03. 2015年4月27日 18:39:16
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最近で言えば、欧州問題と新興国経済の低迷による需要ショックが、投資抑制(低金利)の主要な原因ではあるなhttp://jp.wsj.com/articles/SB12468361420061044368104580605492674171112 世界的供給過剰の時代 By JOSH ZUMBRUN AND CAROLYN CUI 原文(英語) 2015 年 4 月 27 日 11:36 JST 石炭シュートの積み降ろし作業(米ペンシルベニア州ピッツバーグ) Bloomberg News 世界経済では、かつてなかったほど原油、綿花、鉄鉱石などの商品(コモディティー)が溢れているばかりか、資本と労働力も有り余っている。各国当局が必死で需要喚起に努める中、こうした供給過剰はいくつもの難題をもたらしている。 ジョン・ハンコック・アセット・マネジメントのチーフエコノミスト、ミーガン・グリーン氏は「われわれが直面しているのは低成長、低インフレ、低金利の環境だ」と述べ、世界経済は今後10年かけて「これを徐々に解消していく」ことになりそうだと指摘した。 供給過剰という現状は多くの面で厄介な問題を引き起こしている。コモディティーの過剰生産は物価を押し下げ、デフレ懸念を加速させている。クレディ・スイスの推計によると、世界の富は現在、263兆ドル前後に達しており、これは2000年時点での117兆ドルの2倍余りに相当する。つまり、巨大な規模の貯蓄や資本が存在するということであり、こうした状況が金利の低下につながり、ひいては金融政策の力を弱めている。さらに、労働力が有り余っているため、賃金は抑えられている。 一方、米日欧の各国政府では、公的債務が重荷となり、成長てこ入れのための財政出動力が制限されている。その結果、中央銀行は可能な限り大量の流動性を自国経済に供給しているが、近年の一連の金融緩和は奏功しておらず、従来の成長軌道を回復できずにいる。 投資銀行業界での経験が長く、「The Age of Oversupply」(過剰供給の時代)の著者でもあるダニエル・アルパート氏はこうした現状について、「供給過剰の状態はあり得ないというのが伝統的な考え方だ」とし、「経済学はすべて不足を基本にしている」と指摘した。 ソビエト連邦の崩壊と中国の台頭により、世界の労働人口は10億人以上増えた。つまり、雇用と賃金をめぐって世界中の労働者が競合しているということだ。多くの新興国は財政黒字を計上しており、国民の貯蓄額は先進国を上回る。アルパート氏はこれが余剰資本を生み出しているとみる。 供給過剰の例は多数ある。 米有数の原油貯蔵拠点であるオクラホマ州クッシングでは、原油タンクが満杯になりつつある。米エネルギー省(EIA)が22日発表した週間石油統計によると、直近の原油在庫は4億8900万バレルと、1982年の統計開始以来の最高水準に達した。 綿花についても、世界全体でみると今季末時点で約1億1000万俵の在庫が繊維工場や政府の倉庫に眠っているとみられる。 供給過剰はサプライチェーンの下流まで及んでおり、多くの加工品も在庫過多の状態にある。 米国では2月、加工耐久財の在庫が4130億ドルに増加し、統計を発表し始めた1992年以来の最高水準となった。また中国では、自動車ディーラーが抱える在庫台数が約2年半ぶりの高水準に達している。 問題の中枢にあるのは、多くの先進国で需要が低迷する中で中国経済も減速傾向にあることだ。中国では、製綱や織物などのコモディティー集約型産業への依存からの脱皮が進む中で、原材料に対する需要が多くの品目で鈍化しており、減少に転じた品目さえある。 ウッド・マッケンジーのエコノミスト、シンシア・リム氏は「コモディティー需要の落ち込みは直観に反しているが、われわれが目にしているのは氷山の一角でしかない」と話した。 