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介護施設の「お任せ型」「住宅型」「サ高住」、 わかりにくい差別化を整理してみると…
http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/816.html
投稿者 rei 日時 2015 年 4 月 30 日 07:04:13: tW6yLih8JvEfw
 

http://diamond.jp/articles/-/70883
【第29回】 2015年4月30日 浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
介護施設の「お任せ型」「住宅型」「サ高住」、
わかりにくい差別化を整理してみると…

Photo:milatas-Fotolia.com
 有料老人ホームと言えば、入居する際に高額な一時金を支払わねばならない高齢者施設と見られている。ところが、最近は状況が一変しつつある。一時金が不要なホームが増えてきた。そのサービスも、介護サービスや食事提供などすべての日常生活を職員がみてくれているが、実はサービスごとに支払いが必要なところが多い。

 従来の「お任せ型」とは違って、入居者がサービスやその提供事業者を選べる。それが建前となっている有料老人ホームが増えて来たのである。入居者にとっては、従来型の「お任せ型」と同じ事業会社が同じような建物で運営しているため判別が難しい。だが、パンフレットや利用料金表をよくよく読むと、確かにそのようなことが書かれている。一体どうなっているのか。

 一時金とは、家賃の前払いなので制度上は前払い金と呼ばれる。厚労省の最近の調査によると、全国9750の有料老人ホームのうちで前払い金(一時金)を徴収しているのは2160件。全体の22.2%に過ぎない。2006年4月以降に開設した最近の有料老人ホームに絞ってみると、前払い金が必要なのは15.9%とさらに下がる。7930件の中で1260件にとどまっているからだ。

 2006年3月以前に開設した有料老人ホームでは、1820件のうちで900件が前払い金を受け取っている。49.5%と高率に上る。


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 さらに遡り、介護保険施行前の2000年3月以前に開設した有料老人ホームでは、90%以上が前払い金を徴収していたと思われる。その当時の印象が今でも強く残っている。そのため、高額な前払い金を支払うことができる富裕層が入居するところと言うイメージに捕らわれがちだ。ところが実態は違う。

 この10年ほどの間に建設、開設された有料老人ホームの大半、85%は前払い金制度がないのである。なぜ、変わったのか。

「お任せ型」ではない「住宅型」が急増中

 前払いとは、家賃の前払いのこと。将来の家賃をなぜ入居時に払わねばならないのか、という疑問はかねてからあった。その疑問に応えようと事業者団体は説明を繰り返してきたが、やはり納得がいかない人は多い。有料老人ホームが増え、競争が激しくなると、顧客の獲得のためにはやはり説明し難い仕組みは消えて行かざるを得ない。

 加えて別の大きな要因が後押しした。従来の「お任せ型」ではない別の「選択型」の有料老人ホームが急激に台頭してきた。制度上で区分けすると、お任せ型は「介護付き有料老人ホーム」と表示されており、介護保険の「特定施設入居者生活介護」として介護報酬を受けているものを指す。これに対して、選択型は「住宅型有料老人ホーム」である。住宅型の名前通り、普通の住宅として扱われる。介護などサービスのないマンションやアパートと同じだ。つまり自宅同様である。

 介護付き有料老人ホームの事業者は、介護保険から得られる報酬と入居者からさらに別途サービス費を得て入浴や食事、トイレ、起床就寝などすべての介護と生活のサービスを提供する。介護施設の特別養護老人ホーム(特養)と異なるのは、この別途収入があるところだ。だから毎月の費用がほぼ20万円以上になる。サービスのすべては事業者の職員が行う。入居者からみると、決められた時間に決められた食事や入浴サービスを受け、起床や就寝、レクリエーションなど一日のスケジュールも決められている。だから「お任せ型」なのである。

 ところが、住宅型有料老人ホームは違う。自宅と同じような「住宅」であるから、介護サービスはケアマネジャーと相談して決めるケアプランに基づいて、訪問介護や通所介護(デイサービス)などの介護保険サービスを受ける。そのサービス事業者を自由に選択できる。従って「選択型」と言えるだろう。実はこれは、「建前」なのだが。

