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縮小する国内家電業界で、海外メーカーが続々参入し躍進する理由 日本企業が失った「力」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150508-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 5月8日(金)6時1分配信
「当社の場合、業界全体がコモディティ化(=商品などが汎用化して差別化が難しくなること)している。だから価値を創造して成長するのは、なかなか難しい」
多くの業界でこのような話をよく耳にする。しかし実際には、コモディティ化した業界の中で新たな価値を創造し成長している企業は少なくない。
たとえば国内白物家電市場はコモディティ化している業界の筆頭だろう。しかし、そのような家電業界でも成長している企業がある。「黒船家電」と呼ばれる海外家電メーカーだ。そこで今回は、黒船家電の中でも躍進著しい掃除機市場をみてみよう。
●「静音」でシェアを伸ばすエレクトロラックス
掃除機市場では、サイクロン技術を擁するダイソンや、自動お掃除ロボット「ルンバ」を擁するアイロボットといった黒船家電メーカーが成長している。それぞれ「世界で唯一吸引力の落ちないこと」や「自動ロボット」といった尖った機能を売りにしている。
ほかにも国内掃除機市場で伸びている黒船家電メーカーがある。北欧スウェーデンのエレクトロラックスだ。まだ日本国内では小規模だが、売り上げは11年の61億円から13年は93億円へと急拡大している。同社は12年、日本市場に特化して開発された掃除機「エルゴスリー」を発売した。この掃除機の特徴は音が静かなことだ。「掃除機は音がうるさい」という常識を覆し、赤ちゃんが寝ていたり家族がテレビを見ていても、安心して掃除機をかけることができる。一方でライバルのダイソン、ルンバ、日本メーカーの掃除機は構造上、音がうるさい。
エレクトロラックスは優れた静音技術を生かして、エルゴスリーを開発できた。しかし、考えてみれば日本の多くの家電メーカーも、さまざまな優れた技術力を持っているはずだ。ではなぜ日本の家電メーカーは低迷し、黒船家電は躍進しているのか。
●消費者自身が気づいていない課題を先取りして解決
そこには考え方の違いがある。エルゴスリーは「掃除機は音がうるさい」という常識を、静音技術を生かして覆した。このようにエレクトロラックスは、消費者自身が「当たり前」と思っていて気がついていない課題を先取りして解決することで、成長しているのだ。
しかしここで疑問が残る。なぜエレクトロラックスは、成熟市場である白物家電でビジネスを展開しているのか。そこには同社ならではのしたたかな戦略がある。その成熟市場にあっても顧客が気がつかないニーズを掘り起こし続け、自社の強みを生かし応えることが、差別化の源泉になるということを理解しているのだ。ここまで考えると、低迷する日本の家電メーカーを尻目に黒船家電が成功している理由がわかるだろう。
白物家電市場という需要が安定したマーケットで、エレクトロラックスは「静音技術」という強みを生かし、「どんな時でも気兼ねせずに掃除ができる」という新たな価値を提供している。ダイソンは世界で唯一吸引力の落ちないという独自の「サイクロン技術」という強みを生かして、屋内アレルギー最大の原因であるハウスダストを確実に取り除くという新たな価値を提供している。アイロボットは「自動ロボット技術」という強みを生かして、「スイッチポンでキレイな床にしてくれる」という新たな価値を提供している。
そして3社とも、新たな価値を提供することで新たな顧客を生み出し、市場を創造して成長している。自社の技術面の強みを見極め、顧客自身も気がつかないニーズを掘り起こし、強みとニーズを結びつけて応え続けることにより、たとえ成熟市場であっても価格競争に陥らず、差別化を続けることができるのだ。
●市場全体のコモディティ化はチャンスである
一方で日本の家電メーカーは、確かに優れた技術を数多く持っているが、上記3社が有するこうした力を持っているだろうか。
かつての高度成長期、数多くの日本の家電メーカーが持っていたこの力は、バブル崩壊後25年間を経て、現代では失われているようにみえる。ともすると先進技術が主役になってしまっており、顧客が「ぜひ買いたい」と思えるようなニーズ先取り・市場創造型の商品が存在しないのだ。
見方を変えると、市場全体が成熟してコモディティ化しているということは、多くのライバルが価値を訴求できていないことの裏返しでもある。価値を創造し一歩先んずるチャンスでもあるのだ。この状況を打開するカギが、本連載で提唱し続けている「ニーズ断捨離」を通じて「顧客が買う理由を考え抜く」ことなのだ。
このことは、黒船家電メーカーが、少子高齢化により全体が縮小している日本市場にこぞって進出してくる理由とも深い関連がある。彼らならではの、したたかな戦略があるからだ。
14年4月1日付東洋経済オンライン記事『自動掃除機で独走状態、「ルンバ」強さの秘密』で、アイロボットCEOであるコリン・アングル氏の言葉が紹介されている。
「アングル氏は、『日本の顧客を幸せにできれば、世界中の顧客を幸せにすることができる』と言う。開発テストでは、畳の上をはだしで歩いて、細かい粒状のゴミが感じられないかをチェックした」(同記事より)
最も厳しい消費者がいるコモディティ化した国内市場は、実はグローバル展開を見据えて商品を磨き上げるための魅力的な市場でもある。市場が成熟し、コモディティ化していることは、ビジネス不振の理由ではなく、むしろ新たな価値を創造する大きなチャンスと捉えるべきなのかもしれない。
(文=永井孝尚/ウォンツアンドバリュー永井代表)
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