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“悪の親玉”だった? JA全中会長が辞任で守った農村〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150423-00000004-sasahi-soci
週刊朝日 2015年5月1日号より抜粋
“既得権益の象徴”として叩かれたJA全中の萬歳(ばんざい)章会長(69)。9日に電撃的に辞意を表明し、8月で退任する。だが、萬歳会長は本当に“悪の親玉”なのか。米国の影が透けて見える規制改革に抵抗し、体を張って何を守ろうとしたのか。本誌に語った。
――9日に開かれたJA全中(全国農業協同組合中央会)理事会。冨士重夫専務理事が体調不良を理由に辞意を表明した直後、萬歳会長が立ち上がった。誰もが盟友の冨士専務理事へねぎらいの言葉をかけるのだろうと思った。それが突然、任期途中での退任を表明した。
萬歳会長(以下・萬歳):農協改革の骨子を了解した後の2月中旬ごろから、辞任を考えていました。4月3日に農協法の改正案が閣議決定され、一つの区切りを迎えたなと。今回、農協法が我々の思いとは違った形に改正されます。その改革案を了承することは、組織にとって大きな決断でした。トップとして、区切りをつける必要があると思いました。
――自民党の有力支援組織である農協に“農協解体”の衝撃が走ったのは昨年5月。政府の諮問機関である「規制改革会議」が、農協改革について急進的な内容を含む意見書を発表した。特に問題視されたのが、農家でない人も出資金を払うことで農協のサービスを利用できる「准組合員制度」で、事業利用を制限することを提案していた。
萬歳:本当に驚き、唐突感がありました。規制改革会議の提言には、「農業協同組合法に基づく中央会制度の廃止」という提言のほか、全農(全国農業協同組合連合会)の株式会社化、准組合員の事業利用を正組合員の2分の1以下に制限する案などがありました。目的は、農協の解体と組織内部の分断と受け止めました。
たしかに、准組合員の数は正組合員を逆転しました。ですが、これは農協が地域に提供しているサービスにご理解をいただいて加入してもらっているものです。
たとえば、日本一の農業地帯である北海道では、組合員の約8割が准組合員。自治体の面積が広い北海道では、金融機関やガソリンスタンドなどの地域インフラを農協が支えていて、それを利用するために多くの方が准組合員になっています。かつて農業を営んでいて、離農した人も多い。
それを全国一律に、准組合員の事業利用を正組合員の2分の1以下にするという規制改革会議の案が通れば、日本の農村が、国全体が壊れてしまう。政治は、人々の生活を安定させることが第一です。それに反するような提案は、私たちは受け入れることができませんでした。
人口減少時代に入ったなか、おそらく農林中央金庫が保有する90兆円の資産が、民間金融機関の新しいマーケットになるとの考え方があったのでしょう。
この資産は組合員の汗の結晶です。それが、大きくなりすぎたから准組合員の利用を減らして小さくせよというのは、どういうことなのでしょうか。この資産は、農村部のライフラインの一翼を担っていると自負しています。規制改革会議の提言は、それらを「すべて解体せよ」と言っているかのようでした。
――准組合員の利用制限は、農村地域の生活者に悪い影響を与える。結果として「5年後に再検討」という形で先送りになった。その代わりに受け入れたのが、全中が持つ指導・監査権限をなくすことなどだった。
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