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郵便局に掲示されていた、日本人にとっては“面白い”、英国人にとっては当たり前の「重要なお知らせ」 Photo by Izuru Kato
企業や店が客を選別する英国、クレーム対応で利益が細る日本
http://diamond.jp/articles/-/71310
2015年5月13日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] ダイヤモンド・オンライン
先日、日本放送協会(NHK)の朝の番組で「過剰クレーム」を取り上げていた。店員や駅員に対して土下座を強要したり、顔や名前をインターネットに投稿するぞと脅したりする客が増えているという問題である。客からの激しい抗議で精神的なショックを受け、職場に行くのが怖くなる人もいるという。
そういった極端なケースに限らず、客からのクレームに悩んでいる企業は近年非常に多いと思われる。これまで多くの日本企業は、客の要望や批判に極めて丁寧に接してきた。それが日本の工業製品やサービスの質を高めてきたことは事実だろう。しかし、これは日本社会にとって「諸刃の剣」であるように思われる。
「お客さまは“神様”のはずだ」という消費者の意識が行き過ぎてしまうと、企業のクレーム対応のコストが膨らみ、利益率は低下、結果として社員の賃金やボーナスは圧迫される。一方で、消費者は企業で働く人々でもあるので、日本全体で見ると、皆で首を絞め合っている構図が表れ始めている。
対照的なケースとして、英国を見てみよう。以前、ロンドンで近所の郵便局に郵便を出しに行ったら、いつもと違って順番待ちの長蛇の列ができていた。店内には「重要なお知らせ」と書かれた掲示があった(写真)。
「私どもは、最近、コンピュータシステムをアップグレードしました。その新システムを熟知しようとしているところです。われわれがその変化に慣れるまでの間、どうぞわれわれと一緒に辛抱してください」
非常に面白い掲示だったので、写真を撮って知人の英国人エコノミストに見せたところ、「え? これの何が面白いの?」と不思議な顔をされた。英国ではよくある一般的な光景であり、違和感はないという。
日本であれば、新システム稼働までの間に社員は深夜残業してでも操作を習得し、客に迷惑をかけないように準備する。「どうぞわれわれと一緒に辛抱してください」などと日本で言ったら、企業は大変なことになると説明した。するとそのエコノミストは「日本はすごいね」と感心しつつ、「そんな不寛容な社会は居心地が悪いのではないか?」と感じたようだった。
日本から英国に来た駐在員の多くは、当初はサービスのいいかげんさにいら立つ。しかし、時間とともに変わる人が多い。ある金融関係者は「サービスに対する期待値を下げればいいんですよ。そうするとお互いさまになる。こういうゆったりとした社会も悪くないという気分になる」と語っていた。
もっとも、そういった「緩さ」が英国の自動車産業が凋落する原因となった可能性もあるので評価は難しいが、バランスの問題なのだろう。
また、ロンドンの英語学校でも興味深い事例があった。レストランにクレームの手紙を書く授業だった。書いてみたところ、教師に「もっと間接的かつ上品な表現にして、この客は教養深いと店側に感じさせることが大事です」と添削された。「対応するに値しない客と見なされたら、無料お食事券はもらえません」。
店は客を選別している、という感覚が消費者サイドで共有されているのだった。
日本に帰ってから、前述の郵便局の写真を大手百貨店の幹部に見せてみた。彼は驚愕した後に、「お客さまへの対応がこれで済むなら、うちの利益は急増しますよ」と、ため息をついていた。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
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