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危機シャープ、ウルトラCでもやはり消滅?負債帳消しでも信用低下や株主に多大な損失か
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150513-00010007-bjournal-bus_all
Business Journal 5月13日(水)6時2分配信
5月8日、経営再建中のシャープが1218億円(2014年3月期末)の資本金を1218分の1に当たる1億円に減らす財務再建策を検討していることが明らかになった。会社法でいう増資とは反対の「減資」という手段で、資本金の99.91%の1217億円を取り崩すので「99.91%減資」になる。
12年3月期と13年3月期の2期で合わせて9000億円余りの最終赤字を出していたシャープは、連結決算ではなく単体決算の貸借対照表(バランスシート)上で、「純資産の部」の繰越利益剰余金のマイナス額、いわゆる累積損失が5250億円に積み上がった。最終黒字化した14年3月期は208億円に急減したが、5月14日に発表される15年3月期決算では約2300億円の最終赤字が見込まれているため、累積損失が再び膨らむことは確実になっている。
しかし、減資分の1217億円を使えば、それを相殺して消すことが可能になる。企業が減資を行う目的はほとんどの場合、そうやって累積損失を消し、身軽になって出直しを図ることにある。もし減資分で累積損失を消してもなお「おつり」が出た場合、それは貸借対照表上では純資産の部の「剰余金」(資本剰余金+利益剰余金)に組み込まれるが、これは一般に内部留保と呼ばれている。その使い道として考えられるのは、今期(16年3月期)決算で連続最終赤字に陥った時、この剰余金を利用して累積損失の金額を減らしたり、出さないようにすることである。今期の最終損益については1000億円超の赤字という観測が出ている。
このように減資というのは、貸借対照表の右側の純資産の部の「資本金」と「繰越利益剰余金」の項目間で金額を出し入れするだけなので、バランスシートのバランスを崩すことはない。それだけなら増資と違って発行済み株式数の増減も起きず、株主の持ち分(出資比率)も変化しない。そのため「帳簿上の処理手続き」とか「財務の操作」などと軽々しく言われることもある。
シャープは6月下旬の株主総会で承認されれば、減資を実施すると報じられている。資本金がゼロになる「100%減資」なら株式は上場廃止になるルールだが、1億円残す「99.91%減資」ならそれに抵触せず、上場を維持することができる。
その1億円を残すというのもミソで、まるで冗談のようだが、資本金が1億円であれば売上高約2兆9000億円のシャープでも税法上、「中小企業」に分類される。そのため法人税では軽減税率が適用され、外形標準課税も適用されないなど、中小企業向けに用意された税制上の優遇措置が受けられる。
●減資の後に増資をされたら、株主のデメリットが発生する
シャープにとって減資で累積損失をゼロにするメリットとは、身軽になり財務を強化しやすくなること。「債務超過の懸念」という障害が消えて公募増資がやりやすくなり、他社との資本提携の手も打ちやすくなる。将来もし、業績が回復して黒字転換や増益を果たした時には、累積損失の解消を優先しなくてよいので配当可能利益が増え、復配によって株価が上昇すれば公募増資も一層行いやすくなる。“業績が回復すれば”の話だが、株主にとってメリットになるといえなくもない。
しかし、株式を上場し、経営破たんしていない大企業が99%以上の減資を行うのはレアケースだ。いくら帳簿上の処理手続きだ、財務の操作だといっても、減資は本来、企業にとっては望ましくないこと。ましてやシャープのような世界的に有名な企業が大幅な減資を行って「資本金1億円の中小企業」になれば、企業イメージの悪化や信頼感の低下は避けられない。いくら危機から逃れるための「窮余の一策」でも、経営陣は批判されても仕方ないだろう。
それも「経営の元手の資本金は、株主からお預かりしたお金だという意識に乏しい」と道義的な責任を追及されるにとどまらず、株主にとっての不利益が発生する可能性も指摘されている。というのは、減資はたいていその後に増資がつきもので、2つ合わせて「減増資」と呼ばれているが、減資で資本金を減らすだけなら株主の1株当たりの価値は減らないものの、後で増資が行われた時には問題が発生するからである。
今回のシャープの場合、後の増資とは銀行による「デット・エクイティ・スワップ(DES)」になりそうだ。日本語では「債務の株式化」と呼ばれ、簡単にいえば利子がつく銀行の借入金を利子がつかない資本金に変え、形の上で債務を消してしまうこと。当然、株式(優先株)を発行して銀行に割り当てる第三者割当増資を行うことになる。
