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昨年10月、中国・北京の人民大会堂で行われた国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」設立に向けた覚書の署名式〔AFPBB News〕
中国主導のAIIB、日本は参加すべきなのか?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43728
2015.5.8(金) 浜田 宏一 JBPRESS
国際金融の世界では、対立する金融・為替政策が優位を得ようと競い合い、各国がゲームのルールに対する影響力を巡って戦う。結局のところ、投資家が利益を最大化しようと競い合うように、各国は国際的なルールと規範が自国に好都合なものにするために競い合うからだ。
国際的な経済体制――例えば固定為替相場の確立や共通通貨の採用など――に同意することが極めて政治的な判断であるのは、このためだ。
そして今日のアジアは幾多の政治的判断に直面している。
アジアでは、経済統合がホットな話題だ。巨大な地域貿易協定の「環太平洋経済連携協定(TPP)」交渉から中国主導の投資プラットフォームの確立――シルクロード基金や直近ではアジアインフラ投資銀行(AIIB)など――に至るまで、アジアはかつてないほど相互に関連し合うようになっている。
その結果、一部の観測筋は、金融統合の強化という考え、場合によっては例えば中国人民元か日本円をベースにした固定為替相場制の確立にも大きな魅力を感じるかもしれない。
■アジアの金融統合強化の是非
だが、筆者は、繁栄を促し、ショックから身を守るうえでは、現在主流の変動為替相場制が依然としてアジアにとって最大の望みだと主張したい。
変動為替相場制度を維持する利点を理解するためには、先進諸国の近年の成長軌道を見ればいい。2008年の経済危機の後、米国と英国は景気後退から逃れるために非伝統的な金融政策を採用することができた。日本は2012年終盤に、20年に及ぶ景気低迷から逃れるために似たような政策を採用した。
だが、ユーロ圏諸国にはそのような選択肢がなかった。欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は最終的に共通通貨の安値誘導を狙った政策を追求することができたが、それまでに多くのユーロ圏諸国が辛い緊縮財政と深刻な景気後退、社会不安、政治不安に何年も苦しむことになった。
ユーロ圏の状況に照らしてみると、アジアで単一通貨に似たものを確立する可能性を検討することは時代錯誤のように思える。
アジアは欧州と比べ、制度上の相違が極めて大きく、経済的なショックの多様性もずっと大きい。
アジアで統一通貨を望むことは、アジア版のギリシャ危機を望むにほぼ等しい行為にさえ思える。
このことは、AIIBのような新しい多国間組織にとって重要な意味を持つ。他の発展途上国がAIIBに参加したのは、国際通貨基金(IMF)と世界銀行に裏打ちされた既存の国際金融秩序が過剰に先進国志向に傾いていると考えているからだ。
日本が大きな影響力を享受するアジア開発銀行(ADB)でさえ、時として、発展途上国の意見に十分に耳を貸さないと言われる。
さらに、アジア諸国は、自国の継続的な発展には、新たな融資プラットフォームがなければ建設することのできない高度かつ信頼性の高いインフラが必要なことを理解している。
■AIIBは理想的な解決策なのか?
AIIBは理想的な解決策を与えてくれるように見える。そして実際、AIIBは発展途上のアジア諸国だけの興味を引いたわけではない。フランス、ドイツ、イタリア、英国はその他30カ国以上とともに創設メンバーとして参加した。しかし、米国と日本はまだ疑念を抱いている。両国は参加すべきなのだろうか。
この疑問に答えるために、日米の政策立案者らは「calculus of participation(参加の算法)」を頼りにすべきだ。この法則は、国際的なイニシアチブや体制に参加すべきかどうかを決める最初の一歩は、プロセスの最終段階、すなわち結果を検討することだと定めている。
端的に言えば、一国の指導者は、参加することで最終的に自国の状況が上向くか、それとも悪化するか自問すべきだということだ。
この「後ろ向き帰納法」のアプローチは明白に見えるかもしれないが、AIIBの参加メンバーはこれを無視したようだ。実際、中国が主導権を握るという事実以外には、AIIBやその融資規則についてほとんど何も分かっていない。そう考えると、日本のような国々がAIIBに参加すべきか否かを決める前に成り行きを見守るのは理にかなっているように思える。
もちろん、これに対する反論はある。
完璧とはほど遠いとはいえ、米国とイランの協議が相互理解を形成する助けになり、核兵器を手に入れようとするイランの動きを阻止したように、日本とアジア近隣諸国の間の統合強化は各国の行動と利益を一致させる助けになるかもしれない。
この「コミュニティー(共同体)」アプローチ――後ろ向き帰納法よりは東洋的な見方を反映している――の効果は計り知れないほど大きい。
頑なな沈黙がもたらす結果が壊滅的なものになり得るイランとの協議のように、極めて緊迫した状況では特にそうだ。だが、AIIBへの参加先送りが日本にもたらす潜在的コストは、かなり限定的に思える。
日本が待つべき強力な理由がもう1つある。マクロ経済の安定がそれだ。
■中国の国内リスクが近隣諸国に広がる恐れ
現状では、中国の資本配分のミスやお粗末な投資判断が重大なリスクをもたらしており、そのリスクは次第に2008年の金融危機の引き金を引いた米国のそれと同等の大きさになっているように見える。
もしAIIBが国際投資の監視について曖昧な基準か持たず、中国の暗黙の拒否権がある状況でスタートしたら、こうした国内リスクが中国の近隣諸国に広まり、また別の大規模な国際危機の危険を増大させる恐れがある。
欧州諸国は中国との商業的、政治的関係を深めるためにAIIBに参加するかもしれないが、その結果に対する各国の金銭的利害は限られている。日本については同じことを言うことができない。そう考えると、投資の監視基準が明白になるまで、日本はAIIBに参加すべきではない。差し当たり、日本の最善の賭けは一切賭けないことだ。
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