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首脳会談では意見が一致したが、米議会はTPPに冷ややかだ (AP)
【世界を斬る】TPP不参加に傾く米議会 急速な景気回復で経済界も熱が冷める
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150513/dms1505130830004-n1.htm
2015.05.13 夕刊フジ
米議会がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を承認しない見通しが強くなっている。私がよく知る共和党首脳はこう言った。
「オバマ大統領と安倍晋三首相が米国、日本など12カ国からなるTPPを成立させようと躍起になっているが、話し合いは秘密のうちに行われている。このため、与党民主党の一部には『米国の車にかかる関税が完全にとり除かれるわけではない』と疑う声が強い。また、TPPは米国のドル体制や金融システムを弱体化させると考えて、協定に強く反対している議員も多い」
与党民主党のレイド上院院内総務は、TPPには断固反対で「議事妨害行動をとってでも阻止する」と公言。また、民主党下院の指導者で労働組合勢力を基盤としているペローシ院内総務は次のように述べた。
「TPPで得するのは、米国に輸出する国ばかりで、米国の労働者の利益にはならない。TPPは政府が貿易を管理する仕組みで、倫理的にも賛成できない」
TPPを審議する上院の最高責任者、共和党のマコーネル院内総務も「民主党の多数が賛成しないのであれば、TPPを上院にかけることはできない」と語っている。
安倍首相は4月29日、日本の首相として初めて、米議会の合同会議で演説した。この際、首相は、TPPで民主的な資本主義経済圏を確立することが太平洋地域に平和と安定をもたらすと強調したが、米議会の反応はいまひとつだった。首相演説は、私の知るかぎりでも、米議会の歴史に残るほど、拍手が少ない演説に終わった。
米議会がTPPに冷淡なもう一つの理由は、オバマ大統領の行き過ぎを懸念しているからだ。貿易協定が成立すれば、オバマ氏が政治的な思惑からTPP加盟国と勝手な取り決めを結ぶことができるようになるため、心配している。
もううひとつの理由は、全米商工会議所など米経済界のTPPに対する熱が冷めてしまったこと。オバマ大統領がTPP構想を提唱し始めたころ、米国の失業率は6%を超えていた。このため経済界には、米国の仕事を増やすためには貿易を拡大するほかないと考え、TPPを推進した。
ところが、米国の景気が急速に良くなり、失業率が5%を割り込む見通しがでてきた。このため、無理に輸出を増やさなくてもいいと考える人が増えている。
米国では、貿易による収入は経済活動の20%程度に過ぎない。こうした米経済の体質もTPP熱が低下してきた大きな理由になっている。オバマ大統領と安倍首相の努力にもかかわらず、米国がTPPに参加しない見通しが日増しに強くなっている。
■日高義樹(ひだか・よしき) 1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。59年NHKに入局し、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。退職後、ハーバード大学客員教授・同大諮問委員を経て、現在はハドソン研究所首席研究員、全米商工会議所会長顧問。
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