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2014年のハロウィンパーティ。今では社員もその家族も参加して和気あいあいとしたイベントが開催できているが…。ほんの3年前まで、社員たちの不満で溢れていました
定時退社だけで社員は幸せになれない、という現実
http://diamond.jp/articles/-/70856
2015年5月1日 岩崎裕美子 [株式会社ランクアップ 代表取締役] ダイヤモンド・オンライン
私たちの会社ランクアップは、残業がほとんどなく、ほぼみんなが17時に帰れます。しかも、業績は9年連続右肩上がり。そう言うと、みなさんにうらやましがられます。
でも、実態は最悪だったんです。前回ご紹介したとおり、社員は社長である私や会社への愚痴と不満が多く、ストレスでいっぱい。そのあげく体調不良で倒れる社員が現れるほど最悪な環境でした。
残業がなくて早く帰れても社員は幸せじゃないんです。
■企業サーベイの結果はなんと20点!「仕事を楽しみにしている」社員は0%
この暗い時期真っ只中だった2012年に、私と取締役の日高は、働きがいのある会社を調査する「GREAT PLACE TO WORK」という企業サーベイを受けました。
企業サーベイとは、社員全員が会社や経営者に対するアンケートに答えるというもので、経営者にとっては、社員全員から会社を採点されるという、恐ろしい通信簿なのです(ちなみに、直近のこの調査の1位はグーグルさんです)。
この企業サーベイを受けた理由は、もちろん社員が見ている会社の本当の姿を知りたかったからでした。
私たちの調査結果は、想像以上のひどさでした。総合点数はなんと100点満点中20点。しかも一般社員からの回答は想像を絶するものでした。
・経営、管理層は言うこととやることが一致している(はいと答えた回答率、以下同じ) 6%
・この会社の人たちは、仕事に行くことを楽しみにしている 0%
・仕事や職場環境に関する意思決定に従業員を参画させている 11%
・この会社の管理職はえこひいきしないように心がけている 17%
・この会社の人は裏工作や他人を誹謗中傷しないように心がけている 17%
・会社のめざす方向とその実現方法が明確である 11%
この回答はほんの一例ですが、ほとんどの社員が、会社や私をまるで信用していないことがわかりました。私は、社員全員から社長失格の烙印を押されたようで本当にショックでした。私は、最低の社長であると通知されたこの紙を、当時は恥ずかしくて社員の誰にも見せることができませんでした。
■忙しさにかまけて人事評価制度もなかった
そこで、私と取締役の日高はこのままではいけない!と深く反省し、社員がイキイキと働く会社にするために、まずは、人事コンサルティング会社にかたっぱしから電話で問い合わせをしました。
すると、多くの会社がまずは、人事評価制度を導入することをすすめてきました。実は、当時の私たちの会社には、人事評価制度がなかったのです。私も日高もこの問題にはずっと前から気がついていたものの、日々の業務に追われ、制度作りを先送りにしていたのでした。
でも、いざ人事評価制度を作ろうと思うと非常に難しいものでした。最初はパッケージのような制度をそのまま当てはめようとしましたが、実際に評価をしてみると、自分たちの会社が大切にしている評価項目をちゃんと作らなければ、会社の目指す姿と評価制度が紐付かないのです。
それでは意味がないので、今度は自社のオリジナルで評価制度を作成することにしました。しかし、今度は会社の大切にしている評価項目は入れることができましたが、等級ごとの評価項目の内容があいまいすぎて評価される側の納得度が低いものになってしまい、私たちは結局、人事コンサルティング会社を3社ほど渡り歩き、もう途方に暮れていました。
そんなとき、ある会社からこんな提案を受けました。
「あなたたちは、人事評価制度を作ることよりも、まずは自分たちの考え方を社員に伝えるべきだ!」
その方は、私と日高の考え方をすり合わせ、会社の価値観として社員に伝えることが、今の私たちの会社に1番必要だと、価値観の大切さを説明してくれました。
人の価値観はその人の人生経験によって作られるので、人それぞれです。ですから、一人ひとりの価値観を無理に合わせることはできません。でも、会社としての価値観を決めれば、社員はそれが自分の価値観と違っていたとしても、会社が求める価値観を理解し行動しようとします。そして、社員に判断基準が生まれるのです。その結果、社員の誰でも同じ方向に向かって判断ができるようになるとおっしゃいました。
当時のうちの会社は、なんでも社長の私に聞かないと判断できない会社でした。社内に判断基準がなかったのです。
■ベンチャーなのに“お役所”になってた!?会社の価値観「挑戦」に驚きの声
私には自分なりの判断基準はもちろんありましたが、それを説明していないので社員からは「社長は、昨日はいいと言ったのに、今日はダメと言っている。言ってることがコロコロ変わる」とよく言われ、社員を混乱させていました。
早速私たちは、人事コンサルタントの指導のもと、私たちが何を大切な価値としているのか?を話し合いました。
二人で考え抜いて出した答えは「挑戦」でした。
私も日高も挑戦が大好き。だからこそ、二人で会社を立ち上げたんです。でもこの頃は、社内が暗いムードでしたから、私や日高が何か新しいことをしようとすると、社員から「またあの二人が何か始めたよ」という冷ややかな雰囲気が辛く、あきらめたこともたくさんありました。
運動会もそのひとつ。私は社内の暗いムードをなんとか改善したくて、社員が一体になれるイベントを考え、みんなに「運動会をしよう!」と提案したのですが、「運動会なんて絶対やだ!」「私は出席しない!」「目的がわからない」など、水面下での社員の反応が最悪で、実行しませんでした。この頃は、運動会ひとつ実施できない雰囲気だったのです。
このようにいつのまにか私たちは、この暗い雰囲気におされ、新しいことをどんどん生み出したい!という気持ちを忘れていたのです。
