03. 2015年5月12日 18:35:03
: nJF6kGWndY
消費税の影響への質問より、こっちのQEのCPIへの効果や出口、財政ファイナンスに関する質問の方が、どちらかと言えば厳しいだろうなhttps://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1505a.pdf (問) 2016 年度の前半に後ずれするとのことですが、今回の「量的・質的金 融緩和」はアベノミクスの第 1 の矢として鳴り物入りで始まったものです。そ うすると、アベノミクス自体も全体的に歯車が少しおかしくなってきた、後ず れしてきた、ということでもあるのでしょうか。 (答) 私は全くそのように思っていません。先程来申し上げている通り、2% の「物価安定の目標」を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に 実現するということで「量的・質的金融緩和」は始まっていますし、所期の効 果を上げていると思っています。そうしたもとで、物価の基調は改善してきて おり、さらに今後とも改善が続くとみています。ただ具体的に 2%程度に物価 上昇率が達する時期の予測について、昨夏以来の半年間で 5 割以上の原油価格 の下落――その他の商品の下落もありますが――を踏まえ、若干後ずれするだ けです。企業部門、家計部門ともに所得から消費へという好循環のメカニズム がしっかり働いてきていますし、先程来申し上げている通り、物価の基調は今 後さらに高まっていくと考えていますので、2%の「物価安定の目標」の達成 に向けた日本銀行の金融政策としては、所期の効果を上げていると思っていま す。 アベノミクス全体としては、第 2 の矢、第 3 の矢と挙げられているよ うに、財政の持続可能性をしっかりさせていくこと、あるいは成長戦略を進め ていくこと、これらはいずれも政府が努力されているところであり、一定の効 果を上げてきていると思いますが、さらなる努力が必要だということは、政府 自身も認めておられるところであります。ご質問の 2%程度に達する時期がや や後ずれしたことは、物価の基調が変わったのではなく原油価格の大幅な下落 によるものですので、第 1 の矢については何ら問題はないと思っていますし、 その意味でアベノミクス全体にマイナスの影響を与えることはないと思って います。 (問) 今回のレポートで、2%の達成時期が「2016 年度前半頃」と示されま した。従来繰り返されてきた、2 年程度を念頭に、できるだけ早く実現すると いうことと齟齬はない、許容範囲であると判断されて、追加の政策を打たれな かったと思います。そうであれば、どこまで許容できるのかという質問です。 大きな考えとして、仮に 2016 年度後半、あるいは 2017 年度前半といった後ず れは許容できるのでしょうか。 (答) 先程来申し上げている通り、2 年程度の期間を念頭に置いて、できる だけ早期に 2%の「物価安定の目標」を達成するとコミットし、「量的・質的 金融緩和」を導入し、昨年 10 月に拡大し、それを引き続き着実に実行してい ます。そうしたコミットメントや「量的・質的金融緩和」の実施を変えるつも りはないと申し上げているわけです。他方、具体的な物価の動向は、様々な要 因に影響され、それによって予測は前にいったり後ろにいったりします。その 場合に重要なこととして、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現 することが難しくなってきた、物価が 2%には達しない、あるいはなかなか達 しない、というような物価の基調の変化が出てくれば、当然、それに対応して 適切な政策の調整を躊躇なく行うということは、従来から申し上げています。 そうしたもとで、需給ギャップ、あるいは中長期的な予想物価上昇率、そして 特に足許で 2 年続きのベアを含む賃金上昇――今年になって中小企業や非正規 労働者にまで拡大してきています――をみると、物価の基調は変わっていない、 2%へ向けて着実に基調は高まっていると思われますので、追加緩和はしてい ませんし、一方で、2%の「物価安定の目標」に対するコミットメントはしっ かり維持しているということです。 (問) 後ずれの件で、重ねて恐縮ですが、今回後ずれしたことで日銀の政策 運営に対する信認に影響が及ぶことはないのでしょうか。 もう 1 点は、米国経済の下振れについてですが、これはあくまで一時 的なものでそれほど懸念すべきものではないとお考えなのでしょうか。先程も ありましたが、ドル高の影響も含めてそれほど大きくはないというご認識なの かお伺いします。 (答) 信認云々は、中央銀行が自分で言うことではなく、中央銀行の外の方 が中央銀行の政策についてどのような信認を抱かれるかということだと思い ます。