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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見
【第251回】 2015年4月30日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
ガラケー生産中止の衝撃、日本メーカーはこの失敗を糧にできるか
?先日新聞で、パナソニックなど日本の携帯端末メーカーが独自の基本ソフト(OS)を載せた従来型携帯電話、通称「ガラケー」の生産を2017年以降に中止する、というニュースを読み、「日本がかつてけん引した従来型携帯の基幹技術がその役割を終える」という記事の内容を実際に目にしたとき、その日がいずれは訪れるだろうと予想していたにもかかわらず、やはりショックに近い動揺を覚えた。
Photo:chapinasu-Fotolia.com
?確かに、私は2001年当時、中国市場に進出した日系携帯電話メーカーの動きを見て、「このままだと、中国市場でシェアを落としてしまった日系家電メーカーの二の舞を演じるだろう」と警鐘を鳴らした。
「中国市場で苦汁をのまされた日本企業の敗因の多くは消費者無視だった。漢字を使う国の市場に漢字を入力できない携帯電話を投入したことは、日系企業のおごりを象徴する好例だ」といったショック療法ともいえるレポートや記事を、当時何度も全国紙など日本のメディアに書いたものだ。
?中には、私の警告に耳を傾けてくれたメーカーもあり、一緒に中国の携帯電話市場に入り込むために作戦プランを練り、それなりに成功したこともあった。しかし、個別の製品の成功だけでは、ビジネスモデルの根本的な間違いをカバーすることはできなかった。
そして中国市場から
日本のケータイは消えた
?2004年のある日、親しくお付き合いしている日系携帯電話メーカーの関係者が、東京の神保町に近い当時の私の事務所にやってきて、深刻そうな表情で社外秘とされていた企業情報を知らせてくれた。「わが社は来年のX月までに、中国の携帯電話市場から撤退する」という内容だった。
?当時、日系携帯電話メーカーはどこも中国で苦戦していたが、この会社はその中ではむしろ善戦している方だと私は認識していた。だから、中国市場の撤退という並々ならぬ決断を聞いて、私は内心の驚きを隠さなかった。
「御社が撤退するとなると、ほかの日系携帯電話メーカーはもう中国には残れなくなると思います」と言ったら、「来年中に、たぶん日系は一社も残れなくなるだろう」と、関係者の表情は暗かった。
?どう慰めればいいのかわからないから、「中国市場にもう一度チャレンジすることは考えてはいないのですか」と、できるだけ明るい話にもっていこうと私も苦しんだ。
?だが、メーカーの関係者はやはり正直者だ。
「中国市場にもう一度チャレンジしたいが、まもなく訪れる3G時代では無理だろうと思う。4Gもおそらく難しいだろう。下手すると、5Gの時代にならないと、再進出を狙うチャンスは来ないのではないか」と言う。
?すでに撤退の話に驚いていた私は、その答えを聞いて、自分の表情まで暗くなってしまったのをはっきりと感じた。4Gも難しいなら、その間に、中国の携帯電話メーカーが成長してきて、日系企業が入る隙間はなくなり、おそらく中国の携帯電話市場に、日系企業が入る機会はもう2度と来なくなるのでは、と思ったからだ。
?日系携帯電話メーカーが中国市場からいったん撤退したあと、日系企業が作ったその空白を埋めるために、シャープが自社の携帯電話製品を果敢に中国市場に投入した。そのニュースを知った私は中国の携帯電話ショップをわざわざ覗きに行ったが、製品のラインアップから見て、大勢を挽回できるものではないと感じ、敢えて取り上げて報道しなかった。
?それ以降、私は中国市場における日系携帯電話メーカーの動きに関心を払ったことはなかった。長い間、私が使っていた携帯電話やパソコンは日系企業の提供を受けていたが、いつの間にかその提供もなくなり、逆に今では、中国系企業から提供したいと何度も打診されている。
部品分野では優位でも、
過去の敗因を謙虚に見直すべき
?やはり予想していた通り、その後中国の携帯電話市場には、中国企業が台頭した。その1社は創業からわずか5年で売上高1兆円を達成し、中国市場でサムスン電子を抜いてシェア1位となった小米科技(Xiaomi、シャオミ)だ。華為(ファーウエイ)の存在感も侮れない。こうした市場では、日本の携帯電話メーカーはもう挑戦できなくなった。
?昔、3種の神器と称される家電製品があった。そのいずれもが、日本企業が最も力をもつ商品分野だった。いまや携帯電話とパソコンは人々にとって今日の生活に欠かせないライフ・ツールとなっているが、残念ながら、そのいずれにおいても、日本企業は存在感をもっていない。その敗因はいったいどこにあるのか、ぜひ、考えてほしいものだ。
?もちろん、日系企業も過度に自信を失う必要はない。部品分野では、日本企業は影の勝者と言われるほど、まだまだ大きな存在感をもっている。しかし、慢心してはいけない。完成品分野での日本企業の失敗要因を徹底的に洗い出さないと、いまは安泰に見える部品分野における日本企業の優位も、崩れてしまう可能性がある。
http://diamond.jp/articles/-/70881
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