 では、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの定員数の推移をみてみよう。


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 2014年度の最新の厚労省調査では介護付きは21万5113人、住宅型は17万2040人。比率は56%と44%である。その3年前の2011年度に遡ると、介護付きが17万7490人で、住宅型は8万7182人。この3年間の間で、介護付きが21%しか増えていないのに、住宅型はほぼ2倍も伸びている。この急増している住宅型有料老人ホームの大半が、前払い金を徴収していない。そのために、前払い金なしの有料老人ホームが広がっているのである。そこで、次の疑問が生じる。

 介護付きよりも、住宅型がなぜこれほど大きく伸びているのか。答えは2つある。

新設規制で「やむなく住宅型に」が増加

 まず、第1に自治体からの数量規制である。住宅型の事業者に聞くと、「介護付きを開設するつもりで準備し、設計していたが、自治体の新設規制でやむなく住宅型にならざるを得なかった」というものだ。介護付きの施設基準は、日中の職員配置が3対1など特養並みの態勢を求められるが、職員と面積基準をしっかりクリアすれば、集団管理の包括方式なのでケアそのものはあまり面倒な手続きは要らない。とにかく基準さえ守れば、日々の運営は難しくない。

 従って、中堅から大手のチェーン展開を図る企業は介護付きを運営したがる。ところが、介護保険制度は准公設市場。国民の支払う保険料と税金で成り立っており、国や都道府県が管理し、直接の保険者は市町村自治体である。施設やサービスがどんどん広がれば、住民の払う保険料も税も上昇する。保険料は税並みの強制徴収だから、中年層や健康な老人にはその負担が強く感じられる。税の投入にも財務省が目を光らしている。市町村は出来るだけ保険料を伸びを平均レベルにとどめたい。抑止力が働く。

 そこで、3年ごとに策定する介護保険計画でサービスの数量を決め、その枠内に抑えようとする。だが、中重度者へのサービスには応えねばならいため、比較的軽度者の入居が多い特定施設(介護付き有料老人ホーム)の新設規制に走ってしまう。特養の事業者が自治体の「親類」の社会福祉法人で、有料ホームは「福祉の異分子」の企業という事情もある。

 例えば「特定施設は3年間で150人の新規利用者」と介護保険計画で決めてしまえば、それ以上の施設の開設を認めようとしない。こうした理由で、特定施設の枠外となってしまった有料老人ホームが、介護保険計画の俎上に上り難い住宅型として開設することになる。

 事業者としては、次期の介護保険計画の枠内入りを待つ間、住宅型で運営せざるを得ない。こうした経緯を抱えた住宅型が多いため、利用者を戸惑わせる事態が起きかねない。と言うのは、介護付きの計画を維持したまま開設するので、介護サービスはその事業者の職員がすべて担うところが多い。介護付きと同じようなサービス体制を採るからだ。

 住宅型は、本来、自宅と同様な住まいだから、入居者にとって在宅サービスの選択肢は自由であり、外部事業者を選べるはず。ところが、運営会社は特定施設の感覚からなかなか抜けだせない。これまでチェーン展開してきた特定施設と同じ手法で業務をこなしてしまう。

 入居者が高齢で、かつ認知症の人も多く、ほとんど決定権は家族にある。家族としては、細かいサービスとその対価にはあまり関心がなく、「事業者にお任せします。で、毎月の費用はどのくらいに」となりがち。通常の商品やサービスの売買に伴う消費者意識がほとんど伴わない。事業者の説明を鵜呑みにして、外部事業者からのサービス利用にたどり着き難い。

 それでも、家族の中にはきちんと権利意識を持つ人も現れる。「介護保険の在宅サービスと夜間の緊急サービスなど保険外サービスとの切り分けはどのようになっているのか」「事業所の職員でない外部の地域事業所のデイサービスに行きたいが」と言った疑問や要望があれば、対応を迫られる。