先程来申し上げている通り、予想外の大きな原油価格の下落によって、 2%の物価安定目標を掲げ、それをずっと達成してきた欧米諸国でも、足許の ヘッドライン・インフレーションはマイナスになっています。そうしたもとで、 日本銀行とECBは量的緩和を拡大あるいは導入しました。一方、米国は 2% の物価安定目標の周りに中長期的な予想物価上昇率がアンカーされていると いうことで、追加的な緩和はしていません。私は、国により違いますが、それ ぞれの国でそれぞれに適切な対応をしていると考えていまして、その意味では、 日本銀行の金融政策に対する信認が揺らぐ必要はないと思っています。ただ、 中央銀行の政策に対する信認というものは、中央銀行の外の方が抱かれること ですので、私から一方的に決めつけることはいたしませんが、私どもからすれ ば、信認が低下する要因または必要性はないと思っています。 米国の経済については、第 2 四半期以降の数字をよく見る必要がある とは思います。一方で、今回のGDP成長率の低下は、明らかに実質輸出の減 少からくるものです。今後、実質輸出がどうなるかは世界経済の動向やその他 の色々な条件によると思いますが、世界経済は先日のIMFの見通しでも緩や かに回復のテンポを高めていくとの見通しですし、為替についても、ドル高は 確かに起こりましたが、ここ最近ではドルの独歩高は止まり安定的な動きをし ています。そうしたことを踏まえると、第 1 四半期は一時的な要因が重なって 実質輸出の減少を中心に成長率がやや低下したのであり、第 2 四半期以降は元 の成長経路に戻るとみています。ご指摘のようにそれ以外の要因もあるかもし れませんし、よく注視していく必要はあると思っています。ただ、基本的に色々 な統計その他をみると、米国経済が消費を中心とした内需をベースに着実な回 復を続けるという見通しに変化はないと思います。 (問) 先程、2 年程度でできるだけ早期に達成するコミットメントの重要性 を説かれていましたが、総裁のお考えとして、できるだけ早く 2 年程度で達成 するというコミットメントを持ち続けることが重要であって、2%に届くタイ ミングというのはそれほど重要でないとお考えになっているのかどうか、その 点について 1 つお伺いします。 もう 1 つは、最近の物価指標をみると、物価の基調が改善しているよ うにはみえないです。確かに賃金とか、雇用、労働市場は、タイト化していま すが、実際に物価を表す指標は改善がみられない中で、物価の基調がよくなっ ているというのは、少し苦しい面もあるのかなと感じるのですが、その点如何 でしょうか。 (答) 最初の点については、先程来申し上げている通り、2 年程度の期間を 念頭に置いて、できるだけ早期に 2%の「物価安定の目標」を達成するという コミットメントは、極めて重要であると思っています。 他方、具体的な物価の動きは、色々な要因によって影響されます。そ の影響が物価の基調を変えるようなものであれば、それは金融政策の調整が必 要になると思いますが、今の状況をみますと、昨年の「量的・質的金融緩和」 の拡大によって、懸念されたデフレマインドからの転換が遅れる惧れは一応払 拭されて、中長期的な予想物価上昇率は、概ね維持されています。そうしたも とで、需給ギャップも着実に縮小してきていますし、2015 年度、2016 年度と、 潜在成長率を相当上回る経済成長が続く見通しであり、需給ギャップがさらに 縮んで、プラスになっていくように見込まれます。先程申し上げた 2 年続きの ベースアップを含めて、賃金の上昇が続いていること等々、物価の基調は着実 に高まってきているということは言えると思います。そういう意味で、生鮮食 品を除く消費者物価の対前年同月比が足許ゼロになっており、当面その近傍で 推移するといったこと等、足許の物価が原油価格の大幅な下落等の影響を受け て、低迷していることは事実なのですが、その背後にある需給ギャップ、予想 物価上昇率、さらには賃金あるいは企業の価格設定行動等々、物価の基調を決 定する要因をみるに、引き続き改善していますし、さらに改善していくという 見込みにあるということは言えると思っています。 (問) 前回も聞いていますし、他の方々も何人も聞いていますが、あえて伺 うと、やはりCPIのコアコアが非常に弱いのは、前回、それはエネルギー価 格の下落も影響するのだというご説明をして下さったのですが、それでは説明 しきれないほど弱いのでないかと私は思うので、あえてもう一度お伺いします。
