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2015年の全人代では成長率目標が7%に引き下げられた(写真:AP/アフロ)
中国のリスクは「破壊」と「創造」の空白期 エコノミストの肖敏捷氏に聞く
http://toyokeizai.net/articles/-/68646
2015年05月03日 大崎 明子 :ニュース編集部長 東洋経済
中国の景気減速が懸念されている。一方、「一帯一路」構想やAIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立など新たなプロジェクトが浮上し、国際社会から注目されている。中国の現状について、SMBC日興証券のシニアエコノミスト・肖敏捷氏に聞いた。
――2014年に続き、2015年も中国の成長率目標は引き下げられ、7%を目指すとしている。中国経済の現状をどうみるか。
1970年代末から続いてきた高度成長がようやく終焉を迎え、今後、中成長へ移行しようとする転換期にあるのが中国経済の現状。もっと分かりやすく言えば、上り坂から下り坂へ差し掛かろうとしている。成長率至上主義から解放された安ど感がある一方、下り坂はほとんど経験したことがないので、景気減速に対する不安のほうが強いかもしれない。
また、雇用や社会保障などセイフティネットの必要性は、高成長時代にそれほど高くなかったが、今はそれがないと痛みを伴う改革は着手できない。気持ちのほうは、改革を通じて持続成長を目指そうとしているが、やはりさまざまな問題を解決するため、高成長に依存しようとする慣性が体に残っている。
■スピードは「破壊」のほうが「創造」よりも速い
――今年、7%成長は可能なのか。
2015年1〜3月期の実質GDP成長率は年率で前年同期比7%増と政府の目標圏に踏み止まったものの、固定資本形成や外需など成長の中身がかなり厳しく、このままでは、年間の成長率目標達成は難しい。全国人民代表大会(3月)以降の政策対応をみると、不動産市場の救済策や追加的な金融緩和など、景気刺激策が次々と打ち出されたのはその危機感の表れだろう。
一方、「新常態」に向けて変革し始めた中国経済の現状を表すキーワードは「破壊」と「創造」だと考えている。大規模なインフラ投資、不動産開発投資、設備投資など投資依存型の高成長パターンを破壊し、消費主導で技術革新重視の持続成長といった新たな成長パターンを創造していくのが、中国の政策担当者が目指している方向性であると見ている。
肖敏捷(しょう・びんしょう)●SMBC日興証券 中国担当シニアエコノミスト。1986年中国武漢大学外国語学部卒業、88年に文部省(当時)国費留学生として来日し、福島大学大学院修了、筑波大学大学院博士課程単位修了退学、大和総研や資産運用会社を経て2013年から現職。著書に『人気中国人エコノミストによる中国経済事情』(日本経済新聞出版社、2010年)など(撮影:今井康一)
問題は、「創造」より「破壊」のほうが先行しがちな点だ。例えば、過去数年間、不動産バブルを抑制する政策が実施されてきた結果、不動産投資が冷え込み、経済成長をけん引してきた固定資産投資の減速ぶりが目立っている。
これに対し、行政から市場への転換とか、民間企業の育成とか、経済成長の中身から牽引役まで新しい中国経済を構築するには相当時間がかかるだろう。
そうすると、中国経済が直面しているリスクは、「破壊」と「創造」の時間差から生じる「空白期」だと考えられる。例えば、固定資産投資や雇用創出などの面では、地方政府は中国経済の主役だったが、資金調達から許認可権まで様々な制限を加えられてきた結果、地方経済の委縮が進んでいる。また、汚職腐敗の摘発強化で数多くの政府幹部や国有企業の経営者が失脚し、現場では責任者不在や人材不足といった空白が生じている。
■海外展開への活路と自信
しかし、この「空白期」への対応を怠れば改革にも影響が出るため、景気刺激にしろ、規制緩和にしろ、中央政府がせっかく様々な対策を打ち出してはいるが、現場まで届かずに空回りしているケースは少なくない。
最近、地方政府の債務問題を解決するため、借換債の発行を認めたり、鉄道などインフラプロジェクトの建設を次々と許認可したりすることによって、この「空白期」による経済や社会への影響を最小限に食い止めるため、中央政府は地方政府に救済の手を差し伸べようとしている。当分、「破壊」と「創造」の間を行き来するのは現実的な対応ではないか。
――「一帯一路」構想やAIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立は国際社会で大きな話題となりました。
国内景気が下り坂にさしかかろうとしているが、高成長時代に築き上げた巨大な生産能力をどう調整するのか、淘汰より活用する方法がないのか、いろいろな検討をした結果、海外に活路を見つけるのが一つの選択肢として浮上してくるのは当然のことであろう。また、巨額な外貨準備も抱えているため、資金面でも技術面でも海外展開に対するそれなりの自信ができたかもしれない。
ただし、これはあくまでも供給サイドの話にすぎない。進出先、つまり需要側から見れば果たして中国の資金や技術に対してどれくらいの需要があるのかを冷静に考える必要がある。また、内政事情など様々な困難を抱えているこの地域でのビジネス展開について、リスクコントロールができるのか、試練はこれからだろう。
いうまでもなく、国際機関を運営する経験がほとんどない中国にとっては、想定以上の国や地域が参加するAIIBをどう運営するのか、経済効果はともかく、国際秩序などいろいろ勉強する良い機会となるのは確かであろう。
■楽観でも悲観でもなく、静観
――日本企業が最近は、あまり中国進出に積極的ではありません。
転換期に差し掛かっている中国のビジネス環境や政治情勢の不透明性を懸念している経営者は依然少なくないようだ。評論家やエコノミストが何を言おうが、ビジネス環境の変化にもっとも敏感なのは、やはり第一線で戦っている企業の経営者であろう。だとすると、楽観でもなく、悲観でもなく、当分、静観したほうがいいかもしれない。
ここに来て、日中関係が改善の兆しを見せ始めるに加え、来日中国人観光客の急増や中国株ブームの拡大など、明るい材料が徐々に増えていることから、現場では中国市場に対して関心が高まりつつあるのが実感だ。
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