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[経営の視点]牛丼、脱デフレに苦闘 吉野家がつかんだヒント
編集委員 中村直文
牛丼にはまだ脱・デフレ政策の恩恵はもたらされていないようだ。2014年12月に並盛りを値上げした吉野家の1〜3月の来店客数は20%近くのマイナスが続く。前年同時期の「牛すき鍋膳」のヒットに伴う反動もあるが、回復は予想を下回っているという。
4月15日に値上げしたゼンショーホールディングスが運営する「すき家」も戦々恐々だろう。肉の20%増量とともに「商品設計を見直した戦略的価格改定」を掲げているが、業績が低迷する中での動き。消費者が素直に信じることはなく、浸透には時間がかかる。
円安や原料高、人件費の上昇などファストフードは逆風だらけだ。だが市場は複雑で、消費者は牛丼の値上げには納得しなくても、やや高めのすき鍋には食いつく。「外食に対してもっと安さを求めているのか。あるいは、付加価値を求めているものなのか。実態を読み切れない」。吉野家ホールディングスの河村泰貴社長はこう話す。
不透明な消費者行動だが、吉野家が最近つかんだ明確な事実がある。それはヒット商品となった牛すき鍋膳の購買層だ。当初、60歳以上の利用者は10%程度と見ていたが、ふたを開けると35%に達していた。特盛りや200円台など安さとボリュームで若者やサラリーマン層をひき付けてきた吉野家だが、すっかりシニア化していたわけだ。
高齢化が進む中、価格の上げ下げだけで成長できる時代ではなく、「牛丼一本足の時代ではない」(吉野家の門脇純孝専務)。年齢層、時間帯など幅広い視点から市場を開拓する必要がある。その一つが吉野家で居酒屋サービスを提供する「吉呑み」の展開だ。そもそも「かつて吉野家に来ていたビールと牛皿を注文していた顧客はどこへ行ったのか」という議論からサービスにつながった。客足が落ちていた夜の時間帯を活性化するのが狙いだ。
現在150店で実施している吉呑みのメニューは100円台、200円台が多く、ちょい飲みにはぴったり。4月28日に東京・神田の店へ行くと、シニア層を中心にごった返し、満席が続いた。一方、長時間飲み続ける女性客もいて、完全に居酒屋だ。1人当たりの平均利用料金は2千円未満。吉野家のキャッチフレーズである「うまい、早い、安い」で居酒屋の顧客を奪った格好だ。同社では「締め」で食べる小ぶりの牛丼メニューも検討中という。
市場の変化は急激にやってくるわけではない。セブン―イレブン・ジャパンの客層を見ると、50代以上の利用者は30年前の85年で9%、95年が12%、最新データの2013年は30%に膨らんでいる。一方、20代以下となると85年は64%、95年は57%、13年には29%と大きく低下している。00年代は既存店の苦戦が目立ったセブンイレブンはこうした変化への対応を強め、再び成長力を備えた。
「ユニクロ」のファーストリテイリングや「東京ディズニーランド」のオリエンタルランドも10代からシニア層まで幅広い年齢層に同じような商品サービスを提供し、成長している。コスト増など逆風下でも強みを生かしたボーダーレスの競争力が欠かせない。
[日経新聞5月4日朝刊P.11]
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