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 キャッシュリッチ企業が減らない真因 
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投稿者 rei 日時 2015 年 5 月 11 日 13:07:17: tW6yLih8JvEfw
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20150501/280648/?ST=top
 キャッシュリッチ企業が減らない真因

期待されるリスクを定量化する手法の確立

2015年5月11日(月)  御立 尚資

 様々なリスクと企業経営について考える機会が多いのだが、最近気になっている「誤解」がある。それは、「リスクは減らした方がよい」という誤解だ。

 防災や金融危機対応という例を念頭において、「リスクは減らした方が良いに決まっている」と考えるのは自然だろう。

 しかし、世の中は、「ノーリスク、ノーゲイン」。自分がマネージ可能な範囲でリスクテイクをしないと、得られないものがある。企業の場合だと、リスクは取り過ぎも、取らなさ過ぎも、どちらもダメ。取り過ぎで、企業の存続を脅かすことになるのも問題だが、取らなさ過ぎて、価値を創り出す機会を逸し続けるのも、また大問題なのだ。

 こう書いてみると、「それは当たり前だろう」という声が聞こえてきそうだが、現実には、適正量のリスクを取るということは、簡単ではない。世の中には、過剰なリスクテイクをしてしまう企業があるのと同時に、極端なリスクアバース企業があまたある。

リスクアバースの裏にある論理的帰結

 極端にリスクを避けているように見えてしまうのは、それなりの理由があるからだ。

 昨今、マクロ経済を語る中で、企業がキャッシュをため込み、必要な投資を行わないことが、経済成長の足かせになっている、という論調が目立つ。実際に上場企業のバランスシート上のネットキャッシュ(現預金から有利子負債を差し引いたもの)、あるいは資本準備金はものすごい額になっている。

 しかし、これは多くの企業経営者にとって、2つの原因からの論理的帰結であることが多い。

 第1に、日本国内での魅力的な投資機会の減少。失われた20年は言うに及ばず、かなり経済状況が改善してきた現在でも、人口減少とそれに伴う需要の減少、さらには国家財政が危機に瀕する可能性を考えると、「日本で積極的に投資を行うこと自体が将来リスクを抱え込むことになる」と考える経営者はかなりの数に上るだろう。

 第2に、米国一極集中から多極化への途上での地政学リスクなどの増加。「世界の警察官」がその役割を果たしきれなくなってきた状況下で、地域紛争の発生可能性は高まり、また中東の過激派「イスラム国」(IS)に代表されるような非国家組織が武装し、かなりの軍事力を持つ例も増えてきている。

 こういったリスクの増加は、結果的にグローバルな設備投資やM&A(合併・買収)といったリスクテイクへの期待リターンを高めることになる。地政学リスクなどがない場合の事業そのもののリスクに比べて、リスクの総量が増える、すなわち、その事業のためにリスクを取る決断が正当化されるリターンのレベルがより高くなる、ということになるからだ。

 これは、言い換えれば、魅力的なリスクリターンを上げ得る案件が従来より少なくなるということになる。

 さて、周囲の環境要因から、自然とリスクアバースになりがちな企業。これらの企業に積極的な活動を促す観点から、投資家側のスチュワードシップコードの設定(リスクを過小にしか取らない企業に資本市場からの圧力がかかる仕組み)やROE(自己資本利益率)を社内指標とさせることの推奨などが行なわれ始めている。これらの施策の効果への期待感は高い。

 ただ、あまり語られていないのだが、これらの企業群にとっては、こういった外部からの後押しだけでは済まない経営技術上のチャレンジも存在している。それは、「適正量のリスク」なるものをどう定め、計測するのか。さらに、リスクテイク当初から外部のリスク環境が変わった場合に、どう事業リスク量を適正に維持するのか、という手法が確立していないことだ。

 金融機関の場合には、企業への資金提供に代表されるリスクテイクそのものが収益の源泉である。このため、いざという時のバッファーである資本の量に照らし合わせて、リスクの総量が妥当であるかどうかを常に検証しながら、リスクテイクを行う、という経営技術が進化してきた。

 例えば、「VaR(バリュー・アット・リスク)」と呼ばれる「現在取っているリスク」の総量を定量的に測る指標が開発され、それをモニタリングすることが普通に行われているし、競争相手との比較や監督官庁、格付け機関などのモノの見方も、自己資本比率などリスクテイクの適切さを測るところからスタートするのが通例だ。

 仮に、アジアの通貨危機、あるいは中東での有事など、外部リスクが高まった場合には、自分の持っている貸出債権などのリスクポートフォリオを積極的にマネージして、リスクが高すぎる資産の売却や相対的にリスクが低い資産の購入といった「リスクをやり取りする市場」の機能を活用して、適正量を維持するように動く。

 一方、金融業以外の事業会社の場合は、広く使われるリスク定量化の標準的手法がまだ存在しない。従って、外部環境の変化を見ながら、継続的にリスク量をモニタリングすることも行われない。

 さらに、(金融業界の場合も、資産タイプによっては十分ではないのだが)「リスクをやり取りする市場」は、保険商品などの購入以外、本当に限定的である。

 大きく言ってしまえば、(1)定量化手法の確立(2)それに基づく継続的モニタリングの実行(3)積極的リスクポートフォリオマネジメントを可能とする市場機能の拡充──の3つを考えることで、事業会社がリスクの取り過ぎ、取らなさ過ぎに陥る事態を減らす方向が見えてくることになる。

企業の適正リスクを定量化できる手法の可能性

 定量化手法については、商社がVaRないしそれに類似したものを活用するようになってから、かなりの時間が経過した。業種ごとに、いくつかの定量化手法を標準化していくことは十分可能な感触がある(実際に、海外も含め、我々が同様のお手伝いをした例はかなりある)。

 リース会社など、金融と事業の両方にまたがる業界では、中古市場などリスクを実質的に売買できるセカンダリーマーケットがあるかどうかが、リスクテイクの際の重要な判断要件になっている。

 これは、ほかの業界でもリスクポートフォリオをマネジメントする上で、一番困難なリスク売却の実質的な例として参考になるだろう。

 既に、様々な業界で、完全ではないものの、知恵と工夫を凝らして、少しずつベストプラクティスができてきているということだ。これをどううまく統合し、完成させていくか。さらに、企業自身がそれをどう積極的に活用していくか。

 この話、相当大きな課題なので、多くの方の努力がないと手法確立・実行が進まないのだが、企業が適切なリスクテイクをすることが本当に強く求められる日本だけに、日本発の手法・技術として、何らかのものが出来上がっていけばいいな、と強く思っている。

このコラムについて
御立尚資の帰ってきた「経営レンズ箱」

コンサルタントは様々な「レンズ」を通して経営を見つめています。レンズは使い方次第で、経営の現状や課題を思いもよらない姿で浮かび上がらせてくれます。いつもは仕事の中で、レンズを覗きながら、ぶつぶつとつぶやいているだけですが、ひょっとしたら、こうしたレンズを面白がってくれる人がいるかもしれません。
【「経営レンズ箱」】2006年6月29日〜2009年7月31日まで連載  

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