た。1人だけ別室に勤務させられるなどの度重なる嫌がらせは「退職勧奨として許される限度をはるかに超えた不法行為だ」として、大和証券と日の出証券に計200万円の慰謝料などを求める訴訟を起こした。
日の出証券側は訴訟で、第2営業部の部屋は以前から原告に限らず、新規顧客の開拓担当者が使用することになっていたとし、「顧客開拓に専念してもらうための空室の有効利用だ」と反論。既存の顧客を担当させなかったことについても「営業経験の乏しい男性に基本的な営業スキルを身につけさせるためだった」と主張した。
一方、大和証券側は「執務場所や業務内容、日常的な指揮命令は日の出証券が判断して決定したもので、嫌がらせの指示や手助けはしていない」とした。
■「退職強要目的」と認定
しかし、大阪地裁は判決で、こうした両社の主張を一刀両断した。両社が協力して退職を強いる目的で嫌がらせを行っていたと認定し、慰謝料計150万円の支払いを命じたのだ。
地裁はまず、第2営業部の部屋に男性を「隔離」したことについて、「極めて不自然で、男性に占有させることがなぜ部屋の有効活用といえるのか」と会社側の言い分を疑問視した。
新規顧客の獲得業務に専従させたことについては、「顧客とのコミュニケーション能力を向上させるために有効なのは確かだが、多くは門前払いされることからすれば能力の向上には限界がある」と指摘。1日100件の訪問ノルマは「勤務時間からして1件あたり3分54秒で訪問しなければならず、合理的とは認められない」とした。
さらに、顧客の口座開設を拒否したことについては「男性に命じた飛び込みでの新規顧客開拓業務は、全く紹介のない人とも取引を行う可能性があることが前提であり、取引希望者本人に面会するまでもなく口座を開設しないという対応は厳格すぎる」と批判した。
その上で、日の出証券側から大和証券側に男性の業務に関する報告が上がっていたことなどを根拠に、日の出証券が大和証券の了解を得て嫌がらせを行っていたと認定。大和証券も共同不法行為責任を負うと判断した。「男性の勤務態度に問題があったことは否定できない」とする一方、「組織的かつ長期にわたる嫌がらせの態様は悪質だ」と両社を指弾した。
現在、営業部からコンプライアンス部営業管理課に異動して勤務を続けている男性は判決について「とりあえずほっとした。今後、グループ内からパワハラや法令違反がなくなればいいと思う」と話した。
将来的に業績回復が見込めず、余剰人員を抱える余裕がない。だが、要件もそろわないのに社員を解雇することもできない−。「追い出し部屋」が生まれる背景にはそんな企業側の論理もあるのかもしれない。ただ、いざ訴訟に発展すれば企業イメージが損なわれるリスクもある。
判決後、両社は「主張が一部認められず残念」などとコメントした。男性側の代理人弁護士は「当該企業だけでなく、グループ企業の責任も認めたところが画期的だ」と強調した。
両社は5月7日、判決を不服として控訴した。控訴審の判断が注目される。
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