すべてのコモディティーが供給過多であるわけではない。銅、ガソリン、コーヒーなどは中国の需要が堅調で、他の市場に比べ供給が逼迫(ひっぱく)している。 生産業者は10年近く、中国の旺盛な需要についていこうと躍起だった。しかし足元では、中国の生産が減速する一方で、余剰分を吸収できる国はまだ現れていない。中国の2015年の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比で7%と、5年前の10.4%を大きく下回る見通しだ。 在庫が積み上がり続ける中、こうした景気減速は生産業者の多くにとって意表を突くものだった。 販売が滞り、多くの市場では余剰在庫の保管場所をめぐって争奪戦が繰り広げられている。その結果、コモディティー価格は軒並み下落し、多数の生産業者がつらい減産に追い込まれかねない気配だ。世界のコモディティー相場の代表的指標であるS&P GSCIコモディティーインデックスは過去12カ月で34%下落し、09年の水準に落ち込んでいる。 商品(コモディティー)コンサルタント会社CPMグループのマネジングディレクター、ジェフリー・クリスチャン氏は「こうした在庫は少なくともある程度縮小する必要がある。その時点で価格は再び上向くだろう」と述べた。 需要不足に直面する国々は、特にこれほどの低金利環境の中では、財政赤字による支出を通じた景気活性化に動くことが多い。だが、債務負担の増大を不安視する国は多い。 ジョン・ハンコックのグリーン氏の計算によると、主要国はいずれも信用危機以降に債務を増やし続けている。米国では、政府と企業、消費者の債務が2008年の17兆ドルから25兆ドルに増え、対国内総生産(GDP)比率は167%から181%に上昇している。欧州ではこの比率が180%から204%へ、中国では134%から241%に伸びているという。 政府に追加財政刺激策の余地があったとしても、それを引き出す政治的意思はほぼない。このため、中央銀行が穴埋めせざるを得なくなっている。米連邦準備制度理事会(FRB)と英中銀イングランド銀行は共に、バランスシートの対GDP比率を08年の6%前後から約25%へ拡大した。欧州中央銀行(ECB)は14%から23%へ、日本銀行は22%から約66%へ引き上げている。 平時であれば、経済を再び軌道に乗せるにはこれで十分だろう。だが、元米財務長官で現在ハーバード大学教授のローレンス・サマーズ氏をはじめとするエコノミストらは、貯蓄と投資のバランスを図るため、金利はさらに下がる必要があると主張している。「長期停滞論」と呼ばれるこの説は、潜在的な成長力の減退を意味している。 誰もがこれに同意しているわけではない。FRBのバーナンキ前議長は最近、労働市場の引き締まりが必ずやインフレにつながる完全雇用の状態に米国が向かっていると指摘した。 薄れゆく中国の影響力を埋め合わせる上では、米経済が完全雇用に近づくことが助けになるのと同様、新興国の新たな需要が支えになるかもしれない。世界第2位の人口を抱えるインドでは、エネルギーや他の商品(コモディティー)需要が急速に伸びている。 だがアナリストらは、こうした需要の拡大で中国が開けた穴をふさげるかどうか疑問視している。 最近の供給過剰問題はまた、ほぼ全ての通貨に対してドルが上昇する中、世界貿易が直面する困難な環境を浮き彫りにしている。 ブラジルやロシアなどの輸出業者は、砂糖やコーヒー、原油の生産を加速させている。自国通貨の下落を受け、ドル建てで同じ金額を稼ぐために増産を求める圧力が強まっている。 責任の一端は生産業者にもある。 商品価格が下落する環境において、生産業者は通常、市場シェアを維持しようと減産を渋る。 場合によっては、生産業者が価格下落による収入の目減りを取り戻そうと増産に踏み切り、供給過剰問題を深刻化させることもある。 バークレイズの商品アナリスト、デーン・デービス氏は「これが概して、供給過剰がさらなる価格の下落につながるフィードバック・サイクルを生み出す」と指摘した。 |