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中小企業の底力:大企業は“量の力”、中小企業は“質の力”
http://www.asyura2.com/15/hasan96/msg/153.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 5 月 04 日 18:33:56: Mo7ApAlflbQ6s
 


NHK総合TV放送
2015年04月24日 (金) 
視点・論点 「中小企業の底力」

帝京大学教授 黒崎誠

 日本経済の中で中小企業は、極めて重要な存在です。その一方、日本の中小企業のつくる部品や部材が、無かったら世界経済の活動が止まりかねないとされるほど大きな役割をはたしています。そこで今日は、世界に冠たる日本の中小企業の戦略と技術力についてお話をします。

日本には386万4千の企業があります。この内、大企業は1万1千社、全体の僅か0・3%に過ぎません。99.7%、385万3千は中小企業です。従業員数でも大企業が1397万人、中小企業は3217万人と約70%を占めます。付加価値額も大企業の125兆1千億円。中小企業147兆2千億円と大企業を上回ります。中小企業が付加価値額の約55%を占めるという産業構造は、長年続いています。「中小企業が日本経済を支えている」と言われますが、「中小企業は日本経済の中核的な存在である」と言っても過言ではありません。

その一方で今、日本の中小企業は大きな問題をかかえています。次の表は、1999年から2012年までの中小企業数を示したものです。

 

統計が途中で変わったため、多少の相違はありますが、はっきりすることは1999年に484万もあった中小企業が、2012年には385万と13年間で100万近くも減っていることです。毎年8万近い中小企業が、廃業や解散していることになります。中心市街地の衰退による商店街のシャッター通り化、親会社と共に海外へ生産拠点を移したり、国内に残ったものの海外からの安い製品との競争に敗れて転業、廃業に追い込まれるといった実態があります。

 このように中小企業を巡る環境は、厳しいのですが日本の中小企業の強さは、小さな町工場と言われる企業にも関わらず世界でその会社しかつくれないオンリーワンの製品、オンリーワンではないが世界で圧倒的なシェアをもっている。また、世界トップの優れた技術を持つ企業が少なくないことです。こうした力で日本の産業、経済を支える大切な役目を果たしています。それは匠の技を活かす、ニッチ市場を自ら作り上げる、そして超先端技術の開発に成功して世界をリードする等といった底力を持っているからです。

日本の中小企業の底力を日本だけでなく世界が知ったのは、東日本大震災がきっかけです。地震の被害で東北や北関東の町工場の幾つもが、操業停止に追い込まれました。するとトヨタ、ホンダといった日本の自動車企業が、部品の入手が困難になり操業停止寸前や操業を短縮する騒ぎとなったことは記憶に新しいと思います。東北や北関東の町工場のような中小企業の部品が無いと日本が、世界に誇る自動車産業さえ動かなくなるのです。つくっている製品は、小さな部品ですが他では生産できない優秀な中小企業が東北や北関東だけでもたくさんあることの証明とも言えます。

 産業、経済を支えるもう一つの例が新幹線です。日本の新幹線は、時速300キロ以上の猛スピードで走ることと数分単位の過密ダイヤにも関わらず開業以来大きな事故が無く、世界で驚嘆の声が上がるほどの高い技術を誇っています。東日本大震災の発生時に東北新幹線は27本が、営業運転の猛スピードで走行中でした。しかし、地震感知システムにより揺れる前にブレーキがかかり、一人の負傷者もいませんでした。この地震感知システムで使われる電気部品の抵抗器は東北の中小企業が生産したものです。また、新幹線の足ともいえる車輪は、1000分の1ミリの精度でつくられます。車輪をつくるのは大手鉄鋼メーカーですが、車輪をつくる工作機械は従業員140人ほどの中小企業がつくったものです。

 中小企業の得意な分野は匠の技・技術とも言われます。ドイツのゾーリンゲンの刃物といえば世界トップブランドとして有名です。美容師や理容師が使うハサミをつくる東京・本郷にある従業員30人余りの会社は、ゾーリンゲンの刃物会社から持ち込まれた提携話を「わが社のハサミの方が切れ味、使い勝手などどれを比べても優れている」として丁重に断りました。世界の女性の髪型だけなく生活スタイルまで変化させたと、されるイギリスの天才的美容師、ヴィダル・サスーンが高く評価したことで一躍有名になりました。今では世界的なブランドとして世界各国の美容師、理容師さんに使われ、「ソニーとお前の会社はどちらが大きいのか」と聞かれたというエピソードもあります。

新潟県三条市のニッパーの会社は、ドイツ企業との共同開発により技術力の強化に成功し、世界各国の電子機器の製造現場で、「この会社のニッパーでなくては駄目」とされるほどの評価を得ています。同社の製品は、単に切れるだけでなく切れ味が他のメーカーと全く異なるそうです。この会社の社長さんは「これだけの切れ味を持つニッパーをつくれるのは世界でわが社だけ」と言い切ります。もはや名人芸の世界かもしれません。

この両者に共通しているのは今でも匠の技を持つ職人芸でつくっていることです。日本の中小企業が得意とする匠の技によるものづくりの伝統は、今でも立派に生き残っているのです。

中小企業の生き残る道は、ニッチ市場ともいわれます。秩父市の企業は、半導体の生産に欠かせないフォトマスクのリサイクル研磨で世界シェア60%とされるトップメーカーです。フォトマスクの研磨でも大手が入り込みづらいリサイクル研磨というニッチ市場に絞り込んで技術を磨き上げたことが成功の秘密です。立川市の「機械式精密位置決めスイッチ」を創る会社は、世界シェア70%のオンリーワン企業に近い会社です。エレベーターが数ミリの狂いも無くピタリと止まるのは同社のスイッチのおかげです。創業者は「研究者が本当に報われる会社」との思いで、この会社を設立しました。従来の光や電波を利用したものでなく、機械式のニッチな市場を開拓し世界トップに躍り出たのです。これを見ているとニッチ市場で中小企業が、生き残っているのでなく中小企業自らが、ニッチ市場をつくりあげていることが分かります。

日本は、21世紀をリードする産業とされるナノテクノロジーで世界トップ水準とされますが、日本の強さは中小企業でもナノテクの世界でトップの技術を持つ企業が少なくないことです。ナノテクを活かして電子ビーム加工装置などの超ハイテク機器の製造会社は、従業員100人足らず。しかし、世界広しといえども同社しかつくれないものが多くを占めます。同社の技術によってカメラが小型化し、ぶれたり、ピンボケしなくなりました。東北には100万分の1ミリ単位で多くの材料を磨き上げる企業があり、ここの会社の製品は「はやぶさ2」にも使われています。その他、リニアモーターの実験機器をつくった町工場や世界トップのナノテク機器をつくる小さな会社はたくさんあります。中小企業の育成に世界各国は、必死になっています。中小企業の先進国とされる日本には、世界をリードする中小企業が数多くあり、これが日本だけでなく世界の産業を支えています。このような中小企業をさらに発展させることが日本経済の再生、活性化につながるのです。


http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/215520.html


 

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コメント
 
01. 2015年5月04日 22:05:11 : PHkuSka9vI
TPP 質の力を ぶち壊し

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