こうして私と日高は、意を決して、会社の価値観を「挑戦」にすると全社員の前で発表しました。
「私たちは小さなベンチャー企業です。だからこそ、お客様に選ばれ続ける企業であるためには変化しなくてはなりません。変化するには新しいことに挑戦するという行動力が絶対に必要なんです」
社員はポカンとしていました。それはそうです。うちの会社は創業からずっと業績は右肩上がりの超安定企業でしたから、そのころには、もういわゆる“お役所”のような働き方になっていたのです。
安定を好み、変化を嫌う風土だったので、社員の反応はすさまじいものでした。
「うちの会社ってベンチャーだったの?」
「挑戦?挑戦って何?新しいことをしなくちゃいけないの?」
という感じで社内がまたざわつきました。しかも、私も日高も自分たちが挑戦が好きだなんて今まで一度も社員に話したことがなかったのですから、社員も本当に驚いたんだと思います。
でも、私も日高も今回ばかりは本気でした。しつこく朝礼や、研修で毎回、挑戦を話したり、社員全員に挑戦目標を作ってもらったりと、社員に「挑戦」を浸透させようと必死でした。
■価値観の共有をしたことで社員に判断を任せられるように
この時、私と日高が考えていたことは、たったひとつ。自分たちの価値観を発表し、それを知ってもらうこと。別に賛同されなくてもいいのです。
社員から、「ああ、この二人は挑戦が好きなんだ」と思ってもらい、「この会社にいるには挑戦しなくてはならない」という私たちの考えが浸透すればよかったのです。さすがにこの時ばかりは、考えが合わない人が出て、もしも辞めてしまう社員がいても仕方がないと腹を決めていました。
実は、今までも理念は作っていましたが、良さそうな言葉を並べてかっこつけていただけ。自分たちが本当に求める価値観を伝えていなかったのです。私も日高も本気で挑戦する会社になりたいんだということを話し続けました。すると、今回は本気なんだと社員に伝わり、だんだんと挑戦を理解し、自ら挑戦する風土が生まれました。しかも、誰ひとり退職することなく。
価値観を統一すると何がいいか。それは、誰もがブレることなく判断ができることです。ここでわかりやすい質問をしたいのですが、みなさんならどちらのサービスを採用しますか?みなさんの会社に当てはめて考えてみてください。
A 不具合は多いけれど、最新技術のサービス
B 古いけれど安定したサービス
究極の選択で、とっても迷いませんか?私たちの会社では、社員全員がAを選択します。それは私たちの会社の価値観である「挑戦」が浸透しているからです。このように社員は選択を迫られた時に、会社に価値観があると、価値観に紐付けて判断することができ、誰もがブレない判断をすることができるのです。
そして、私も社員の判断に任せることができるようになりました。価値観を発表する前までは、私は、小さなことにも首を突っ込んで、なんでも知りたい!なんでも報告して!と思っていました。それは自分が判断しなくてはならないと思っていたからです。
当時を振り返ると、社員にとても申し訳なかったと思うことがたくさんあります。たとえば、社員の考えた企画などです。せっかく社員が考えてくれたのに、私があまりにも口出しするので、その提案内容が私の企画になってしまうことがよくありました。私からすればさらに良い企画になったと思い満足なのですが、社員からしたら、もうその企画は自分の企画ではなく、社長の企画です。自分で考えたからこそ実行したかったのに、私の企画になってしまったら、ただやらされているだけ。そんなのやりがいがあるはずがありません。
でも今は社員に任せられます。それは社員が「挑戦」という価値観に基づいて企画をしているからです。そこがひもづいているからこそ、社員を心から信頼して仕事を任せることができるようになりました。
それに、その企画が失敗してもいいのです。「挑戦」という価値観に基づいて企画したのであれば、失敗してもそれは社員の経験となり成長につながります。やらされて成功するよりも、自分で考えて失敗したほうが社員は成長するのです。
■1年後、企業サーベイは80点に 「17時に帰れても社員は不幸になる」
この「挑戦」という価値観が浸透してからは、社内ではたくさんの挑戦が生まれています。まずは、新製品開発。
朝専用洗顔のモイストウォッシュゲルは、2013年9月に発売してからたった1年間で約5億円の大ヒットとなりました。
そして、昨年発売したBBリキッドバーは、たった1ヵ月で1万本を売る大ヒット。会社を支える第二の柱として売上をどんどん上げています。
他にも、大きな挑戦として会社で実行してきたことは、たくさんあります。
・人事評価制度の導入
・新卒採用の開始
・初のお客様イベントを開催
・広報部の新設
・コールセンターの移管
など、最近では社員がすっかり変化や挑戦に慣れ、いつも誰かが新しいプロジェクトを立ち上げ実行するという会社に変化したのです。
実は、あの20点だった企業サーベイを、1年後にまた実施してみました。すると、まさかの80点。あの暗かった時期があったおかげで、私たちは企業風土を変えることに成功したのです。
「17時に帰れるから、社員はみんな幸せなんだね」と言われると、実は私はイラっとします(笑)。うちの会社は17時に帰れても不幸だったのです。
昔は私も、早く帰れて福利厚生がしっかりしていたら社員は幸せと思っていました。でも、それは違いました。社員の幸せは、人から必要とされ、やりがいのある仕事ができることなんです。こんな当たり前のことに気がつき実行するまで、私は5年以上もかかったのです。
この記事を読んでいる経営者がいらしたら、きっと残業を減らしたいと思っているのではないでしょうか?でも、もしかしたら残業を減らす前に、社員の働きがいに目を向けてみては?と思います。まずは社員が生き生きと働く環境であるかどうかが、残業を減らすことよりもずっと大切なことだからです。
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