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資産・雇用・教育の「三大格差」をどう減らすか(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/15/hasan96/msg/234.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 5 月 07 日 01:05:05: igsppGRN/E9PQ
 

資産・雇用・教育の「三大格差」をどう減らすか
http://diamond.jp/articles/-/70950
2015年5月7日 出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長兼CEO] ダイヤモンド・オンライン


 ピケティ以来、「格差」という言葉が、一種のブームのようになっている。わが国は、アメリカや中国に比べれば、相対的に格差の小さい社会であると言われているが、格差の問題はどう考えればいいのだろうか。


■「資産格差」はアメリカに比べればはるかに小さい


 格差という言葉から、人々が反射的に連想するのは、おそらく資産の格差であろう。アメリカの資産格差については、よく、上位1%が全米資産の3分の1を、上位10%で7割を、上位20%で9割を保有、と言われているが、わが国ではどうだろうか。野村総研のレポート(2014年11月)によると、わが国では次の通り、上位2%で約2割弱を、上位20%で6割弱をという結果となり、しかも2000年から時系列で見てもさほどシェアは変わっていないのだ。



 もちろん、大きな資産格差があることは決して好ましいことではない。では、資産・所得の再分配を上手に行うためにはどうしたらいいのか。


 わが国の所得税は既に累進税率が導入されているので、これからの税制は消費税を基幹として考えるべきだろう。サッチャー元首相がいみじくも述べたように「われわれが汗水たらして働いた結果得られる所得に課税するのは、勤労を罰することになる。それよりも、個人が選択的に消費をする際に課税するほうがずっと公平」なのである。富裕層といえども消費をしなければ、およそ人生を楽しむことはできないのだから、サッチャー元首相の指摘は的を射ている。


 資産の再分配については、当欄で以前にも述べたように、相続税率を100%とする方向で検討を行ってはどうだろうか(もちろん、配偶者には相応の配慮があって然るべきであるが)。国家に吸い上げられるのがいやであれば、血縁の有無を問わず、生活費や教育費がかかる子育て世代である20代30代に対する贈与に限って贈与税率を0%とすればいい。そうすれば、例えば20代の若者が代表を務めるNPOやNGOにも高齢者の金融資産を移転することができるようになり、「金は天下の回りもの」が文字通り実現できるのではないか。


 なお、このような政策を採れば、シンガポールや香港などへの移住者が増えるのではないかと危惧する向きもあろう。キャピタルフライトを助長するのではないかと。しかし、そもそもの原点に戻って考えてみれば、人間の歴史には「代表なくして課税なし」という金言があった。日本国籍、パスポートを持ち投票権がある以上は、その人の資産・所得課税はわが国が行うのが本来の姿ではないのか。将来的には、パスポートを発行する国が、その国のパスポートを持つ人がどこに住んでいようと課税を行えるシステムに、世界が協調して変えていくべきだと考えるがどうか。


■雇用格差の是正には被用者保険の適用拡大がベスト


 資産格差に次いで問題となるのが、雇用格差、即ち正規雇用、非正規雇用の問題である。この問題については、早くも1994年に国際労働機関(ILO)が「パートタイム労働に関する条約」を採択しており、パートタイム労働者にフルタイム労働者と同等の労働条件を求めているが、わが国は批准していない。


 ところで、この問題の核心は、社会保険制度を適用するか否かにあるのではないかと思料する。最近はわが国でも、脱時間給制度の導入が始まろうとしているが、働いた時間ではなく成果が問われる時代に入りつつあるのだから、社会保険についても、勤務時間に係わりなく思い切った適用拡大を早期に行うべきではないか。


 厚生労働省が2014年に行った年金の財政検証では、いくつかのオプション試算が行われているが、その中に、一定以上の収入(月5.8万円以上)のある全ての雇用者に適用拡大を行えば、約1200万人の被用者が、厚生年金・健康保険の世界に組み込まれるケースが提示されている。


 わが国の非正規雇用労働者の総数は2000万人弱なので(正規雇用労働者は3300万人弱)、適用拡大を行うだけで、6割以上が救われる計算になる。より正確に言えば、非正規雇用労働者の中で、少なくとも、派遣社員120万人、契約社員290万人、パート940万人については、大半が救われるものと思われる(残りはアルバイト400万人、嘱託その他200万人など)。


 このような形で、セーフティネットの裾野が広がれば、安心して労働の流動化も図れよう。以前にも述べたことがあるが、世界でも高齢化社会の先頭に立つわが国においては、まず健康寿命を伸ばすために、定年を廃止する(働くことが健康寿命の延伸にはベストであると多くの医者が指摘している)。つまり、アングロ・サクソン国家のように年齢フリーの労働慣習を導入する。


 そうなると企業は自ずと、年功序列賃金から同一労働・同一賃金へと移行せざるを得ない。その一方で、労働の流動化と被用者保険の適用拡大がなされているので、企業は労働力の需給の調整が自由に行える。中長期的に見れば、企業のメリットも大きく、また労働者の側に立っても、ライフワークバランスにあった労働の選択肢が拡がるというメリットがある。


 以上の政策パッケージが、雇用格差を解決する王道だと考えるがどうか。


■教育格差については子どもの貧困から着手を


 資産格差、雇用格差の次に市民の関心が高いのは、おそらく教育格差の問題であろう。近代の社会では、子どもの教育のレベルとその子どもの生涯所得はほぼ比例する。たとえ義務教育が無償であっても、付随して子どもを育てるためにはさまざまな費用がかかるのだ。


 2012年のわが国の子どもの貧困率は、過去最悪の16.3%となったが、これは実に子どもの6人に1人が貧困に喘いでいることを意味する。特に世帯の1割弱を占めるシングルペアレントの世帯では実に約6割の子どもが貧困に喘いでいるという。子どもの貧困は、子どもの将来の幸せな人生の可能性の幅を狭めるだけではなく、(そうした子どもは生涯所得も低くなるので)社会全体のセーフティネットのコストも嵩むことになり、社会にとって2重の損失となることを忘れてはならない。


 子どもの貧困については、どのような世帯であれ、安心して義務教育を受けられるレベルまで給付を増やすなど、早急に手を打つ必要があろう。子どもは私たちの未来である。世界第3の経済大国が、私たちの未来の6分の1を貧困のままに放置しておいて、未来が良くなるわけがない。


 次に、義務教育を終えた後の高等教育についてはどうするか。公立学校(大学)の無償化がやはり本筋だと考えるが、若者の学習意欲を高めるためには、何がしかのインセンティブも必要であろう。


 わが国の銀行は貸出先がなくて困っているのだから、大々的に無担保の教育ローンを始めてはどうか。そして、政策パッケージとしては、採用は通年採用とし、学校を卒業してから、企業は成績表を重視して採用を行うという習慣を定着させる。国は、成績優秀者に対して教育ローンを代位弁済することで報いることにする。


 もちろんこの仕組みは、社会人がローンを組んで大学院に進学する場合にも適用されるものとする。そうすれば、学生は元を取るために必死に勉学に励むようになるのではないか。また、ローンの返済を考えれば、安易な進学にも自ずと歯止めがかかることになり、神の見えざる手が働くことになる。なお、奨学金も、もちろん増やすべきであるが、その財源については、冒頭で述べた富裕層の贈与を充てることが望ましいと考える。


(文中、意見に係る部分は、筆者の個人的見解である)


 

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