シャープは主力取引銀行のみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行との間で、合計約2000億円の債務を優先株に振り替えるというDESによって資本支援を受けるスキームにすでに合意している。臆測の域を出ないが、減資はその前提条件にされた可能性があり、その裏に「シャープを救え」という官邸サイドの意向があったという話まで飛び出している。
それはともかく、6月の株主総会で減資とともに優先株の発行も承認されて約2000億円のDESが実行されたら、資本金は1億円まで減っても実質上の資本金は2000億円程度上積みされる。自己資本が増えるためシャープにとってはありがたい資本増強で、この減増資をテコに財務の改善を進めて、18年3月期末に連結の自己資本比率を約10%まで引き上げる計画だという。
では、株主にとってはどうなのだろうか。
株主総会の議決権がない優先株は普通株とは分けて取り扱われ、既存株主の議決権割合は変わらない。『会社四季報』(東洋経済新報社)や『日経会社情報』(日本経済新聞社)におけるシャープのページの大株主に大手銀行が並んで銀行管理会社のような様相を見せることもない。しかし、優先株の優先とは「剰余金の配当を優先的に受け取れる」という意味なので、将来、シャープの業績が回復して黒字転換や増益を果たし、配当可能利益が増えても、復配時には既存株主を差し置いて銀行に優先的に配分されることになる。また、優先株を普通株に転換されて、既存株主の1株当たりの価値が低下する「希薄化」が起きるリスクにもさらされる。
減資と同時に「1000株を1株にする」ような株式併合が行われたら、配当や株主優待で不利益を被る場合もある。いずれにしても、既存株主にとってありがたい話ではない。
●上場を維持して減資した“先輩”はダイエー
「減資」という言葉を聞いてまず連想されるのは、10年に日本航空(JAL)が会社更生法適用を申請し経営破たんしたケースだろう。この時は100%減資で全株が無効、つまり紙くずになり、株主が全責任を負う形で上場廃止になっている。同じ100%減資は経営破たんしたスカイマークでも今年、実施される予定になっている。
減資後も上場を維持した主なケースでは、05年にダイエーが行った「99.6%減資」がある。この時は産業再生法の適用を受けて産業再生機構などから支援を受けたが、経営破たんではなかった。
経営状況が悪化して事業や資産売却を重ね、DESも含めた金融支援を受けていた当時のダイエーは、産業再生機構の再建計画のもと、10の金融機関に約4000億円の債権放棄をのませ、99.6%、1190億円の減資を行って資本金を5億円とした後、丸紅、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ、産業再生機構に対し1120億円の第三者割当増資を行った。それは優先株ではなく、再生機構の新株取得価格は時価より大幅に安く既存株主より条件が有利な「有利発行」だったが、優先株ではないので最初から希薄化が生じ、結果的に既存株主は株価の低下で損失を被った。10株を1株にする株式併合も併せて行われ、ダイエーの経営悪化に対し株主も一定の責任をとる形になった。
その結果、最大で3兆円近くまで膨らんだダイエーの連結有利子負債は07年5月末には6031億円まで縮小し、減増資のスキームで経営破たんの淵から救われて再建ができそうに見えた。産業再生機構の再建支援を離れて、丸紅とイオンがスポンサーについた。
しかし、リーマンショック後の消費低迷もあって最後は3期連続営業赤字、7期連続最終赤字と業績はボロボロで、結局、立ち直ることはできず、13年にイオンが子会社化してイオングループに入り、続いてイオンが完全子会社化して14年12月26日をもって上場廃止となった。ダイエーの法人格はまだ残されているが、戦後の流通革命の旗手だったダイエーのブランドは18年をメドに完全消滅する運命になっている。
結果論はともかく、一時的にせよダイエーは経営破たんを免れて再建の道が見えたのだから、この減増資スキームの是非や効果については意見が分かれるかもしれない。また、小売業と電機メーカーを同じ土俵に乗せて論じるのは無理があるのかもしれない。しかし、今回のシャープの一件については、どうしても10年前に似たような減増資を行い、結局うまくいかず消えてしまう「ダイエーの末路」が見え隠れする。同じ道を歩んでしまうのか、それともうまく立ち直れるのか。
5月14日にシャープは15年3月期連結決算と併せて中期経営計画も発表する。それを前にして財務の減増資の話題ばかり盛り上がっているが、自力で立ち直るのに一番いいのは、本業の業績を一刻も早く回復させ、利益を出せる体質に変えること。それを助ける環境を整備する手段として、減増資のスキームを有効に使ってほしいところだ。
寺尾淳/ジャーナリスト
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