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アベノミクスによって、大企業の設備投資意欲は復活しつつある。さらに「良い兆し」も見えつつある(写真:ロイター/アフロ)
アベノミクスで起きている「ある重要な変化」 「インフレ率2%達成」論議で見逃される本質
http://toyokeizai.net/articles/-/67879
2015年04月27日 村上 尚己 :アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト 東洋経済
日本銀行による量的金融緩和拡大が始まって2年が経過したが、金融市場ではその効果について、さまざまな議論が行われている。2014年以降の消費者物価の伸びが低下している中で、今後インフレ率のプラスが定着するのか、日本銀行が目指している脱デフレが実現するかについて懐疑的な見方も多い。
■脱デフレ政策で復活した大企業の設備投資意欲
最近の消費者物価の伸びの低下は、原油価格の下落や、消費増税で日本経済に急ブレーキがかかったことが大きく影響した。ただ、2014年秋口からの循環的な景気回復が始まったことで、需給ギャップの拡大が止まり物価下落圧力は徐々に和らぎつつある。
労働市場の需給の改善がサービス価格を押し上げる中で、原油安による下振れが剥落してくれば、消費者物価は、多少の時間がかかっても2%前後までインフレ率が高まる可能性は十分あると筆者は考えている。
消費者物価の伸びの低下が続く中で、実は、脱デフレが日本経済の回復を後押しするメカニズムとして底流で働いている。一つは、企業のおカネの使い方である。法人企業景気予測調査によると、利益配分についての大企業の優先順位をみると、2015年3月調査で設備投資が1位となり、2位の内部留保を上回った。1年前の調査では1位が内部留保で、2位が設備投資となっており、順番が入れ替わった。
デフレ状況が続くという経済環境では、企業は内部留保を高めることを優先させることが合理的になる。ただ、インフレが続くという正常な状況であれば、企業による内部留保を蓄積してもそれは目減りする。
一方で、インフレ率の上昇が続くという期待によって「実質金利」が低下し、それが企業の設備投資意欲を高める。2014年度に景気は減速したが、年後半からの景気持ち直しで、大企業製造業を中心に設備投資を増やす意欲は強まっているとみられる。
一方で、同調査によれば、中小企業の利益配分(おカネの使い方)の優先度をみると、いまだに内部留保を最優先と考える企業がかなり多い。大企業ほどは財務状況に余裕がないので、中小企業の中には設備投資に躊躇している企業が多いとみられる。設備投資の積極化が、企業部門全体に広がるほど状況が大きく変わったとまでは言い難い。
■銀行や中小企業の「変化の兆候」を見逃すな
それでも、中小企業の設備投資行動に影響を及ぼす、銀行の貸出行動が積極化する兆しが足元でみられる。日本銀行による銀行貸出動向アンケート調査によれば、中小企業向けの貸出態度を表す判断指数が、この4月に再び改善に転じた。
同指数は、2014年10月からやや悪化していたが、2015年4月に中小企業向けを含めて積極化方向に転じたのである。
銀行の貸出行動が中小企業向けを含めて改善していることは、量的金融緩和政策によって金利安定や株高が続く中で、銀行資産構成の変化を通じて貸出が増える、いわゆるポートフォリオリバランス効果によって景気刺激効果が強まっていることを示唆している。
また、中小企業の資金需要動向の要因をみると、「設備投資」を使い道とする資金需要が増えていることも確認されている。限界的な動きかもしれないが、大企業よりも慎重な中小企業で、設備投資を使い道とした資金需要が増え始めているとすれば、今後の景気回復の勢いとその持続性を判断するうえで重要だろう。
2015年3月調査の日銀短観においては、企業景況感の改善が足踏みとなっている。また1-3月の実質GDP成長率の伸びは小幅プラス成長程度に止まったとみられ、最近の日本の経済はあまり冴えない。
だが、企業のおカネの使い方と設備投資などの変化は、アベノミクスで始まった金融緩和強化を起点として、脱デフレという正常化のプロセスが依然続いていることを示している。
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