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ドローン、不都合な真実 アベノミクスの目玉が安倍政権に冷水、テロ対策の有効な手段なし
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150510-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 5月10日(日)6時0分配信
ドローン落下事件がアベノミクス実行計画の大本営である首相官邸で起こったのは、皮肉なことだった。小型無人機や無人ヘリコプターをはじめとするドローンの普及・活用は、安倍晋三政権が推進する経済政策、アベノミクスの成長戦略でも目玉の一つになっている。その一環として、「強い農業戦略」でも日本が得意とする無人ヘリ購入に巨額の補助金があてがわれているほどだ。さらに政府は少子高齢化対策として、無人ヘリを含むロボットを普及させ、経済再生を図ろうとしている。
総務省もドローン普及に対応し、必要な周波数帯域を確保する準備を始めた矢先だった。農林水産省は、農薬空中散布の実施面積の大幅な拡大を狙い、無人ヘリコプターの重量規制をこれまでの100kgから150kgに緩和する予定だ。
その最中に政府へ冷水を浴びせたのが、官邸の警備を担当する警視庁の総理大臣官邸警備隊だ。官邸警備隊は新官邸ができると同時に発足した100人ほどの陣容で、精鋭揃いという触れ込みだった。それが、官邸屋上に舞い降りたドローンの存在にすら気がつかず、実行犯からも「官邸も情けない」といった名文句を吐かせるほどのお粗末さ。挙げ句に、メンツ丸つぶれの警備関係者が声高にいうのが、ドローンの早急な規制強化だ。
しかし、このタイミングでの規制強化には反論もある。今年1月に米国ホワイトハウスへドローンが舞い込んだ時、ホワイトハウス警備関係者はそれほど騒ぎ立てなかった。彼らはホワイトハウスにはレーダー装置やさまざまな感知センサーなどを配備しているが、ドローンのような小型で低空を飛ぶ機体は察知し難いのを熟知している。実際に、ドローンの警備対策で有効な手段は現時点ではほとんどないのが実情だ。
それでも、小型ドローンに最も有効だといわれているのが、妨害電波を発してドローンを飛行不能にするジャミングと呼ばれるものだ。事件後、ホワイトハウスのシークレット・サービスは数機の小型ドローンをホワイトハウス周辺で飛行させてジャミングの有効性をテストすると予告していた。だが、このジャミングは周辺に与える影響もあり、米国では市街での使用は禁止され、すぐに実行に移せるものではない。しかも、ドローンが使用する周波数は無線通信規格のWi-Fiで一般的に使用される周波数帯と同一のものもあり、その周波数帯に向けて妨害電波を出せば一般のデジタル機器が大混乱する危険がある。
そのほかに、個人宅用のドローン探索装置として、ドローンが機体から発生する音波を捉えてドローンの接近を察知するものも販売されているが、その音波察知装置も市販されているドローンの音波を記録してそれにマッチするかどうかで判断するといった装置で、機体を改造して音波を変えられてしまえば役に立たなくなる代物だ。
●米国での議論
このように、主要国の警備当局がドローンに過剰反応しないのは、現時点ではハード面で対テロ対策の有効な方法がないためであり、ドローンを使う側のマナーやルール遵守を呼びかけるしかないと判断しているからでもある。特に米国はそれが顕著だ。米国政府関係者が小型ドローンで大騒ぎをしないのは、それがテロなど悪意的に使用される可能性があることは承知しているが、その最善の対応はドローンの規制強化ではなく、警備の面で対テロ対策を強化することだと考えているからでもある。
米国では対テロ対策は国土安全保障省が担当し、航空機の安全を目的に飛行ルールを策定するのはFAA(米航空局)と、責任分担が明確に分かれている。数年前からFAAはドローンの使用ルールに関して新たな法規を策定しているが、FAAの最大の関心事は民間機などの航空機の安全であり、民間機とドローンの接触事故などをいかに防ぐかで、彼らの仕事はテロ対策ではない。
米国には「テロ対策は国土安全保障省の仕事」という割り切りがある。それを理由に、FAAは基本的には今回使用されたような趣味用小型ドローンは厳しい法規制の対象外とし、飛行場周辺での使用規制と、目視で上空約122m以下といった簡単な規制しかない。彼らが最も厳しく臨んでいるのは、趣味用と同じ性能のドローンでも、それを使ってビジネスを考えている商用ドローンだ。
現在市販されているドローンには上空1km以上を飛行することが可能なのもあり、民間航空機とニアミスを起こす可能性もある。しかし、FAAは商用ドローンも趣味用同様に高度150m以上の飛行を禁止する規制案を出している。それには、商用ドローン関係者が「ビジネスにならない」と反発している。商用ドローンの使用目的としては農業用、監視偵察、災害対応、映画撮影、マスコミ取材、運搬搬送などがある。この分野がドローン・ビジネスで最も成長することは確実だ。
以上よりわかるように、米国などの主要国では同じドローンでも趣味用と商用とでは明確な一線が引かれている。しかし同一機種のドローンでも使い方や目的次第で趣味用と商用に区分されるので、ユーザーからは反発もある。現在米国でFAAの規制に対して厳しすぎるといった反発がビジネス界から上がっているのも、商用ドローンに限ってのことだ。
●一気に規制の動き
FAAの航空法ルールでは、自家用機などを操縦するパイロットをプライベート・パイロットと呼び、客を乗せて収入を得るパイロットをコマーシャル・パイロットと規定して厳格な区別をしている。当然のことながら、顧客の安全を保障する必要もあり、コマーシャル・パイロットに対する規制は格段に厳しくなる。
同じことが商用ドローンにもいえ、アマゾンなどが考える輸送用ドローンが認可されると、低空とはいえ一気に大量のドローンが空を飛ぶことになる。FAAがドローンの法規づくりに慎重なのも、そのようなことが現実になった時に、いかに空の安全を確保するのかといった不安が存在するからでもある。
しかし、日本では首相官邸のドローン事件が発生してから、ドローン関連の法整備と犯罪・テロ対策は区別すべきなのに、すべてを一緒にして一気に議員立法で規制しようとする動きが国会議員の間にはある。
あるドローン関係者は、「本来は専門家が慎重に議論すべき内容なのに、専門的知識のない議員が性急に議論するのは危険だ」と危惧している。国土交通省関係者も「もともとは商用ドローンの法整備が主要な課題だったが、事件後は規制の対象が趣味用ドローンにも及んだ」と漏らす。
海外ではドローンの安全運用ルールづくりと犯罪・テロ対策は別モノであり、趣味用ドローンと商用ドローンは区別するといった原理原則をきちっと踏まえて議論が展開されている。しかし、日本でそれができるのか。今回の事件のようにドローンが悪用されるのを心配するのなら、まずは警備対策をきちっとやるべきで、それができたところで、ドローンの安全運用に関わるルールづくりを製造メーカー、ユーザーを含めて総合的に時間をかけて議論するのが順序だろう。
(文=塚本潔/ジャーナリスト)
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