 そこで、「うちでは、これまで利用されているヘルパーやデイサービスを入居しても、引き続き使えます」と明言する事業所も増えている。

「たまゆら事件」も住宅型増加の契機に

 住宅型有料老人ホームが増えて来たもう一つの理由は、かの「たまゆら事件」である。2009年3月に群馬県渋川市の高齢者住宅「静養ホームたまゆら」で火災が起き、入居者16人のうち10人が亡くなった。入居者のほとんどは東京都内から自治体職員に連れられて移り住んだ生活保護受給者だった。

 都内の介護施設不足を浮き彫りにした一方で、行政の管理が行き届いていないことも露見。批判を受けて厚労省は「有料老人ホームの基準に達していなくても、まず有料ホームの届け出を出させて指導していく」ことに政策転換して、地方自治体に発破をかけた。

 そもそも有料老人ホームは老人福祉法で「10人以上の老人を住まわせて、食事の提供をしている」ことと定義されていた。2006年の改定で、「10人」が消え、サービスも家事や介護、健康管理が増え、かつ「そのうちのどれかを提供していれば」と膨らんで対象が増加した。

 そこへ、たまゆら事件後の政策転換で対象がさらに拡大する。それまでは、各都道府県が制定したガイドライン、「有料老人ホーム設置運営指導指針」によって廊下幅や専門職員の配置、個室要件、部屋面積など細かい基準が定められ、その基準を満たさなければ「類似施設」として有料老人ホームの届け出を都道府県は受理してこなかった。

「放って置いては管理できない」と厚労省は「基準外でも、まずは届けを出させよ」「改装時に基準を満たすように指導せよ」と自治体に伝える。これにより、普通の民家を活用していた高齢者住宅が次々都道府県に登録させられた。「宅老所」と名乗る「暮らしの継続性」を謳う良質なケア付き住宅もやむなく有料老人ホームの冠を頂くようになった。こうして、有料老人ホームの基準緩和で新たに土俵が広がったことで数量が増え、それはいずれも住宅型であった。


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 民家を利用した「宅老所」などの有料老人ホームは、志の高い看護師や薬剤師、あるいは介護職などが病院や大規模特養や老人保健施設のケアに疑問を抱いて独立するケースが多く、極めて零細な事業者が大半。利用者も低所得者が多く、制度の隙間からこぼれた弱者救済という色彩が強い。従って、高額な前払い金の徴収はほとんどない。

今後は「サ高住」も規制の対象?

 住宅型にはこうした2種類の施設があったが、つい最近、もう一つの似たような高齢者住宅が出現して、さらに複雑な様相を呈してきた。2011年10月から制度化された「サ−ビス付き高齢者住宅(サ高住)」である。

 全居室が18u以上でトイレと洗面所、収納の整備を義務付けられているが、法体系上は食事などのサービス提供があれば、住宅型有料老人ホームの枠内に入る。

 制度化されて3年以上経過し、18万室近くに増えて来た。国交省の「高齢者居住安定法」で作られたが、利用者からみると有料老人ホームと判別がつき難い。18uの広さでの家賃設定では、高齢者の年金収入が追い付かないため、18u未満で開設せざるを得ない地域も多い。すると、事業者は住宅型有料老人ホームとして登録する。同じ事業者のほとんど同じような集合住宅が、開設地の違いで別の法体系に組み込まれてしまう。

 しかも、入居者側から見ると、受けられる介護や生活サービスにほとんど差がない。急増してきたサ高住への風当りがこのところ強い。純粋に住宅としてスタートしたが、要介護高齢者の増大やその受け皿の特養の絶対的不足のため、介護施設としての需要は高まる一方だからだ。

 デイサービスや訪問介護事業所を建物内に組み込んだサ高住が半数を超えてきた。一体的に運営されていれば、利用者にとって有料老人ホームとさして違わない。それを「既存の介護施設と比べ基準が低い」「介護施設と紛らわしい」として国や自治体が規制に乗り出そうとしている。だが、もともともの原因は、特養不足にあり、あるいは自宅への在宅サービスの内容と量の至らなさにある。「自宅で最期まで」と掲げた政策スローガンは立派でも、足元の現状が整っていない。有料老人ホームの辿った歩みや変質の経緯を見ると、需要に追い付かない介護サービスの実情がよく分かる。  

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