(答) コアコアが弱いのではないかというのは、確かに米国などと比べると 弱いわけですが、先程申し上げたように、エネルギー価格の下落が輸送費その 他を通じて、コアコアの指標にも影響を与えていることは事実です。同様な状 況は、実は欧州でも出ており、あちらでもエネルギー価格等を除いた指標でみ ても、やはり下がっており、それは彼らもエネルギー価格の下落の影響が交通 費その他、輸送費その他を通じてそちらに影響している面もかなりあるという ことを指摘しています。 (問) だからこそ欧州はデフレだと言われているわけで、もし欧州と同じだ と言ってしまったら、日本はデフレなのだということになってしまうのではな いでしょうか。
(答) それは全く違います。欧州の場合は、従来は物価上昇率がマイナスで なかったわけです。そうした中で、最近になって──ここ数か月ですが──、 特に、原油価格が下落して以降、マイナスに転じています。日本の場合は、2013 年まで平均を取るとマイナスということで、15 年続きのデフレにありました。 そうしたところから、プラスに転化してきていたわけですが、足許では、米国 や欧州と同じく石油価格の影響によって物価上昇率が下がってきて、足許でコ アでゼロ、コアコアではまだプラスではありますが、そういう状況になってい るということです。従って、米国、欧州、日本とそれぞれに状況は少しずつ違 いますが、それぞれにヘッドライン・インフレーションの率が下がってきて、 そしてコアというか、コアコアというか、いわゆるエネルギー価格を除くもの であっても、やはり下がってきているということには変わりはないと思います。 (問) 先程から、原油価格が下落したことを何度も強調していらっしゃいま すが、1 月の中間評価から展望レポートまで、原油価格は、ほぼ日銀の想定通 りに動いています。それにもかかわらず、2015 年度の物価、あるいはそれ以降 の物価も下振れています。この原因について、ボードメンバーの中に消費が弱 いということを指摘する声もあったと、あたかも黒田総裁ご自身はこれに納得 していないというような印象を受けました。強気な情報発信をしている黒田総 裁、中曽副総裁、岩田副総裁と、それ以外のボードメンバーの間には、物価に 対する見方に随分と乖離がある印象を受けます。つまり、総裁のすごく強気な 情報発信は、ボード全体を代表しているものではないのではないか、平均を取 ればもっと弱いという見方ではないか、との印象を受けます。まずそれがどう かということをお聞かせ下さい。
次に、一貫して強気な経済・物価見通しを示している黒田総裁ですが、 出口になると一転「時期尚早」と言われます。ただ、展望レポートをみる限り、 2016 年度、2017 年度の物価見通しが 2%前後であり、文言の中にも安定して推 移というふうに書いています。これが実現されれば、当然、見通し期間中に、 つまり 2017 年度末までには、「量的・質的金融緩和」の出口に着手している 可能性が十分あるのではないかと思います。この見通し期間に──別の言い方 をすれば、黒田総裁の任期いっぱいが表現されているわけです──強気な見通 しを示していらっしゃる黒田総裁も、そういった可能性は今の段階では何とも 言えないと、つまり、この展望レポートはあまり自信のないものであるという ことをおっしゃっているのかどうかお聞かせ下さい。 (答) いずれの点についても、全く意見を異にしています。 まず第 1 点目ですが、この展望レポートの数字をご覧になって頂くと、 ボードメンバーの方々の考え方の分布と中央値が示されていますし、それに即 した展望レポートの文章も出ています。先程ご紹介したように、9 人の委員方 のうち 3 人の方は 2%の「物価安定の目標」に達する時期について若干違った ご意見を持っておられたことは事実ですが、ボードメンバーの大半の方々の数 字の見通しといい、展望レポートの文章といい、私が申し上げていることと何 ら乖離はありません。 それから 2 番目の点は、先程も申し上げましたが、確かに私どもの見 通しとして、2%程度の物価上昇率が 2016 年度、2017 年度と 2 年に亘って続く 見通しになっていることは事実です。何度も申し上げている通り、金融政策の 決定、判断にあたっては、その時点までの物価上昇率の実績だけではなく、予 想物価上昇率の動向、それから先の経済物価の見通しがどうなっているかとい うことまで見極める必要があるわけです。これは 2%の「物価安定の目標」の 実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金 融緩和」を継続すると言っていることからも明らかです。従って、現時点でこ の見通しをもって出口の時期とか、方法を議論することは、やはり時期尚早で あると思います。いずれにしても、現在は 2%の「物価安定の目標」をできる だけ早期に実現するように最大限の努力を払っている最中であり、出口につい て云々するのは、やはり時期尚早であろうと考えています。 (問) 最近の国債に関するトピックスについて、2 点お伺いします。1 点目 は、繰り返し報道されていますが、バーゼル委員会による国債保有に関する規 制強化の議論です。この動き自体が、日本経済あるいは我が国の金融システム に与える影響、さらに、日銀が国債を大量に買うという今のオペレーションに 対する影響について、どういうふうにお考えでしょうか。 2 点目は先日、海外の格付け機関が日本国債の格付けを引き下げまし た。これに関するご所見をお聞きしたいのと、市場関係者の中には、あるいは 私は、日銀が異次元の金融緩和をしているが故に、結果として、財政規律を緩 めてしまうという弊害が生まれているのではないかと感じているのですが、如 何お考えでしょうか。
