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2015年4月28日 田中泰輔(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー)
円安の下落幅は相対的に小さい 16年の反転リスクを視野に
米国経済は2015年も16年も3.1%成長と堅調で、FRB(米連邦準備制度理事会)は15年末0.75%、16年末2.0%へ利上げするとみる。この間、日欧では景気は底堅いものの、金利は底這ったままだろう。この景気格差、金融政策格差を背景に「強いドル」が16〜17年まで続く。主要通貨予想のポイントは以下の通り。
【ユーロ】ECB(欧州中央銀行)の量的緩和を背景に、ユーロは下落基調。欧州債でマイナス金利が広がる一方、米国債は低いながらもプラス利回りであり、国際投資家はドル資産シフトを続けよう。対ドルは15年末1.0、16年末0.9、17年末0.85の予想。史上最安値を付ける可能性がある。
【円】対ドルで15年末125、16年末130へ。米国で利上げが進む一方、日本銀行は2%物価目標未達のまま異次元緩和を継続する。16年には本邦年金基金の外国証券投資も一服、米国では利上げ・ドル高による株価の高値波乱と大統領選挙年のドル高けん制が相まって、ドル円にピーク感が出る。
【英ポンド】目先は金融政策と総選挙次第で上下双方のリスクを注視せざるを得ない。中期的にユーロへの連れ安もあり、対ドルで値を下げそうだ。
【スイスフラン】今年初め、中銀当局が対ユーロ相場の上限を突然撤廃し、フランは大暴騰した。同ショック後、フランの流動性は十分回復していない。フランは依然割高で、中期では弱いとみる。ただし、ギリシャ問題などでリスクプレミアムが高まり、フランへの資金流入が再燃するリスクには常時留意する必要がある。
【豪ドル・NZドル・加ドル】豪(オーストラリア)ドルは、資源価格下落、対米金利差縮小から中期で弱気予想。NZ(ニュージーランド)ドルは豪ドルより堅調でも、対ドルでは弱まろう。産油国通貨の加(カナダ)ドルは、原油安の悪影響を見極めて、16年に利上げもあり得るとの見込みから売りが弱まったが、年内に対ドルで1.3台へ下落か。
これら通貨の対ドル相場の対比を上のグラフに示した。「強いドル」は大半の通貨に対して17年まで続く一方、ドル円は、16年にはいち早くピークを打つかもしれない。円の下落余地は他の通貨より小さい。円はドル以外の通貨に対してむしろ強くなる。
現在、日 本では円安・株高と共に景気も上向く好循環にある。これを年金基金の日本株・外国証券買いが後押しする。債権国通貨の円は、内外経済環境が良いときに下落し、悪いときに上昇する。2年を超える長期の投資・ビジネスに関わる場合、目先はドルの買い方を思案するにしても、その後のヘッジや売り時をどうするかが、成否を決めるより重要な鍵となる。
(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー田中泰輔)
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