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アメリカ訪米中の安倍晋三首相(「首相官邸HP」より)
鉄道輸出戦争で日本窮地?また中国が異常安値で日本を脅かす 「過剰な技術」がアダか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150505-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 5月5日(火)6時0分配信
アメリカ訪米中に西海岸を訪問した安倍晋三首相は、カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事に日本の新幹線技術を売り込んだ。運転のシミュレーターまで現地に持ち込んで知事に実体験させる熱の入れようである。同州はサンフランシスコ-ロサンゼルス間840kmを約3時間で結ぶ高速鉄道の整備を計画しており、東日本旅客鉄道(JR東日本)や川崎重工業などの連合体が受注を狙っている。このプロジェクトには中国や欧州勢も関心を強めており、安倍首相は訪米を絶好のチャンスととらえ、トップセールスで日本の技術を一気に売り込もうというのが狙いだった。
一方、東海岸では、東海道新幹線を運営するJR東海が、ワシントンからニューヨークを経てボストンに至る「北東回廊」をリニアで結ぼうという壮大な目標を掲げている。これも前々から安倍首相が直接、オバマ米大統領に提案したり、米国の要人を山梨県の実験線に招いたりするなど、長期的な視野に立って戦略を練っている。
なぜ、アメリカか。その理由は、同国で実績をつくれば「ショーケース」となって世界が注目し、日本の高速鉄道技術の世界展開への道が開かれるからである。長期政権となりつつある安倍政権には、米国と強固な同盟関係を確認し、米国内で日本を再評価する機運が出てきたタイミングをとらえて、日本の優れた技術を認識してもらいたいという願いもある。
●高速鉄道の話題にわく国内
日本国内でも最近、高速鉄道の大きな話題が続いている。昨年秋の東海道新幹線50周年、リニア中央新幹線の着工、そして3月14日の北陸新幹線の開業などである。これまで東京から物理的にも心理的にも遠かった金沢や富山に3時間足らずで行けるようになった。例えば東京から金沢へは最速で2時間28分で行け、以前と比べると隔世の感がある。これだけ移動時間が縮まると、観光客やビジネス客の往来が一気に増え、経済への波及効果は非常に大きいといえる。
このように、地域に大きなメリットをもたらす高速鉄道は、まさに日本の「お家芸」である。正確で安全に運行し大量輸送が可能で、さらに省エネルギー効果も優れている。安倍晋三内閣は高速鉄道技術の海外への輸出を政府の成長戦略の一つと位置づけ、安倍首相自身が外遊する先々でトップセールスを行って日本の鉄道技術を売り込んでいる。
世界には高速鉄道の導入計画を立てているところも多く、潜在的な需要は大きい。日本の国土交通省がまとめた資料によると、世界で高速鉄道の整備を計画している国・地域は、アジア・オセアニアでは、台湾、ベトナム、タイ、オーストラリア、インド、インドネシア、ミャンマー、マレーシア、欧米は英国、スウェーデン、そしてアメリカ、ブラジルなど世界各地に広がっている。世界的に共通する都市化の流れにどう対応するかという問題や、環境対策など共通した課題も多く、高速鉄道にそうした問題の解決のヒントを見いだしたいと考えているからである。
こうした国・地域を狙って、日本は積極的な売り込みをかけている。日本がこれまでで最も成功した事例は台湾新幹線であり、日本の新幹線技術が海外で初めて採用された。車両やホームの造り方、10分足らずで社内清掃を完了するクリーニング・チームなど、乗客へのサービス手法に至るまで日本をモデルにしている。日本政府は台湾に続く新たな成功事例をつくりたいと、国交省が躍起になっている。
●中国勢の躍進
しかし諸外国、特に欧米勢や中国勢との競争が激しく、なかなか簡単な話ではない。これまでの日本のライバルはフランスのアルストムやドイツのシーメンス、カナダのボンバルディアなど主に欧米勢だったが、最近は中国勢の躍進が目立ち、無視できない存在になっている。中国勢は都市交通での車両需要などにも手を伸ばしており、昨年秋、アメリカ・ボストンの地下鉄車両を、中国メーカーが競合相手と比べてはるかに安い受注額で落札して、世界の関係者を驚かせた。当然、前述のカリフォルニアの高速鉄道計画も虎視眈々と狙っている。
だが、高速鉄道の建設は膨大な費用と時間がかかるため、相手先の政治的事情や経済環境にも大きく左右される。いったん決まって動き始めていた計画が急にキャンセルされたり、大きな仕様変更を余儀なくされたりすることも頻繁に起きかねない。また、日本が提供する高度な技術水準は相手国の求める水準に合わず、「ニーズに比べてオーバースペック」として逆に敬遠される場合もある。
相手先の事情に合わせてどう売り込みをかけ、着実に利益を上げていくか。高い交渉能力や戦略が、政府と民間の双方に求められている。
(文=中原宏実/経済ジャーナリスト)
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