(答) まず第 1 のバーゼル委員会の件につきましては、ご案内のように金利 リスクについては、国債を含めて様々な資産、さらには負債まで含めて金融機 関の金利変動リスクについて、包括的な見直しの議論が行われている最中です。 これがどういうふうになっていくのかは、今後の議論のあり方にもよりますの で、今の時点で具体的にどうこうするということは申し上げられません。当然 のことながら、バーゼル委員会において、適切な規制について、私どもの意見 も十分に反映されるよう議論を尽くしてまいりたいと思っています。 格付けの点については、格付け会社の判断に私から何かコメントする ことは差し控えたいと思います。国債の発行者の立場から政府が何かおっしゃ る可能性があるかもしれませんが、私から何か申し上げることは差し控えたい と思います。いずれにしても、財政の規律は極めて重要であり、国全体として 財政運営に対する信認をしっかりと確保していくことは重要であると思いま す。この点、政府は、いわゆる基礎的財政収支を 2020 年度までに黒字化する という財政健全化目標の達成に向けた計画を夏までに策定するとしておられ るようです。私どもも、政府による財政健全化に向けた取り組みが着実に進ん でいくということを強く期待しています。 (問) 本日の見通しに沿うと、2016 年度に入ってからも大規模な緩和を続け る可能性が高いかと思いますが、市場では 2016 年度に入ると国債の買入れが 難しくなるのではないか、札割れが出るのではないかという懸念も高まってい ます。総裁はかねて、買入れには問題ないとおっしゃっていますが、2016 年度 以降を見渡しても国債の買入れには何ら問題ないというお考えなのか、また、 本日の政策決定会合で他の委員からその点について懸念はなかったのか、お伺 いします。
(答) 2016 年度といいますか、むしろこれからの金融政策につきましては、 今日の決定会合での決定とその公表文に示されていますし、また従来申し上げ ている通りであり、2%の「物価安定の目標」を達成し、それを安定的に持続 できるようになるまで、現在の「量的・質的金融緩和」は継続すると申し上げ ています。そうしたもとで、2016 年度にどうなるかを今から何か申し上げるの は適切でないと思いますので、それを前提に云々することも適切でないと思い ますが、国債買入れについて何か現在問題が生じているとか、あるいは今後ご 指摘のような問題が生ずるとは考えていません。 (問) 夏までに政府は財政再建策を具体的に出すということですが、プライ マリー・バランスは、先日、2020 年度で 9.4 兆円の赤字と、非常に厳しいとの 数値も出てきました。総裁が出席されている経済財政諮問会議では、新しい財 政健全化の指標として債務残高のGDP比というものを導入してはどうかと いう動きがあろうかと思います。これは名目成長率が金利以上に上昇すること が前提で、それこそ、この間の内閣府の試算では、金融緩和は 2020 年度まで 続けていくような数値にもなっているかと思いますが、こうした新しい指標 ──まだ決まってはいませんが──、債務残高をGDP比で出すということに ついて、総裁はどのような考えをお持ちでしょうか。
(答) まず、既に公表されている内閣府の色々な試算については、成長率と か金利についての一定の前提を置いていますが、今、おっしゃったような前提 にはなっていませんので、それはよくご覧になって頂いたらいいと思います。 それから、政府の中期財政計画はご案内の通り、2015 年度までに基礎的財政赤 字を半減し、2020 年度までに黒字化する、そして、その後、債務GDP比率を 着実に引き下げていくということになっていますので、債務GDP比率の引き 下げということ自体は、もともと中期財政計画に含まれているということです。 そのもとで、今申し上げたように 2015 年度に基礎的財政赤字の半減、2020 年 度までに黒字化ということも含まれていますので、その点について、ご指摘の ような議論だとは私は承知していません。
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