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コラム:先進国で生産性低迷の「謎」を解く
2015年 05月 14日 13:40 JST
Edward Hadas
[ロンドン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 経済協力開発機構(OECD)の統計によると、先進国の生産性伸び率は低下している。多くのエコノミストや政治家がこの傾向を憂慮しており、特に英国では悩みが深い。英イングランド銀行(中央銀行)は13日公表したインフレ報告で生産性伸び率の持ち直しが必須と強調したが、何も悩む必要はない。
彼らが想定している課題は労働生産性だ。発表された数字には確かに気が滅入る。OECDの報告によると、1990年代前半には日本、ドイツ、フランス、英国、イタリアの生産性は年率2%超のペースで伸びており、米国は1.3%だった。これに対して2009年から14年までの5年間では、これら6カ国すべてで伸び率が1.1%以下となり、米国では0.9%まで下がった。
しかし生産性伸び率の低下は、技術革新ペースが減速したり、設備投資の有効性が薄れたり、ライフスタイルがほとんど向上していないことを示していない。
生産性の単純な計算方法は、大半の労働が現場や工場で行われている時に意味を持つ。機械が人力に取って代わった際の生産性向上を把握できるからだ。
しかし現在、まったく同じ製品をより多く作れるようになったから生産性が向上する、という状況はまれだ。むしろ旧来の製品を改良したり、完全に新しい製品を開発することによって生産性は向上している。こうした定性的な変化は定量的変化と本質的に異なり、計測できない。
受信状態が最悪だった2G型の携帯電話1機を製造するのに要していた労働時間で、最新型スマートフォン1機を製造できるようになった場合、労働生産性はどれほど向上したのだろうか。正確な答えはない。統計専門家は実質価値を比較しようと果敢に挑んでいるが、彼らが生み出した実質的な付加価値の計測法はまったくもって自分勝手だ。
サービス業となると、生産性の計測はさらにいい加減になる。先進国の国内総生産(GDP)において、サービス業は今や約3分の2を占める。教育や医療といった重要なサービス業では、生産性が何を意味するのかさえはっきりしない。人々が往々にして求めるのは、個人的な指導やケアなど、一般に生産性が低いとされるサービスなのだ。
あるいは、ファストフードに代わってカジュアルダイニングが台頭していることを考えてみよう。カジュアルダイニング店がいかに効率的なサービスを提供していたとしても、カウンター越しに料理を渡すファストフード店に比べればずっと多くの労働を必要とする。しかしどのような常識的な基準で見ても、数値で示される生産性が低下したからといって、経済の生産性が落ちたとは考えられない。飲食店で労働の対価をより多く支払えるようになったことは、社会が豊かさを増した証拠だろう。
経済活動に占めるサービス業の割合は増えているため、標準的な生産性指標の有用性は低下する一方だ。言い換えれば、先進国経済はポスト生産性時代に移行した。
裁量的な数字ではなく実際の経済に目を向けると、労働生産性の低下は読み取れない。労働者の教育水準は上がり、技術は進歩している。設備投資、特に政府部門のそれが減速している可能性は危惧される。しかし出鱈目な生産性計測は、高齢化が進み、既に裕福な経済においてどれほどの投資規模が適正かをめぐる議論を混乱させるだけだ。
しかしイングランド銀行の懸念を共有する者はほかにもおり、例えば、ロンドンのインペリアル・カレッジ・ビジネス・スクールは「英生産性の謎」と題する33ページの論文を発表している。
しかし謎など存在しない。発表される生産性伸び率が低下しているのは、経済に占める比率がどんどん縮小している分野の数字を集計しているからだ。
生産性をめぐる的外れな懸念は、基本的研究への投資拡大といった良い政策につながり得る。しかし目に見える形でGDPに寄与していない雇用削減を後押ししてしまう恐れもある。こうした雇用を削減すれば生産性の数字は上昇するが、失業を増やしたり過少雇用を生み出すことになる。こうした事態の方が必ずしも非効率ではない生産よりも、先進国においては明らかに深刻な問題だ。
労働市場以外にも、福祉国家のコストの高さや金融市場の機能不全、世界的な貧困など、解決すべき問題は目白押しだ。杞憂に時間とエネルギーを費やしている場合ではない。
●背景となるニュース
*イングランド銀行のインフレ報告は以下のアドレスをクリックしてご覧ください。
bit.ly/1zZG7y5
*インペリアル・カレッジの論文は以下のアドレスをクリックしてご覧ください。
bit.ly/1QJaVHJ
*世界銀行の指数は以下のアドレスをクリックしてご覧ください。
健康 bit.ly/1G6g2Pg
教育 bit.ly/1IAYrPN
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0NZ09C20150514
コラム:想定と違う欧州主要国の成長率、厄介な数字ができる理由
2015年 05月 14日 12:26 JST
Edward Hadas
[ロンドン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州各国の経済動向は、欧州全体と比較すれば把握しにくい。そして経済にとって3カ月は短い──。これが13日に発表されたユーロ圏第1・四半期域内総生産(GDP)速報値から得られた教訓だ。
ほとんどの主要国の経済は想定通りに推移していない。ドイツのGDPは前期比0.3%増でユーロ圏のけん引役と期待されていた割には弱かった。反対にフランスとイタリアのGDPはそれぞれ前期比0.6%増と0.3%増に達し、ずっと停滞したままとの評価にはそぐわない内容だった。
4月に発表された英国の第1・四半期GDPは前期比0.3%増と予想外に低調となったが、これは比較的堅調な労働市場関連の指標とは整合性がないように見受けられる。例えば13日の週間平均賃金の前年比で1.9%も伸びている。
こうした中で少なくともスペインは最近出来上がった固定観念を裏切っていない。GDPは前期比0.9%増と、改革主導で成長を遂げる欧州の期待の星という役割を見事に演じている。
主要国の大半が想定と違って見える理由のほとんどは、1四半期(3カ月)という期間の短さによって説明できる。各国のGDPは大雑把で不十分なデータに基づいて算出されており、恐らくは時代遅れになっている季節調整をかけられた上に、異例のイベントでゆがめられている。2015年が進んでいくとともに、すべての国が本来の姿に立ち戻っていく可能性が大きい。
そこで一歩引いてみれば、欧州全体の状況はわかりやすい。ユーロ圏GDPの前期比0.4%増という数字は、景気回復が本物だが足取りが遅いことを示している。
ユーロ圏の成長率は、米国よりも0.05%ポイント高かったとはいえ、ロイターがまとめたエコノミスト予想の0.5%増には届かなかった。ユーロ安と原油価格下落が起きている時期で、2009年の景気後退の大規模な雇用喪失からの回復が始まったばかりの地点にいるという面からみても、低調ぶりが明らかだ。
欧州全体は、スペインと同じような経済的問題を多く抱えているが、スペインが持つ経済の勢いを発見する段階にはまだほど遠い。ちょっとした障害も大失敗の原因となってしまう。そうした不安定さのゆえに、厄介で理解に苦しむような材料が出てくるのは第1・四半期が最後というわけではなさそうだ。
●背景となるニュース
・欧州連合(EU)統計局が13日発表した第1・四半期のユーロ圏GDP速報値は前期比0.4%増となった。ドイツ、フランス、イタリアのGDP前期比はそれぞれ0.3%増、0.6%増、0.3%増だった。
・英国立統計局が13日発表した第1・四半期労働統計によると、週間平均賃金の前年同期比はボーナスを含むベースで1.9%増、ボーナスを除くと2.2%増だった。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0NZ06220150514
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