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中国主導で進む、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立構想。重要なのはAIIBがどんなプロジェクトを手掛けるかである(Getty Iamages)
「AIIB」がアジア地域で果たすべき役割とは 中国指導の開発銀行は悪いアイデアではない
http://toyokeizai.net/articles/-/67114
2015年04月25日 ケネス・ロゴフ :ハーバード大学教授 東洋経済
中国が500億ドル規模の新たな金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を主導している。ほかの先進諸国の参加を思いとどまらせようとする米国の無駄な努力に議論の大半が集中しているが、なぜ国際開発融資がこれほど失敗してきたのか、どうやってもっと機能させるのかを理解することには、ほとんど注意が向けられていない。
国際開発金融機関は「知識の銀行」として、経験や最善の手法、専門知識を地域間で共有することを支援して成功を収めてきた。逆に大きな失敗事例は、エリート層に恩恵をもたらすが環境、社会、開発の優先順位の適切なバランスを欠いた壮大なプロジェクトが原因だった。
■AIIBがアジアで果たす役割とは
ダム建設が好例で、統治のレベルが低く腐敗が多い国々では、大型インフラプロジェクトの経済的恩恵を過大評価し、計画で示された収入が実現するかどうかにかかわらず融資を返済しなければならないという長期の社会的コストを過小評価する傾向がある。AIIBには明らかにこうしたリスクがある。
その一方、アジア新興国では大規模なインフラ需要があり、国際的な融資機関で中国がより大きな役割を果たす時が来ている。中国主導の銀行は統治問題を抱える公算が大きいので、中国は世界銀行やアジア開発銀行などの既存機関に資金を投じるべきだ、という米国の議論は偽善じみている。統治が問題だというなら、米国は世界銀行の総裁を選ぶ特権を放棄する用意があるのか。
世界秩序における中国の重要性は増しており、グローバル経済上のリーダーシップに向けた中国のアプローチを形成する余地を与える必要がある。率直に言って、比較的小規模なインフラ投資銀行はよいスタート地点だと思われる。
また中国はすでに発展途上諸国に資金を投じているが、非常に不透明な経路を通して行われることが多い。AIIBが中国の開発援助の正常化を進めるほど、また参加先進諸国による監視に従うほど、同行の存在はよい方向に転じる。
中国は恒常的な実験と改善を好むので、AIIBから何らかの教訓を引き出し、発展途上国向け融資すべてにそれらを適用することさえ期待できるかもしれない。既存の開発銀行が何かを学ぶということもありうるのではないか。
真の問題は、アジア新興国がどのような援助を必要としているかだ。資金不足よりも、貧弱な組織やお粗末な統治が成長の大きな障害になることが多い。コストはつねに初期の見通しを大きく上回り、プロジェクト立案者は保守・修理を確実に行うのに必要な技術や資金を悲惨なほど過小に見積もることが多い。
■中国モデルが他国に通用するかは不透明
開発支援は、最終的に返済が必要な融資でなく、無償資金協力の形を取ったほうがより効果的だとの主張も可能だ。支援額の数値のインパクトは弱まるかもしれないが、長期的には成果が上がる。
残念ながら、インフラ開発に関する中国モデルが他国に一律に適用できるかどうかはまったく明らかでない。中国の強力な中央政府は、新しい道路や橋やダムによって強制退去させられた人々の抗議をはねのけ、長年、環境問題や労働者の権利を無視してきた。旧ソビエト連邦との類似は驚くほどだ。
アジアの発展途上国には、国家の運営方法が異なる国がある。インドでは、ムンバイの空港再建に8年を要した。裁判所が政府に対し、空港周辺の不法占拠者の権利を尊重するよう命じたからだ。
西側主導のインフラ投資銀行の融資やプロジェクトで問題となったものを振り返れば、既存の金融機関を改革するのでなく新たにもう1行設立することが必要なのか、と問うのは妥当だ。が、もしAIIBが、自らを知識の銀行と位置づければ、真の付加価値をもたらす可能性がある。AIIBがどれだけの資金を提供するかだけではなく、どのようにプロジェクトを選択し育成するかによって、同行を評価するべきだ。
(週刊東洋経済2015年4月25日号)
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