14年度税収、リーマン前を上回る 52兆円見込む 景気回復、法人税伸びる(2015/4/29 日本経済新聞)
景気回復などで法人税や消費税といった国の税収が大幅に増えている。財務省が28日に発表した2014年4月〜15年3月の税収実績は前年同期比12.3%増と高い伸びになった。15年5月分までを足し込む14年度全体の税収も大きく増え、リーマン・ショック前の07年度を上回ることが確実だ。税収の上振れは、政府が作成する財政再建の計画にも影響を与える可能性がある。(略)
14年4月〜15年3月の累計は39兆6796億円と前年同期に比べて12.3%増えている。14年度全体の税収は15年5月に納める3月期決算企業の法人税などを足すが、堅めに見ても13年度より約5兆円多い52兆円ほどに達しそうだ。(以下、略)
図表1:一般会計の税収推移(単位:兆円)
(出所)財務省(注:2013年度以前は決算額。2014年度は筆者推計)
記事のタイトルや内容は正しい。だが、
この記事の読み手が、「景気循環の影響が主因で国の税収が大幅に増加した」と考えるならば、その見方は正しくない。
理由は単純で、2014年4月には消費税率が5%から8%に引き上げられ、消費増税の影響が税収増に大きく寄与しているためだ。つまり、「景気循環の影響で国の税収がどれだけ増加したか」を評価するためには、国の税収(一般会計)のうち消費税以外の税収がどう変化しているかを見る必要がある。
税収増7.2兆円のうち景気がもたらしたのはわずか2.8兆円
では、国の税収(一般会計)における2014年4月〜15年3月の税収実績のうち、消費税以外の税収がどう変化しているか。これは、財務省が今年4月下旬に公表した「平成26年度 27年3月末租税及び印紙収入、収入額調」を見ると分かる。
まず、2014年4月〜15年3月の税収実績は39.7兆円(1)、前年(2013年4月〜14年3月)の税収実績は35.3兆円(2)である。(1)は(2)の112.3%であるから、冒頭の記事の通り、2014年4月〜15年3月の税収実績は前年同期比12.3%増である。
次に、消費税以外の税収はどうか。2014年4月〜15年3月の消費税収実績は10.2兆円(3)、前年(2013年4月〜14年3月)の消費税収実績は7.9兆円(4)である。したがって、2014年4月〜15年3月の消費税以外の税収実績は29.5兆円(=(1)−(3))、前年(2013年4月〜14年3月)の消費税以外の税収実績は27.4兆円(=(2)−(4))であることから、2014年4月〜15年3月の消費税以外の税収実績は前年同期比7.6%増となる。
では、2014年度の国の税収はどう予測できるか。国の一般会計の出納整理期間は4月1日〜5月末であるから、現時点で税収の確定値は分からない。だが、2013年度の税収が47兆円(消費税収10.8兆円、それ以外36.2兆円)ということは既に決算で確定しており、消費税以外の税収が最終的に前年同期比7.6%で増加すると仮定するならば、一定の予測はできよう。
その場合、簡単な計算で、2014年度における消費税以外の税収は38.9兆円(=36.2兆円×(1+0.076))と予測できる。一方、2013年度に10.8兆円(決算)であった消費税収入は、2014年度には補正後予算ベースで15.3兆円(=10.8兆円+4.5兆円)になると、財務省は見込んでいる。本来なら消費税率の3%引き上げ(5%→8%)により約6.5兆円(=10.8兆円×3%÷5%)増加するはずだ。しかし、増税初年度は、この約7割の約4.5兆円(=6.5兆円×0.7)を増収分とするのが適当である。この詳細については「増税延期でも『財政赤字半減目標』が達成できるカラクリ」をお読みいただきたい。
つまり、以上の前提に従う場合、2014年度における国の税収は、前年度の47兆円から7.2兆円増加し、54.2兆円になると予測できる。その際、2015年夏頃に策定する「新たな財政再建計画」を議論するにあたっては、「税収増7.2兆円のうち、4.5兆円は消費増税に伴う増収であり、景気循環の影響に伴う増収は2.8兆円に過ぎない」という事実を認識することが極めて重要である。
なお、「消費税を増税すると、国の税収は必ず減少する」という主張をマスコミの紙面などで流布する有識者が一部にいたが、今回の増税でそれが正しい認識ではないことも明らかとなった。2013年度から2014年度にかけて税収は増加しているのだ。
消費税以外の税収は構造的に伸びない
ところで、財政再建を行う際には、景気循環に依存しない構造的な税収がどう推移しているかを見ることも重要である。景気循環で税収は変動するが、景気が常に良いとは限らない。消費税は景気循環の影響を受け難いが、それ以外の法人税や所得税といった税収は景気循環の影響を大きく受ける。
そこで、1989年度から2014年度において、消費税以外の税収の構造的な推移をHPフィルターという手法を用いて推計してみた。以下の図表2である。
図表2:消費税以外の税収の構造的な推移(単位:兆円)
(出所)筆者作成
図表2では、消費税以外の税収実績をオレンジ線、その構造的な推移を赤の太線、消費税収の実績を青線、名目GDP成長率を黒の点線で描いてある。大雑把にみて、「消費税以外の税収実績」(オレンジ線)が、景気循環で「名目GDP成長率」(黒の点線)に連動して推移している。一方で「消費税収の実績」(青線)は景気循環の影響をあまり受けていないことが読み取れる。
では、消費税以外の税収の構造的な推移(赤の太線)はどうか。推計は幅をもって評価する必要があるが、図表2において、2006年以降は概ね横ばいで、2014年度の値は35.1兆円となっている。つまり、もし景気循環がないならば、2014年度における国の税収は50.4兆円になると見込まれる。
以上から明らかなように、税収の自然増に頼って、財政再建の議論を進めることはリスクが高い。経済は生き物で景気は常に変動しており、常にプラスに作用するとは限らない。さらに、景気変動に依存する諸税の税収は構造的に見て、横ばいの傾向にある。2020年度のPB黒字化に向けては、追加の増税や歳出削減が避けられない。改革の本丸は社会保障と位置づけ、将来世代の利益も視野に入れた、堅実な財政再建計画を策定することが望まれる。
子供たちにツケを残さないために、いまの僕たちにできること
この連載コラムは、拙書『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアムシリーズ)をふまえて、 財政・社会保障の再生や今後の成長戦略のあり方について考察していきます。国債の増発によって社会保障費を賄う現状は、ツケを私たちの子供たちに 回しているだけです。子供や孫たちに過剰な負担をかけないためにはどうするべきか? 財政の持続可能性のみでなく、財政負担の世代間公平も視点に入れて分析します。
また、子供や孫たちに成長の糧を残すためにはどうすべきか、も議論します。
楽しみにしてください。もちろん、皆様のご意見・ご感想も大歓迎です。
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