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寝台列車「ななつ星in九州」(「Wikipedia」より)
JR九州、多角化で成功美談の“まやかし” 税金免除と国の“補助金”で甚大な民業圧迫
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150426-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 4月26日(日)6時0分配信
九州旅客鉄道(JR九州)が2016年秋にも上場する。超豪華寝台列車「ななつ星in九州」で知名度は全国区になったが、本業の鉄道事業は赤字を強いられている。収益を支えるのは駅ビル、マンション、ホテル、ドラッグストア、パン製造、コンビニエンスストア、ファストフード、農業などの非鉄道事業。本業が赤字だが多角化の成功で上場する例は珍しい。
JR九州は、2015年度の事業計画を国土交通相に認可申請した。売上高に当たる営業収益は、単体で前年度計画比2.9%増の2036億円、税引き後利益は33.3%増の100億円と、いずれも過去最高を更新する見通しだ。鉄道の営業赤字は15億円改善するものの、130億円の赤字を計上する。駅ビルなどのその他の収入は5.9%増の589億円を見込む。国鉄分割・民営化の際に国から受けた経営安定基金の運用収益は、6.1%増の105億円を予定。これで増益を達成する。
これに先立ち、15年3月期の連結決算業績予想を上方修正した。連結売上高は昨年5月の予想より7億円多い3599億円、純利益は10億円多い116億円を見込む。売上高、純利益ともに、1987年のJR九州発足以来、最高となる。駅ビルの賃貸収入や分譲マンションの販売が好調だった。
JR九州は4月16日、大分駅ビルに複合大型商業施設「JRおおいたシティ」を開業した。店舗面積は10万7000平方メートルと大分県で最大。核テナントの東急ハンズをはじめ、ユニクロやH&M、無印良品、ABCマートなどが出店する。若い男女を主なターゲットにして、初年度の売上目標は200億円としている。
JR九州の駅ビル群は、流通地図を塗り替えた。九州新幹線の開通とともに開業した新しい駅ビルが、抜群の集客力を発揮したからだ。
鹿児島中央駅ビルの商業施設「アミュプラザ鹿児島」の年商は250億円。当初の計画200億円を上回る。鹿児島市の繁華街、天文館と並ぶ商業の中心地に成長した。博多駅ビルの「JR博多シティ」は11年3月の開業以来、消費不況知らずの快走を続けている。核テナントの博多阪急は、月商が一度も前年同月比割れになったことがなく、15年3月期の売上高は前期比1.3%増の410億円となった。消費増税の影響で低迷が続く福岡市の繁華街、天神地区の百貨店と明暗を分けた。この勢いで、今度は熊本駅ビルに複合商業施設「アミュプラザ熊本」を建設する。新駅に合わせて21年春の完成を目指す。大分駅の商業施設とほぼ同じ規模だ。
JR九州は、流通の主役の座を福岡、鹿児島、大分、熊本の老舗百貨店から奪うことになる。
●営業利益のほぼ全額は、駅ビル・不動産事業
JR九州は分譲マンションでも九州でトップクラスだ。「MJR」ブランドのマンションを展開、福岡地区を中心に九州で78棟、5065戸の販売実績を持つ。
14年2月、福岡市中央区の九州大学教養部六本松キャンパス跡地北側の2万平方メートルを117億円で落札した。東街区には複合商業施設を、西街区には分譲マンション「MJR六本松」を建設する。地上14階建てで351戸。15年5月下旬に販売を開始する。
不動産投資にも積極的だ。昨年春には都内のオフィスビルに投資し、夏には首都圏でホテルも開業した。JR九州の14年4〜9月期の連結決算における駅ビル・不動産の営業利益は105億円。連結営業利益106億円の、ほぼ全額に当たる。鉄道事業の赤字を、駅ビル・不動産の利益で補填している構図だ。
●外食FCからコンビニ、ドラッグストアまで
1987年の発足時は売上高全体の3割程度だった非鉄道事業の割合は、今や6割を占めるまでになった。JR東日本、JR東海、JR西日本には、それぞれ山手線・中央線や東海道新幹線、山陽新幹線のドル箱路線があるが、JR九州は赤字路線ばかりだ。そこで同社は、収入源を確保するためなら何にでも飛びついた。自動車販売やリース、キノコ栽培、スーパー銭湯、釣り堀など、初期投資が小さい事業に次々と挑戦した。
大半は失敗して撤退したが、不動産や流通、外食が残り、今では収益の柱に育ってきた。コンビニのファミリーマートをはじめ、外食のミスタードーナツ、ケンタッキーフライドチキン、モスバーガー、シアトルズベストコーヒー、サブウェイのフランチャイズ(FC)店も運営している。これほど多くの外食FC店を手がけている企業は全国でも珍しい。
ドラッグストアチェーンのドラッグイレブンを買収し、福岡空港で空弁(空港弁当)の定番商品となったカツサンドで競争を仕掛けたトランドールは、JR九州のパン製造子会社だ。他のJR各社や私鉄も不動産や流通事業を手がけているが、メーカーまで持つ例は珍しい。さらに居酒屋「うまや」で中国へも進出。今春には、森ビルが開発した超高層ビル「上海環球金融中心」に出店した。評判を聞いた森ビルが出店を依頼した。農場では「うちのたまご」も生産している。
なんでも食らいつくことからJRの“異端児”と呼ばれ、国鉄民営化当時はJR北海道、JR四国とともに「三島会社」と揶揄されたJR九州の面目躍如だ。
●経営安定基金の問題
一方、そんなJR九州に対し、民間企業からは「民業圧迫」との批判も多い。同社の成長を支えたのは、民営化の際に国から渡された実質補助金ともいわれる経営安定基金3877億円だった。毎期100億円前後の運用益で鉄道の赤字を穴埋めし、年60億円の市町村税減免という特典もあった。そのため、「多角化で民間企業が手がける市場に新規参入する前に、まずは経営安定資金を全額、国へ返還し、民間企業同様に市町村税も払い、同じ土俵で相撲を取るべき」(九州不動産業界筋)と批判された。
同様の批判は政府からも上がっており、当初財務省は、「上場するのであれば経営安定基金は返還すべき」との姿勢だったが、結局、株式公開後も返還しない方針で政治決着が図られた。同基金を九州新幹線の施設使用料の一括前払いと、鉄道・運輸機構の長期借入金償還の原資に充てる。
上場後は、100億円前後の経営安定基金の運用益がなくなる。その分を何で穴埋めするのか。駅ビルやマンションなどの不動産事業が柱になるのは間違いないとみられており、それが駅ビルやマンションへの積極投資の理由でもある。
「不動産会社が鉄道事業を兼業しているようなもの」(九州不動産業界筋)とも評されるJR九州は、まもなく上場を迎える。
(文=編集部)
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