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「女性が働きづらい」は単なる偏見か? 〜今って男女平等社会だと思いますか?(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/15/hasan96/msg/235.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 5 月 07 日 01:13:05: igsppGRN/E9PQ
 

「女性が働きづらい」は単なる偏見か? 〜今って男女平等社会だと思いますか?
http://diamond.jp/articles/-/70945
2015年5月7日 小川たまか ダイヤモンド・オンライン


「最近の若い女性はちやほやされていたいからずっと働き続けたいって言うんだよね。だから我が子を虐待するような恐ろしい事件が増えてるんですよ」

 何を言っているかわからないと思いますが、私も何を言われているのかよくわかりませんでした。昨年、とある取材中に中年の男性から言われた言葉です。

■日本の男女格差は142ヵ国中104位

 いったん、この言葉はさておきます。昨年10月に世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数ランキングをご存知でしょうか。「経済活動の参加と機会」「教育」「健康と生存」「政治への関与」の4項目で男女格差を調べたものですが、この順位、日本は142ヵ国中104位でした。日本より順位が低いのはマレーシア(107位)や韓国(117位)などアジアの国もありますが、多くは中東やアフリカです。

 4項目のうち、特に低いのは「経済活動の参加と機会」(102位)、「政治への関与」(129位)。日本社会における管理職の男女比は9対1と言われます。政府が2020年までに指導的地位に占める女性を30%までに引き上げる「202030」を打ち出すのも無理なからぬことに思えます。

 とはいえ。現代の日本に生きる男女で、「日本は女性の権利が著しく損なわれているなあ」と感じている人は、どれほどいるでしょうか。この連載を始めるとき、D社の女性編集者Yさんから、「小川さん、実際に不平等を感じる機会ってありますか?」と聞かれました。Yさん自身はあまり感じたことがないという口ぶりでした。確かに、出版業界は他の業界と比べて格差が少ないように感じます。女性の意見も重宝されやすい業界です。

 私は現在34歳です。文系大学院を卒業後、就職できなかったので2年ほどフリーライターをして、その後小さな編集プロダクションを男性の共同経営者と起ち上げました。就活でもフリーライターの頃も、会社を起ち上げてからのクライアントとのお付き合いでも、男尊女卑や、ジェンダー・ギャップを感じたことはあまりなかったように思います。学生時代、神保町の古書店でアルバイトをしようと思って募集が出ていた店へ電話をしたら「男性だけです」と断られたことがあり、後に「それってダメなヤツじゃないの」と言われましたが、書店って肉体労働だと聞くから仕方ないのかな、と特に腹は立ちませんでした。

■「女性が働きづらい」は偏見?

 …だがしかし。ワーキングマザーなど女性の働き方を取材して記事にするうちに次第に疑問を感じることが増えました。記事の反応を見ると、ワーキングマザーに批判的な人が一定数いることに気づくのです。「子どもがかわいそう」系のヤツです。

 昨年、そんな経験から「共働き家庭の子どもはかわいそうですか?」という記事を書いたとき、「ヤフー」のトップページに取り上げられたこともあって、かなりの反響がありました。一番多かったのは「読んで涙が出ました」というワーキングマザーの方たちからのメッセージ。共働きだという男性からのメッセージもありました。

 でもやっぱり、「あなたは自分が子どもの頃の(両親不在の)さみしさを忘れているだけです」「かわいそうに決まっているじゃないですか」などのご意見も寄せられました。

 さらに、自分も妻も働いているという男性からは「あなたのような記事を書かなくても、そんなことを気にせずに共働き家庭はバリバリ働いています。話題にすること自体、時代遅れです。女性が女性が、と言うあなたに偏見があるのではないでしょうか」とも。

 この方の仰ることもわかります。共働き世帯はすでに多数派ですし、私も記事を書かなければ、ワーキングマザーに批判的な人(男女ともにいます)が一定数いることに気がつかなかったかもしれません。男女雇用機会均等法が1986年に施行され、今の20代30代(それ以上も?)は、「男女平等の世の中であるべき」と教えられて育ってきました。結果的に、現代が「男女平等だ」と思っている人は多いのだと思います。でも、そうであるならばなぜ、日本はジェンダー・ギャップ指数が142ヵ国中104位なんでしょうか。なぜマタハラが問題になっているんでしょうか。注意しなければ目に見えない「偏り」が、まだあるのではないでしょうか。

 冒頭で紹介した言葉は、言った男性自身が「私の意見は古いし、偏ってますけどね」と前置きされていました。

「最近の若い女性はちやほやされていたいからずっと働き続けたいって言うんだよね。だから我が子を虐待するような恐ろしい事件が増えてるんですよ」

 いやいや。女性がちやほやされたいという理由で働き続けられる職場って、一体どんな職場の話なのでしょうか。働く女性が増えているから虐待が増えるというのも、どんなデータに基づいた話なんでしょうか。

 さすがに、ここまで極端なことを言う人が多数派ではない……と思っていたら昨年、長谷川三千子さんが産経新聞で「性的役割分担」を唱えました。曽野綾子さんは週刊現代で「出産したらお辞めなさい」と言いました。怖いのは、極端な考え方を持つ人は、結構な力を持っている人の中にもいるということです。「ちやほやされたいから〜」と言った男性は経営者でした。

 ただ、こうやってはっきりと性的役割分担が必要と言ってくれる人はまだいいのかもしれません。ご本人たちも「自分たちの意見はもはやマイノリティー。だからこそ言っておかにゃならん」風なことを、本気なのかそういうテクニックなのかチラリとのぞかせたりします。手ごわいのは、現代は男女平等な世の中であり、疑問を持っている人は考え過ぎだろうと思っている人です。

■男性が背負わされた重荷

 男女平等の話をすると女性の権利ばかり主張するなと言われますが、ジェンダー・ギャップは女性が働きづらいことにだけ表れているわけではないです。男性に対して、いかに「働け。稼げ」というプレッシャーがかけられている社会か。

 昨年話題になった『家事労働ハラスメント』(岩波新書)の件で取材した和光大学の竹信三恵子教授はこんなことを仰っていました。

「萩原健一さんと桃井かおりさんが出演する『青春の蹉跌』という映画があります。映画の中では、権力者の娘と婚約が決まった主人公の男性(萩原)が、妊娠した恋人(桃井)を殺してしまうのですが、その前に、恋人が男性に歩行者天国で『捨てないで』と言ってすがりつくシーンがあるんですね。これは男性が背負わされている重荷の描写だと思わずにはいられませんでした。

 日本の多くの男性は女性をどこかで憎んでいるのかもしれません。それは当たり前です。なぜなら日本の社会は、妻や子ども、自分の両親など家族全員を夫だけが養うという構造だったから。結婚すると男性は自動的に何人もの食い扶持について一生涯責任を取らなければなりません」

『青春の蹉跌』は1974年の映画です(原作が単行本化されたのは1968年)。さてそれから40年以上が経った現代において、男性の重荷はどれだけ取り払われたでしょうか。この連載では、取材で見聞きした言葉を通して、ダイバーシティー(労働や生活における多様性)を巡るホンネとタテマエを取り上げていきたいと思います。


 

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