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「変調」米景気、NY5番街を歩いて見えた実相[日経新聞]
2015/5/2 5:30
米国の景気がすこしおかしい。経済規模のざっと7割を占める個人消費の回復が鈍り、景気全体に影を落としつつある。賃金の伸びも相変わらず緩慢で、消費者の財布のひもは緩まない。欧州、日本を尻目に順調な回復を続けるとされてきた米景気はいわば世界経済のけん引役。その変調の余波は米国内にとどまらない。4月下旬の昼下がり、米ニューヨーク・マンハッタンの代表的なショッピング街、5番街周辺を歩いてみた。
■ティファニー本店、客まばら ドル高で「中国人が急減」
「中国からお越しですか? 時計は贈答品にもってこいですよ」。最初に入ったのはセントラルパーク近く、57丁目の一等地にある米宝飾品の老舗ティファニーの本店。店先で記念写真を撮る観光客は多いが、店内の客はまばらだ。ショーケースを眺めているとウオッチ・スペシャリストのキャメロンさんがすぐに声をかけてきた。
しばし雑談の後、最近の販売事情を尋ねると「中国のお客が昨年後半から急に減ったうえ、年明けからは米国人観光客もいまひとつ」と表情を曇らす。確かに平日とはいえ、店頭の様子は1年ほど前とは様変わりだ。ティファニーの直近の四半期決算 は最終黒字を確保したものの売上高は前年同期より減った。昨年後半以降のドル高で米国外からの旅行者の購入が大きく鈍ったのが一因。中国人客に関しては、習近平政権が進める倹約令も少なからず影響しているだろう。世界経済の不透明感やドル高は、米製造業の輸出のみならず消費の現場にも及んでいるようだ。
5番街を南へ数ブロック下ると2011年10月に開業した「ユニクロ」がある。グローバル旗艦店 だけあって巨大な吹き抜けを配した広い店内に客は多く、買い物の勢いもいい。「冬用の下着はどこにあるの?」。機能性下着の評判は米国でも上々のようで、複数のサイズや色が品切れしていた。金融の中心、ウォール街で働く息子に会いに来たというネバダ州の女性、モーガンさんは「息子に、と思ったけど私の分も買うことにした」とうれしそうだ。品質に定評があり、かつ単価が張らないものには消費者の手は伸びやすい。
米商務省が発表した3月の小売売上高をみると、服飾品販売は前年同月比2.7%の増加。自動車(5.2%増)などとともに堅調だったが、一方で電化製品や百貨店販売はマイナスに沈んだ。小売売上高全体も1.3%増とほぼ5年半ぶりの低い伸びにとどまった。車社会の米国で必需品といえる自動車は別にして、ぜいたく品や不要不急なものへの支出を抑える「消費のまだら模様」がみてとれる。原油安で高まったはずの購買力が、なかなかはっきりと消費の現場へにじみ出てこない。
■伸びぬ賃金、消費にまだら模様
「いまの生活を続けるだけで手いっぱい」。5番街を西に少し外れた場所にある大手ディスカウントストア 「TJマックス」の販売員、ティムさんは苦しい家計のやりくりを打ち明ける。運営会社のTJXはこのほど最低時給を9ドル(約1070円)へ引き上げると発表した。ウォルマート・ストアーズやターゲット、マクドナルドの直営店など小売りや外食チェーンでの賃上げが相次いで話題になったが、働く人の生活実感は変わっていないという。「地下鉄は(3月から)一気に10%も値上げするし、秋には賃貸アパートの契約更新がある。無駄遣いする余地なんてない」(ティムさん)
TJマックスは、メーカーや百貨店から型遅れのブランド衣料や過剰在庫品を買い取って格安で販売する業態で売り上げを伸ばしてきた。店を訪れる客も、安くて質のいい「お値打ち品」を求めて慎重に選んでいく。
ダウ工業株30種平均やナスダック 総合株価指数が相次ぎ過去最高値を更新し、市場の観点からは一見威勢が良さそうな米国。だが、株高で潤っている家計は一部に限られる。個人消費、ひいては経済全体の安定的拡大には、労働者の月々の賃金上昇が欠かせない。
個別企業で賃上げの動きは出てきたが、点が線につながるには時間がかかりそうだ。3月の勤め人一人あたりの平均時給は前年同月比2.1%増の24ドル余り。10年以降、伸び率は2%前後を行ったり来たりで、08年のように3%台に乗せる兆しは少ない。米連邦準備理事会(FRB)の地区連銀経済報告によると、賃上げを通じて人材獲得が過熱しているのは「IT(情報技術)など一部の専門職」で、賃金全体の底上げは「緩やか」にとどまる。主な景気指標でほぼ唯一安定していた雇用統計も、3月は非農業部門雇用者の増加数が12万人余りと1年3カ月ぶりの低水準となり市場関係者を慌てさせた。
■1年ぶり低成長、利上げの行方は
4月29日発表の1〜3月期の米国内総生産 (GDP)は物価変動の影響を差し引いた実質の年率で前期比0.2%増と、1年ぶりの低い伸びにとどまった。3月分までの景気指標に不調が目立ったのは寒波など季節的な特殊要因が理由というのがこれまでの見方だった。だが、最近では「4〜6月期のGDPの回復の勢いはこれまでの想定より緩やかになる」(JPモルガン・チェースのエコノミスト、マイケル・フェローリ氏)といった見方が増えている。好調だった企業収益も、ドル高の影響が売上高の減少という形でじわじわ広がっている。
FRBは主要国・地域の先頭にたって「年内利上げ」の旗を掲げ続けるが、市場では6月はもとより「9月すら難しくなりそうだ」との観測が聞かれ始めた。「まだら」「足踏み」が目立つ米景気が夏までに順調な回復基調を取り戻せるかどうか。5番街のヒト・モノ・カネの動きは世界経済や金融市場にも直結する。
〔NQNニューヨーク=野見山祐史〕
http://www.nikkei.com/markets/features/54.aspx?g=DGXMZO8635228001052015000000&n_cid=DSTPCS007
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