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ギリシャとユーロ圏の不幸な結婚
グレグジットで終わりにするのがベストかもしれない
2015.5.7(木) Financial Times
(2015年5月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ギリシャ14年の財政赤字、予想の2倍超 公的債務はGDP比177%
ギリシャの首都アテネの議会に掲げられたギリシャ国旗〔AFPBB News〕
ギリシャ政府と他のユーロ加盟国との関係は、不幸な結婚にますます似てきている。相手の顔など見るのも嫌だと双方が思っているし、お互いを信頼する気持ちも崩れてしまっている。継ぎ当てのような関係修復の努力は続けられているものの、いずれもうまくいっていないようだ。
本物の結婚の場合、こうしたジレンマの解決策として昔からよく知られているのは離婚である。
離婚で片を付ける時には、双方が金銭面で苦労をするのが普通だ。
それでも別れてしまうのは、悪い関係から逃れるためなら大きな代償を払ってもいいと思っているからにほかならない。
ギリシャと他のユーロ加盟国は、もうそういう状況に達してしまっている。両者の関係は破綻している。清算して新たなスタートを切る時が来ている。
ギリシャのユーロ圏離脱――Grexit(グレグジット)――がもたらす結果を恐れる向きは、両国の関係を結婚にたとえるのは誤解を招く恐れが強いと反発することだろう。夫と妻の結びつきを解消する手続きはすでに確立されているが、通貨同盟の解消となると前例はずっと少なくなる、というわけだ。
ここまで来たら、高い代償払っても離婚
この解消に伴うリスクを、筆者の同僚ジリアン・テットは先日掲載のコラムで手際よく整理している。
これによれば、グレグジットには法律と金融の面に計り知れないリスクがあるため、もし実行されれば、大手投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻を引き金に2008年に始まった世界的な金融メルトダウンにつながりかねないという。
しかし、ドイツの交渉担当者とギリシャ政府の一部は、グレグジットのリスクは封じ込められると考えているように見受けられる。もし本当にそう考えているのであれば、彼らは深呼吸をしてから関係解消に着手する公算が大きい。この段階まできた以上は、別れた方が双方にとって良策かもしれない。
ギリシャにしてみれば、ユーロ圏からの離脱は経済と政治の両面で新しい可能性を開くことになるだろう。
まず、巨額の債務の一部をデフォルトすることができるようになる(上品な表現を使いたければ、さらなる債務再編が可能になると言ってもよい)。
通貨を切り下げ、ギリシャの競争力低下に手を貸してきた固定相場制から逃げ出すこともできるようになる。
もちろん、短期的には経済にひどい悪影響が及ぶこともあるだろう。アルゼンチンなどの国々の経験が示唆するように、銀行では取り付け騒ぎが発生するだろうし、しばらくは資本規制も導入されるだろう。
食料品やエネルギーといった主要な輸入品の価格も上昇するだろう。そうなれば、極右・極左勢力にさらに支持が集まる恐れもあるだろう。
しかし長期的には、ギリシャはユーロ離脱によって政治的な利益を手にする可能性がある。
ギリシャの損得勘定
まず、ギリシャには、ユーロ圏にいじめられているとか辱められていると感じている人が明らかにたくさんいる。ユーロ圏を離れればギリシャはそういう心理から解放され、困難な環境ではあるが自分のことを自分で決められるようになったのだという気持ちに戻ることができるかもしれない。
そしてこの新たな責任感は、他のユーロ加盟国をここまで立腹させたギリシャの短所の一部を治す方向に作用するかもしれない。特に、汚職と脱税をはびこらせてきた市民と政府との相互信頼の欠如に変化が生じる可能性がある。
この相互不信の源泉は、ギリシャが何世紀もの間オスマントルコの支配下にあった事実に求められるとする歴史家もいる。この支配ゆえに政府と市民との間に距離と不信感が生じたというわけだ。
欧州連合(EU)はある意味で、遠く離れた都(みやこ)にいる外国人が作ったルールだから守らなくてもいいという感覚を蘇らせたと言えるのかもしれない。
ユーロ圏離脱により主権の一部を回復するギリシャは、より健全な政治体制に向けてスタートを切る可能性もあるだろう。
グレグジットは他のユーロ加盟国にも好影響をもたらす公算がある。
ユーロ圏の損得勘定
ギリシャへの支援を続けたことによって、ユーロ圏には皮肉な見方と怒りが生じており、欧州懐疑派の政党が台頭する要因になっている。
ここでグレグジットが実行されれば、ユーロ圏のルールは本当に重要なのだという見方が再度確立されることになるだろう。
また、ギリシャができなかった構造改革の一部を推進するようイタリアやフランスなどの国々に促す効果もあるかもしれない。
一方、グレグジットが「失敗するかもしれない」からではなく、「成功するかもしれない」から反対している向きもある。もしギリシャがユーロ圏離脱に成功したら、これに続きたいと考える国が出てくるかもしれないというわけだ。特にイタリアは、今や主要な野党のほとんどが単一通貨に反対するという状況にある。
ただ、この反対が力を持つのは、単一通貨それ自体を目的とする神学的な信念がある場合に限られる。
実際には、単一通貨ユーロは、今以上に繁栄する平和な欧州というもっと大きな目標に向けた手段の1つと見るべきだろう。ギリシャの場合、ユーロが繁栄をもたらせずにいることは明らかだ。いや、そんな表現ではすまない。何しろギリシャの国内総生産(GDP)は2008年以降、25%縮小しているのだ。
ユーロはまた、欧州統合の促進という大きな政治目標の達成にも寄与することになっているが、これもまだ成し遂げられずにいる。
それどころか今日では、ギリシャとドイツのようにかつてうまくやっていた国々が反目し合うようになっている。
いばりちらすドイツ人と怠け者の南欧人という古いステレオタイプが再びはびこり、欧州の政治に悪影響を及ぼしているのが実情だ。
ギリシャと他のユーロ加盟国との婚姻関係を数カ月間もたせるための単なる継ぎ当ての対策では、こうした問題の解決は望めない。
しかし、もしギリシャが、実行可能なユーロ離脱の方法があることを示すことができれば、誤った理解に基づいた通貨同盟を解消したり管理可能な規模に縮小したりする際のモデルになるだろう。
そういう前例ができることをEUは歓迎すべきであって、恐れるべきではない。
By Gideon Rachman
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43713
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