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酒税法改正で安売り規制 その合理性を問う
2015/4/23 6:30
自民党は今月14日、酒税法の改正案を議員立法で今国会に提出することを了承しました。ディスカウント店などによる酒類の過度な安売りに歯止めをかけ、小規模な「町の酒屋さん」の経営を守るのが目的だといいます。酒類の販売と酒税法の関係について、青山学院大の三木義一教授に聞きました。
■製造だけでなく販売にも免許
――以前掲載した「ビール文化をかき乱す、税とお酒の腐れ縁」で三木先生は、酒税法は「酒造法」でもあり、「税が酒を造る」とおっしゃっていました。
酒を扱うコンビニエンスストアが増えている(都内のローソン)
そうです。日本には酒の製造方法を定めた法律は酒税法しかないのです。ビール、ウイスキー、焼酎、日本酒など酒類の定義と造り方は、酒税法によって定められています。
例えばビールの定義は「麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの」とあり、副原料を入れてもいいことになっています。ただし、副原料の割合は「麦芽の重量の半分を超えないこと」。つまり、麦芽の割合を下げれば法律上はビールでなくなり、ビールに課されている高い税率を免れることができます。その結果、発泡酒 や第三のビール が登場し、価格面で競争力を持ちました。
――現在はビール系飲料について、酒類間の税額格差を見直すことを検討しています。まさに、酒と税の「腐れ縁」ですね。
明治時代には酒税の収入が国税全体の3割超を占めていました。酒と税金は切っても切れない関係にあります。酒類は造るのはもちろん、卸売りするにも、小売りをするにも免許が必要だからです。
■統制経済の流れくむ
製造については1899(明治32)年、酒税引き上げのために自家醸造を禁止しました。以来、免許を持つ人以外は酒を造れません。自分で消費するためのどぶろく造りも地ビール造りも禁止されています。自宅で梅酒や果実酒を造ることは原則、可能ですが、それについてもぶどうを混ぜてはいけないなどと、細かい条件を酒税法施行規則で定めています。
酒類の販売免許は1938(昭和13)年に導入されました。大蔵省(当時)は導入の理由を「酒類販売業者の資格を向上させることによって、酒造界の売掛代金の回収を確実にし、酒造家を保護し、ひいては酒税の転嫁を円滑におこなうため」と説明しています。38年といえば国家総動員法が制定された年で、当時の統制経済を前提にした制度なのです。酒の価格を統制することによって、酒の製造業者を保護し、酒税確保を狙ったのです。その後、1953年に現行の酒税法の枠組みに受け継がれました。
――基本的なことですが、酒税を納めるのは販売業者や消費者ではなく、キリンビールやサントリーといった酒の製造業者ですね。
そうです。わたしたち消費者は酒を買うときに酒税を負担しています。しかし、法律上、酒税の納税義務者は酒類の製造者と輸入業者です。製造業者が酒税を国に納め、その分を酒の卸売価格や小売価格に転嫁し、消費者は購入するときに酒税を負担します。納税義務者と負担者が異なるため、酒税は「間接税」なのです。
■問題の多い免許制度
――酒類販売の免許制度は酒の製造業者が卸売価格や小売価格に酒税分を円滑に転嫁できるよう、販売業者の経営体力を考慮するという建前なのですね。
酒の販売免許の認可は税務署長の権限の一つで、日本の税務署は酒屋のあるところを中心に設置されたともいわれています。かつて、税務署長は在任中、酒類販売免許の新規申請があると、それを握りつぶすことに腐心したとさえいわれています。昭和の時代には酒屋になるのは東京大学に入るより難しいなんていわれたんですよ。
非常に問題の多い制度で、違憲訴訟が起きたこともあります(※)。かつては距離基準、人口基準など様々な規制がありました。1990年代以降、段階的に規制緩和されて2006年に完全自由化されましたが、免許制度自体は残ってしまっています。
※1974年、都内の業者が酒類販売の免許を申請したが、「経営基盤が薄弱」として税務署長に認可を拒否されたことから、酒類販売の免許制度は「職業選択の自由」を保障した憲法22条に違反するという訴訟を起こした。92年12月、最高裁第三小法廷(坂上寿夫裁判長)は合憲とした二審判決を維持し、原告側の上告を棄却する判決を言い渡した。しかし、判決では坂上裁判長が多数意見に対し、「免許制度を維持する必要性、合理性はない」として免許制度は憲法違反との反対意見を述べた。
――規制緩和によって酒の小売り免許をもつ業者数は大幅に増えました。業態も変化し、一般酒販店、いわゆる「町の酒屋さん」の比率が大きく低下しています。
町の酒屋さんが減っている理由は価格競争力の低下だけではないと思います。魚屋さんしかり、八百屋さんしかり、現代人の購買行動がかつてのように専門店で購入するのではなく、量販店でほかの買い物をするついでに酒も買うというように変わってきているからなのでしょう。コンビニエンスストアに行けば、夜中でも酒を買うことができますし、ディスカウント店や量販店は酒の種類も豊富で選択の自由度があります。
――今回の自民党案では、過度な安売りをした販売業者に対して販売免許の取り消し処分ができるとしています。
規制緩和でスーパーやコンビニなど様々な業態が酒を販売するようになった(東京都江戸川区)
正直、聞いたときには驚きました。私は法律的に問題のある法案だと思います。伝統的な酒屋のなかに経営が厳しい店が増えているのは事実です。しかし、だからといって、小売店を保護するために、酒の販売免許という「伝家の宝刀」を振り上げるんでしょうか。
過度な安売り、つまり「不当廉売」を防ぐ法律には独占禁止法 があるのに、酒の販売免許で安売りを押さえ込むという方法には時代錯誤的なものさえ感じます。ディスカウント店・量販店と町の一般小売店との価格競争をこういう形で規制できるなら、酒だけでなくほかの商品でもできることになってしまいます。もっとも、酒以外の商品は販売免許制度をとっていないので、できないわけですが。
■税収確保にはむしろ逆効果?
――酒税確保のためという大義名分があるのではないでしょうか。
では、販売免許の取り消しをちらつかせて安売りを規制すれば、税収は増えるのでしょうか。
酒の税収が減っているのは、町の酒屋さんで酒が売れなくなったからではなく、日本人の酒の消費量自体が減っているからです。酒の消費量は1996年をピークに、現在は当時の約89%、成人1人当たりの酒量もかつての8割程度に落ちています。若者が減って高齢者が増えているんですから、ある意味、当たり前です。
このような状況下で規制によって酒の価格が上昇するようなことになれば、余計、消費者が敬遠し、酒を消費するのをやめてしまうかもしれません。安売り店がどんどんお酒を売るから、メーカーもそこにどんどん出荷するわけです。先ほどもいいましたが、酒税を納めているのは販売店でなくメーカーなのです。
少なくとも、酒税の確保を理由とした規制の合理性は、まったくないと私は考えています。改正案では、酒の販売などに関する「公正な取引基準」を今後定めるとしています。議論の行方を見守っていきたいと思います。
(聞き手は電子編集部 手塚愛実)
三木義一(みき・よしかず) 青山学院大学法学部教授。弁護士として税務訴訟などにも関わる。民主党政権下の政府税制調査会専門家委員会委員。主な著書に「日本の税金(新版)」(岩波新書)、「よくわかる税法入門(第8版)」(有斐閣)など。2015年2月、民間税調の立ち上げに参加、共同座長に。
http://www.nikkei.com/money/features/71.aspx?g=DGXMZO8597034021042015000000
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