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2015年5月13日 週刊ダイヤモンド編集部
中華スマホ、日米欧での急拡大と経済摩擦
中興通訊(ZTE)や華為技術(ファーウェイ)など中国企業によるスマートフォンが世界でシェアを拡大させている。背後に政府の影がちらつく状況で、米国や欧州などと“経済摩擦”を起こしながらも強める攻勢は、日本にも本格的に及んできた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
Photo by Masaki Nakamura
独ベルリン市内で毎年催される、世界最大級の国際家電展示会「IFA」。その事前イベント「グローバルプレスカンファレンス2015」が4月23日から、地中海の島国マルタで開催された。
55カ国から集まった300人以上の報道陣を前に、蘭フィリップスや中国ハイアールなど家電大手が新たなサービスや自社の製品戦略を訴える中で、企業としての成長性を盛んにアピールしていたのが、中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)だ。
2014年12月期の売上高は、前年比8%増の814億元(約1兆5600億円)で、純利益は同約2倍の26億元(約498億円)に上る。
主力のスマートフォンの年間販売台数で見ると、同20%増の約4800万台に上り、アジア太平洋地域では前年比で2倍に拡大したという。
ZTEの設立は1985年。中国・深圳市を本拠地とし、世界に7万人以上の従業員を抱える大企業だ。
1〜3月期の業績も好調なことから、発表後の4月下旬の香港株式市場では、同社の株価が3年以上ぶりの高値を付けている。
中国の同業最大手、華為技術(ファーウェイ)と比べられることが多く、過去には技術特許の訴訟合戦を繰り広げたこともある両社だが、ファーウェイとの大きな違いは、米国市場で事業の足場を固め始めていることだ。
現在、AT&Tやベライゾンをはじめ、6社の通信キャリアと連携。米イーベイなどのネット通販を販路として活用しながら、プリペイド式の契約分野では、14年のシェアで2番手につけた。
日本で強める販売攻勢
15年に、スマホで世界6000万台の出荷目標を掲げるなど攻勢を強めるZTEが今、需要開拓に向けて熱い視線を向けているのが、実は日本だ。
Wi‐Fiルーターなどを手始めに日本市場に参入したのは、9年前の06年。すでに通信機器で500万台以上の出荷実績があるが、ことスマホの販売に関しては手薄な地域だった。
そうした環境下で舞い降りた好機が、他社携帯への乗り換えが容易になるSIMロック解除だ。総務省の強い意向で、5月から順次SIMロックが解除されることで商機が拡大するとみており、4月22日にはNTTレゾナントと組み、「goo」ブランドでスマホ3機種の提供を始めた。
最上位機種の「g03」は、プロセッサーに米クアルコムのオクタコアを搭載。背面のメインカメラには1300万画素で、ソニー製の画像センサーを採用している。
価格は3万2400円。ZTEが1月に発表したハイエンドスマホ「ブレードS6」が、ベースになっているという。
ブレードS6の液晶ディスプレイで、主な調達先とみられているのは、ジャパンディスプレイ(JDI)だ。
中国のスマホメーカーをめぐっては、JDIと経営再建中のシャープが液晶の受注合戦で、激しい火花を散らしている。
昨秋からシャープ苦戦が伝えられる中で、タッチパネルを内蔵した「インセル型液晶」の量産化で先行しているJDIが、ZTEからも、じわりと受注を奪い始めているようだ。
ディスプレイをはじめ、日本製の高性能部品を多く使いながら、スマホの価格を2万〜3万円と低中価格帯で売り出すのは、“中華スマホ”に共通する戦略といえ、ZTEとて例外ではない。
同社は4月24日にも、ソフトバンクからプリペイド式のスマホ「ブレードQプラス」を発売するなど、矢継ぎ早に製品を投入しており、モバイル部門でシニアディレクターを務めるラム・ワイマン氏は、「(日本市場における)期待値は大きい」と話す。
政治色が生む事業障壁
世界で順調に地歩を固めているように見えるZTEだが、あえてリスクを挙げるとすれば、その“政治色”だろう。
前身が中国政府系の通信系企業で、かつて国有企業が実質的な支配株主になっていたことからも分かる通り、ZTEは政府の影響力が強く及ぶ企業の一つだ。
12年には、米国議会から「安全保障上の問題がある」として、同じく政府系とされるファーウェイと共に、国のシステムからは除外するよう提言されるなど、事実上の“不買運動”が一時起こった経緯もある。
翌年末には、“反撃”とばかりに、ZTEなどが、「通信技術の特許使用料でクアルコムが優越的地位を乱用している」と中国当局に駆け込み、1年2カ月以上の詳細な調査を経て、今年2月、当局は1100億円超に上る制裁金をクアルコムに科した。
さらに昨年、欧州連合(EU)とは中国政府からの補助金による安価な製品の輸出をめぐる問題で和解するなど、中国メーカーの存在感が世界で急速に拡大する中で、国内産業保護の観点から、国家間の“経済摩擦”が頻発しているわけだ。
ZTEが、米プロバスケットボール協会(NBA)のチームのスポンサーになってみたり、昨夏に訪中した米国のジミー・カーター元大統領を、上海の研究開発施設に招いたりといった“外交”に注力しているのは、一連の摩擦と決して無縁ではない。
事業障壁となり得る経済摩擦という潜在リスクを、彼らなりに必死に抑えようとしているようにも見える。
ZTE、ファーウェイ、北京小米科技(シャオミ)をはじめ、20以上のメーカーが中国国内でひしめき勢いが増す中で、国家間の摩擦をはねのけ、中華スマホが世界の覇権を握る日は訪れるのか。
9月4日から9日まで開催される国際家電展示会「IFA2015」でも、多くの中華スマホの新製品が会場で発表され、展示される予定だ。
昨年は、ファーウェイがIFAの日程に合わせて、プレスイベントをベルリン市内で大々的に催し注目を集めており、展示会の主催者側としても中国企業を取り込む「重要性はより増している」と、メッセ・ベルリン社でIFAグローバル統括本部長を務めるイエンズ・ハイテッカー取締役は話す。
1538社が出展した「IFA2014」では、中国企業の割合が38%に上り、5年前に比べて10ポイント近くも拡大したという。
時に政府を後ろ盾にしながら、存在感を急速に拡大させている中国企業。
国家全体で仕掛けてくるような激しい顧客争奪戦に、日本をはじめ世界の企業はどう立ち向かっていくのだろうか。http://diamond.jp/articles/-/71236
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